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ラウダとCEOと誰かの思惑

13話でラウダはジェターク寮生を前に、こう宣言しました。
「明日から僕は正式にジェターク社CEO(CEO:最高経営責任者)に就任する」
……何故明日?そしてそもそも何故彼は「代理」だったのか、そしてラウダがCEOに担ぎ上げられるとはどういうことか、という話を私的にまとめます。
現実の法律にある程度なぞらえてはいますが、あくまでもただの妄想です。ご注意ください。

左:4CEOsの厭味(?)に対し髪の毛を指に巻き付けるジェターク社CEO代理のラウダ
右:CEO正式就任にあたり寮生達にお気持ち表明のラウダ

実子だからといって即CEOになれるわけではない

ジェターク社を株式会社と仮定して現代になぞらえた場合で話を進めます。ラウダはまだ学生でジェターク社には所属していません。3話でヴィムに「学生以外が決闘にかかわるのは……」と発言しているので、彼はジェターク家の血縁であってもジェターク社に所属していない、ということが読み取れます。

ただの学生である彼が、父親の会社とはいえCEOの座に着くには正式な手順を踏まなければなりません。
ジェターク社を現代における株式会社相当と想定して、彼がCEOに就任するための手順を解説します。

CEOへの道

まず、ラウダがジェターク社に入社します。
次に、ジェターク社の運営方針を決定する「取締役会(Board of Directors:略称ボード)から、CEO代理=次期CEO候補として指名を受けます。

このままではラウダはCEO代理のままですし、経営の最高決定権を握ることはできません。もっと言うと、この時点での彼は取締役会からの指名を受けただけの一社員に過ぎません。

彼が正式なCEOとして認められるには、株主総会における決議案「取締役選任投票」および「CEO選任投票」で有効投票数を獲得する必要があります。

株主総会とは、株主で構成される株式会社の最高意思決定機関です。取締役会、ひいては会社に対し「会社を取締役会の好き勝手にはさせないよ」と監視する役目を負います。会社に対する要望、方針等を株主側、もしくは取締役側から提案し、投票によって是非を問うための集会として年1回、もしくは状況に応じて臨時で開催されます。

ラウダが「明日から僕は~」と発言しているのは、ランブルリングの翌日に臨時、もしくは正式なジェターク社の株主総会が開かれて、そこでCEO就任決定が内定しているからだ、と予想されます。

ジェターク社は水星の魔女公式サイトより同族経営形態を取っていることが公開されています。つまり、ジェターク社の株主も取締役会もほぼジェターク社絡みの親族、関係者でまとめられていると推察できます。
ですので、株主総会は取締役会の意向に沿ったいわゆる「出来レース」であり、これによってラウダは明確に「就任する」と断定した発言をしているのです。

ラウダの発言一つではありますが、ジェターク社は同族経営であってもいきなりラウダをCEOの座に着けないだけの、ある程度はコンプライアンスを守る会社であり、なおかつそのための意思決定機関である取締役会と株主総会が存在することを窺わせています。

浮かび上がる問題

さて、ここで問題が二つ浮かび上がります。

一つ目。
ラウダが負傷した=自分の意思を主張できない状態を利用し、CEOの座に祭り上げたその後で経営不振の全責任をラウダに押し付ける、という可能性が否めないということです。
このルートを通った場合、取締役会および株主はほぼ全員泥船(=ジェターク社)から逃げ出す算段を既に始めているものと思われます。

二つ目。
ラウダは正式就任を前にして、ランブルリングで攻撃を受け負傷退場を余儀なくされています。
彼をCEO代理に選出したのは取締役会です。取締役会は彼についての責を負うことになります。
ラウダが今回負傷したことによって「経営参加には不適当」とみなされ、取締役会の命により代理の任を解除されたのち別の誰かがCEO代理に立つ可能性があります。
この誰かが立ったとしても、ジェターク社のために粉骨砕身で活躍してくれるかは未知数です。
実子とはいえ会社経営の現場に立ったことのない人物をCEO代理に立てる大人達です。そんな人物がジェターク社再建のために奮闘してくれる姿など、私には想像できませんでした。

15話以降でジェターク社が上記の二つの可能性のうち、いずれのルートを通るとしても、ラウダをCEO代理に祭り上げた、あるいは彼が次期CEO就任を前提として引き受けたのは、前CEOの実子であるという「血の正当性」が第一の条件となります。

ヴィム亡き後、なおかつグエルを見つけることができなかったジェターク社が本来会社経営において通るべきルートについてここで追記します。
ジェターク家の親族の内、ジェターク社継承序列がラウダの次に高い者が一旦CEOの座に着き、ラウダには副CEOとして経営を学ばせます。そして折を見てラウダにCEOの座を譲るのです。
同族経営、かつラウダをCEOに担ぎ上げるだけの「血の正当性」を正しく捉えているなら、この手法を取るのがジェターク社としてあるべき姿となります。

正当性を担保に使われたことによって、ラウダにはこの瞬間「逃げたら一つ」のルートさえ存在しなくなったのです。
ラウダには逃げるつもりはありません。父亡き今、兄が帰ってくるまではジェターク社を守り抜くのは自分の役目、と覚悟を決めているでしょう。
しかしながら、「逃げたら一つ」の手段があるかもしれないことと、大人達が彼を「逃げられない状況に追い込むこと」と、彼が「逃げたりしない」と心に決めることは根本的に前提が異なります。

大人の思惑、蛇の計画?

ラウダを逃げられない状況に追い込んだジェターク社の大人達は、会社をラウダから取り上げて自分のものにする絶好の機会がヴィム亡き後に発生しているにもかかわらず、誰も手を挙げていません。
ヴィムの息子とはいえ、二十歳にもならない若者がトップに立つ……家父長制主義がいくら徹底しているとしても、大人達の動きが不自然過ぎます。
4話でジェターク社の財務諸表がまずい状況に陥っていることは視聴者にも知らされています。そしてヴィムが「グエルがホルダーになることを前提条件に多額の融資を取り付けている」ことも。
これは取締役会でも周知の事実でしょう。むしろ財務状況を管理し経営方針を決定する取締役会がこの事実を知らないのは極めて不自然です。

知っていた場合、上記の一つ目の問題通りラウダを祭り上げたのち経営責任を問う動議が発動する条件が整います。

知らなかった(と取締役会がとぼける)場合、グエルという会社の固有財産ではない一個人の行動を担保にして、融資を(勝手に)ヴィムが取り付けたことを槍玉に上げ、その後継であるラウダに対し損害賠償を求める動議が発動することが予想されます。

こうなると、財務諸表の件を知っていても知らなくても、ジェターク社の取締役会および株主達はラウダを生贄にする準備が整っていると考えられます。
13話のワンシーンと、14話で描かれたラウダの決意表明。
実は起きていたかも知れないジェターク社内のあれこれを全く視聴者に見せることなく、さらにはラウダと4CEOのやり取りによって「ろくな情報を与えずラウダをCEO代理としてプラント・クエタの後始末会議に送り込んだ」大人達との関係をほのかに浮かび上がらせるこれらの演出により、ジェターク社内の内紛もしくは崩壊の予兆を示唆しているように思われます。

グループトップのジェターク社に崩壊の予兆が顕れたことは「ベネリットグループを解体する」と宣言したシャディクにとっては絶好の展開です。
むしろ事ここに至る前に、シャディクがジェターク社関係者に何事かを働きかける下地が整っている疑いさえ浮かびます。

付け加えるなら、ラウダを襲ったのはソフィです。
ソフィとノレアはシャディクの手引きで学園に編入しました。
ランブルリングに合わせて二人を暴れさせ周囲の目をそちらに引き付け、その間にサリウスを拉致しました。
このタイミングでラウダを襲わせることも彼の計画のうちだったのでしょうか。

疑念の全ては、15話以降に明かされることでしょう。



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