貨幣のプール論に縛られた意見
あんたも不景気ってやつの原因について考える事があるかい?
前も書いたんだけれども、2022年1月20日の日本テレビ朝の情報番組zipの中で村尾信尚さんが経済の解説をしているのを見たんだよ。
その内容のあまりに間違いっぷりに軽いめまいを覚えてその報道に対する意見ってのを書いたんだ。
そのnoteでは村尾信尚さんが主張していた以下の2点の内容についての考えを書いてみたんだ。
(1) 現在の不景気は労働者不足が原因である
(2) 労働者不足の解消のために女性が「社会進出」すべきである
で、そもそも労働者不足が不景気の原因じゃないので、女性の社会進出ってのは適切なプロセスじゃないって話を書いたんだよ。
今回は村尾信尚さんがzipで主張していたもう一つの意見である生産性ってキーワードについて考えてみる回だ。
ちっと、あの全国区番組で流布された情報について整理してみようぜ。
日本の生産性の低さの原因は「作業効率」か
村尾信尚さんの生産性についての意見はこんな内容だった。
(1) 日本人は労働時間は長いが作業効率は悪い
(2) 作業能率が悪いヒトの給料が低いのは当たり前
(3) 政府は個人の作業効率を上げるための投資をするべきだ
……いやいやいや、生産性は単位時間あたりのコストに対するリターンで測られるんであって、作業効率じゃないっつーの。
個人の作業能率上げたって、そのヒトの給料が上がるわけ無いじゃん。
それが出来るのは自分でビジネスを担げているヒトだけだぜ。
っていうか、前にも書いた通り今の不景気は需要が足りないからであって、個人の作業効率を上げたら供給能力が全体的に上がるから、そうなったら労働単価は下がる方向に圧力がかかるってなんで思わないんだろ?
そもそも村尾信尚さんの中ではどのくらいの規模の個人向けの補助金を出すって発想を持っているんだろう?
2020年時点での生産年齢人口は7,341万人。
その一人ひとりに年間1万円の補助を出したとして7,341億円。
10万なら7兆7,410億円だな。
……それなら、その10万円問答無用で配ったほうがよくね?
だって10万円程度をあてがったところで、そのヒトが生み出すリターンが10万円増えるんだっけ?
そんなわけ無いじゃん。
その前に、この流行病のせいで生活困窮になっているヒトが居るってのをどう考えているんだろう?
生産性を上げるためには利益を上げる
じゃあ、日本人の生産性を上げるためには何が出来るんだって?
決まっている。商売が儲かる状況を作るしか無い。
ところが、供給に対して需要が少なすぎるから、何かのサービスや財を作り上げてもそれが「欲しい」ってヒトが圧倒的に少ない。
だからと言って、何かの価値を作り込むって作業、つまり仕事をしないわけには行かないので、値段を下げてでも売りたいってのが経営だよな。
つまり買いたいってヒトを増やすしか無いわけだ。
ところが、買いたいってヒトは消費者か投資者でしかない。
不景気なので、民間の消費者が消費を増やすってのは実に難しい。
投資者についても、儲かる確信がなければ投資でお金を使うってことも難しい。
だからこそ公共投資で国や地方自治体が「欲しいヒト」になるしか無いじゃんか。
国の借金って言うまやかし
でも国が「欲しいヒト」になるとしても、そのお金どうすんだって話だけれども、これはシンプル。
日本には円を発行する通貨発行権があるんだから。
なに?そんなんしたら経済がめちゃくちゃになるだろって?
そんなこと言ったら、銀行が何処かの企業に貸付をできなくなるって意味だぞ?
言っている意味がわかんないって?
つまりこうだ。
銀行はA社に向けて100万円貸し出しましたってときに、銀行がどんな事する?
金庫の中から100万円の札束持ってくると思うか?違うだろ?
銀行がやるのは「A社の口座の数字を100万円分増やす」ってだけだ。
そして、その瞬間に今まで世の中に存在していなかった100万円ってお金が発生することになる。
こいつが信用創造だ。
で、これを日銀と政府の間の日銀当座預金でやることによって、実質上通貨発行ってのが出来る。
そのお金を使って、国が「欲しいヒト」になれるってスンポーだ。
村尾信尚さんの勘違い
村尾信尚さんが完全に勘違いしているんだって思ったのが、彼のページを読んだときだ。
未だに国の借金は将来世代への付け回しって言う主張なんだね。
完全に貨幣のプール論だ。
世の中に存在しうる貨幣量には限界があるっていうね。
このヒトは国債残高が1970年からこっち15倍以上になっているのに、国債金利が0近傍になっていることをどう説明するんだろう?
政府は国債を経由して通貨を発行しているだけなんだから当たり前なんだって普通にグラフを眺めれば誰だってそう思うと思うんだけれどね。
なあ、あんたはどう思う?
朝の国民的番組で流布される間違いの情報を、俺たちはこれからも見極める事ができるんだろうか?
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