マネジメントの苦労
あんたはいろんな職業について考えることってあるかい?
俺はシステムエンジニアって職業柄、結構多くの仕事について考える切っ掛けをもらっている。
出版の仕事から関わらせてもらって、医療、介護業、不動産業、小売業などなど。
中には名簿販売業なんてものあったかな。
その各々の仕事で、実に多彩なヒトたちが四苦八苦しながら働いていたんだよな。
今回はその関わらせてもらった業界の苦労の一部を思い出そうとしてみる回だ。
ちっと俺の記憶の整理に付き合ってくれよな。
出版業の苦労
出版の仕事って実に不思議なもんだと思う。
何がって?
だって、本という商品を俺たちの手元に届かせるまでにどんな仕事があると思う?
本の内容は作家さんが作る。
本を印刷するのは印刷屋さんが印刷する。
本を本の形にするのは製本屋さんが製本する。
本を本屋に流通させるのは取次がする。
本を俺たちに売ってくれるのは本屋さんだ。
こうしてみるとさ。
出版社って何やってるんだって分かん無くないか?
実態としては、出版社の仕事って、この一連のビジネスのマネジメントなんだよね。
作家さんがいつまでに原稿を上げてくるから、印刷屋さんにいつまでに紙を納入して、印刷機のラインをいつからいつまで確保して、印刷されたものをいつまでに製本屋さんに渡して、製本がいつまでに完了して、それをいつ取次にわたす。
そして、本の性質に合わせてどのあたりの本屋で売れるのかを想定して、その想定を取次や本屋さんに伝えて効率的に販売してもらう。
そして実態としての売上が上がってきたら、今後売れ続けるのかどうかを予想して増刷の検討をする。
そして、返品されてきた本を再度売れそうな本屋に配本する。
どうにもならないときは廃棄する。
返品されるとその分売上を返金しないといけないから、新しい本を企画して作家さんに依頼する。
で、その各々の工程が予定通りにいかなかったら、各方面に調整して帳尻を合わす。
な?
聞いてるだけで胃が痛くなってきそうだろ?
不動産管理業の苦労
次はマンションの管理の仕事である不動産管理業の苦労だ。
マンションの管理って言えばどんなイメージがあるかね?
掃除とかのイメージだよな。
確かに掃除は管理業のメインとなってくる仕事内容だ。
ただ、掃除一つとってもマネジメントが必要になる。
どのくらいの建物の規模であれば、どの頻度でどのくらいのヒトを投入すれば良いのか?
その清掃に使う洗剤や道具はどのくらいの頻度で交換が必要か?
共有スペース以外のところで問題が起きて、共有スペースの清掃の頻度を変えなくなった場合にどう調整するのか?
清掃だけ考えてもこれくらいのことをマネジメントしないといけない。
それ以外にも建物そのものの修繕計画をどうするのか?
そのための管理費用の徴収をどうやって行うのか?
マンションの組合運営をどうするのか?
これらをそこに住んでいる一般のヒトを相手に調整していかないといけない。
それこそありとあらゆる仕事をしている別々の立場のヒトを相手にだ。
などなど。
これも考えただけで胃が痛くなってくるやつだ。
システムエンジニアの苦労
で、俺たちシステムエンジニアはそう言うあらゆる仕事の苦労を把握していく必要に迫られる。
ポイントはどの仕事を理解するにしても、その仕事を実際に経験出来るわけじゃないってことだ。
運が良ければ現場の様子を眺めることが出来るケースもある。
小売業は売り場に限定すれば現場にお客として行くことでどんなふうにヒトが動いているのかとかを眺める事ができるしね。
でも多くのケースでは現場の苦労ってのを目の当たりに出来ることは少ない。
ではどうするのか?
打ち合わせで「何が仕事をうまくこなせない要素なのか」をあぶり出すんだ。
大枠では顧客側もその問題点を認識している。
売上が伸び悩んでいるけれど、その原因は商品在庫切れの把握をリアルタイムに出来ないからだ、とかね。
俺たちシステムエンジニアはその原因に対してどんな機能を用意して、どんなふうにそれが使われるかの予想をして、それに対応した機器を用意し、その機器を展開する計画を立て、機能を作るための人員を計画し、機能製造の進捗を確認し、テスト計画を練り、テストの品質を見極め、顧客に機能を確認してもらい、リリースする。
マネジメントなんだよな。これも。
こうして考えてみると、どの仕事もマネジメントに苦労しているってことなんだよな。
そういえば、何かで読んだんだけれど、子どもにゲームをやめさせたいなら、ゲームの進捗管理をさせろって話があったな。
そんだけ本質的には俺たちはマネジメントって仕事が好きじゃないんだな。
なあ、あんたはどうだい?
あんたの仕事の何に困ってる?
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