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海亀の生まれるところ

(1000字)
Ras Al Jinz

アラビア半島の最東端に、青海亀の産卵場所がある。
2012年に行こうとしたが、公的機関であるはずの“海亀保全センター“がストライキで(アラブ社会にストライキなんてあるのかと不思議だった)行く機会を逃してしまった。それで、2016年に4年がかりの思いを遂げて出かけた。7月から秋までがベストシーズンだ。
ドバイから700kmもあるので、1日で行くのは辛いので、400km先のマスカトの定宿である日本食レストランがあるホテルに泊まってから出かけた。

オマーンの東の端までドバイから車で700kmぐらい

オマーンの国土は日本の0.8倍ぐらいで人口は300万人ぐらいなので、道はいつも日曜日の早朝のように空いている。夏の気温は海洋性気候と言っても40℃は優に超えて、路面温度は80℃にもなるだろうが、日本の道路のように路面がドロドロに溶けることは無い。鏡のように舗装したての道をひたすら走る。

700kmの砂漠の道を日本のように時速100kmで走ると、目的地に夕暮れまでに着くのだろうかと不安になる。それで、オートドライブにして140km以上だと違反なので、GPSで計測して138kmにセットして片目を閉じて、“片方の脳みそだけ“で走るが、下り坂でオートブレーキが間に合わず、光らない写真に撮られて、4ヶ月後にドバイで違反金を2回分も払うことになった。年に1回の車の登録更新の時に、1年で溜まった違反金を払わないと車を返してくれないので、それまでは幸せに走れるw

そして、なんとか2日掛かりで念願の海亀の故郷にたどり着くことが出来た。

遠くの崖がアラビア半島の最東端で、手前が海亀の産卵の浜辺

ここでは、近所にはお店も観光資源も他に無く、日中は何もすることが無い。
アラビア半島の最東端に立って、東の海から登る朝日を眺めることもできたし、そして初めて夜中に海亀の産卵を見ることができた。さらに、孵化して生命を宿した海亀の子供が海に帰るのを見ることも出来た。
夜中は満天の星空であり、神秘的な空間に身を浸すことが出来て、小さな人間も大自然の一部であると実感できた。

2晩もここで独りで過ごし、鋭気を養ったので、帰りは一気に700kmをドバイまで帰った。この旅は人生で一番のいい思い出となった。今度は遅ればせながら見に行きたいと言い出した娘を連れて行くとしよう。娘が早くインド駐在になると近いからいいけど。(了)

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