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匿名性という薄氷

あんたも話題の映画を気にしているかい?

とりあえず、閃光のハサウェイとともに気になっている映画に「龍とそばかすの姫」があったんで、せっかくだからってんでIMAXで見てきたんだよ。

まずベラボーな映像美と音楽性に圧倒させられる作品だった。
きっとこの作品はディズニーが好きって言う海外層を確実に取り込んでいくものだと思った。

今回はこの龍とそばかすの姫という作品のストーリーには触れずに、とある設定を深堀りしていくことで、現代社会にあるテーマを考えてみようって回だ。

完璧にネタバレなしで龍とそばかすの姫を楽しみたいって、あんたが思う場合は、今回はスキップしてくれ。
ストーリーには触れないけれど、ちょっと設定部分に触れちまうからさ。

Uという環境

さて、早速触れていきたい設定になるんだが、同じ細田守監督作品である、サマーウォーズでは「OZ」という仮想世界が用意されていたのはあんたも見たことがあるかもしれない。

龍とそばかすの姫では同じような仮想世界で「U」という世界が用意されていた。

このOZもUも共通した設定があった。
「匿名性」だ。

仮想世界ではあくまで現実の人物がどのヒトなのかってことについては明かされないってのはOZもUも違いはない設定だった。

唯一違うもの。
それが「匿名性」を強制的に排除する仕組みの存在だった。

「匿名性」を握る権限

結構、この匿名性をコントロールできる権限が一部のユーザに付与されている状況って難しいテーマを内包しているように感じたんだよ。

そもそもなぜにネット社会には匿名性ってものが必要なのか?

おそらくだけれども、現実世界での人間関係ってのは非常に利害関係と直結することが多い。
っていうか、大人として生活していると、生き残るための活動に注力しないと、あっつーまに生活出来ないような状況になっちまう。

なので、相当意識して活動しないと「友人」なんて人間関係はほとんど発生させない生活に陥っていく。

ところが、全ての人間関係が利害関係を伴っている状態になると、自分が感じたことをそのまま表現すると、相手の利害関係を脅かすケースも多々出てくる。

なので、匿名性がある程度確保されている状態で自分の感覚を表現したりしているってわけだ。

自分の感覚を表現することは、誰かのデメリットに直結することが少なからずあるからね。

別にこれは誰かの悪口を言うケースだけじゃなくて、「あそこのアイスクリームは美味しい」ということで、知り合いのアイスクリームの売上を奪ってしまうと言うような副次的な利害関係阻害ってのを恐れているわけだ。

それってどうなんよ?ってあんたが言いたくなる気持ちはわかる。

美味いものを美味いって言えない世界はどう考えても正常じゃないって思うもんな。

でも現状の世界は複雑に絡み合う人間関係が大前提になっている。
その中ではある意味の監視社会を作り上げちまうのは悲しい現実だとは思うんだよな。

そこで、ヒトはネットの世界で「匿名性」を担保することによってその人間関係の複雑さを少しでもシンプルにしようって動いたってのが現状だと思うんだよ。

で、その命綱とも言える「匿名性」。

これを一部のヒトがコントロールする権限を与えられているという設定。

普通に考えると、そんな特権を誰かに付与するってことがメチャクチャに巨大な権益を産んでしまうので、そもそもの「匿名性」が「利害関係」からの独立のために利用されているってことと矛盾しちまうんだよな。

「匿名性」を奪い取られた世界

なんでそんな権限が個人に与えられていたのかって考えると、ちょっとゾワッとくる考えにたどり着く。

つまりUの世界を作ったヒトは匿名性を良しとしていないってことなんじゃなかろうかと。

一部のヒトに匿名性を奪うという特権を与えることで、絶対にヒトはその力を行使し始めてしまう。
その上で、その力が行使され始めたところで、その力を特権から外す。
つまり誰でも匿名性を奪うことができる状態にする。

この状況が現実世界で起きたら何が起きるのか?

例えばAIが全てのSNSでの匿名性を丸裸にするような動きをしたときに世界はどうなっていくのか?

そう考えると思うんだよ。

今の世界は匿名性無しでやりとりするには、もはや「つながりすぎている」ってことなんじゃないか?

俺たちの考えは俺たちが想像する以上に多くのヒトとつながっている。

このnoteですらそうだ。
俺たちは20年前とは比べ物にならないほど「手軽」にヒトとつながる。

その事実は俺たちが思ったことを発信することの足かせにもなっている。

利害関係の阻害につながっちまうからね。

なあ、あんたはどう思う?

いつしかネットの世界を含めて匿名性を失ったときに、俺たちはどんなコミュニケーションをしていくことになるんだろうな?

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