マガジンのカバー画像

NOMAyado column

107
兵庫県と徳島県、4年間の2拠点生活を経て、2022年1月から始まった宿プロジェクト。思いをカタチにしていく中で、何を考え、心がどう反応したのか、ありのままの記録と、宿をやっていく… もっと読む
運営しているクリエイター

#暮らし

延命のような暮らしはいらない

思想家で武道家の内田樹さんが、こんなことをある本に書いていた。 よく考えると薄ら寒くなるような話だが、 実はこれって、私たちの暮らしにも似たようなことが起こっている気がする。 とにかくお金を稼いで家計を維持することが最優先で、言葉は悪いが対処療法的というのか、目的地が見えない暮らし。 ひとたび、心もカラダも健康に機嫌良く暮らしたい・・・なんてことを本気で考え始めると、社会のレールから外れ、独自の価値観で暮らしを立てるしかなくなる。 鳴門という地方都市に暮らしてみて思うの

思わず考えさせられたこと

GWも無事乗り切り、宿主としてはホッと一息。母の命日ということもあり、兵庫の自宅に戻ってきた。 翌日のこと、何かが焦げているような臭いに気付き、家の中をくまなく点検するが何も問題無し。ふと窓から外を見ると、何やら尋常では無い煙が立ち上っているのが見えた。あっ火事だ、外に出ると灰のようなものが風に吹かれて漂っている。これは近いかも、心配になって、煙の立ち上る方に歩き始めた。煙を吸って歩いているせいか喉がイガイガし始めるが、相変わらず見えるのは煙ばかり。 引き返そうとも思った

空になった歯磨き粉にニヤついている

昨日は味噌が無くなり、今朝は歯磨き粉が無くなった。 日々暮らしていると当たり前に起こることだが、空になった歯磨きチューブを見つめて、妙にニヤついている自分がいる。気持ち悪い、何?・・・と思われそうだけど、これは鳴門という地に根を張って暮らせているという証でもある。 毎日ちゃんと歯の手入れを重ねていること、毎日たくさんの野菜を入れた味噌汁を作り、バランスの取れた食事を心がけているということに他ならない。 笑われるかもしれないけど、そうした小さな積み重ねを経て、空になった歯

「泊まる」ではなく、「暮らす」場所

NOMAyadoは「泊まる」というより、たとえ短い時間だとしても、お客様にとっての「暮らす場所」でありたいと思っている。 ここにある海はリゾートというよりは、住民を運ぶ渡船があり、わかめの荷上げ場があり、造船所があり、といった暮らしの中にある海。この辺りの漁師や老人は、知らない人にでも気さくに話しかけてくれるし、街から来た皆さんとは少し違う暮らしかもしれないけれど、ローカルな暮らしを身近に感じることができる場所。そうした違いを肌で感じることで、当たり前だと思っている自分の暮

「暮らし」が仕事、仕事が「暮らし」

兵庫・徳島の2拠点生活を始めて、まる6年になる。 当初徳島は、親の介護や仕事のストレスから逃れるシェルターとして、月に数日、美味しいものを食べたり、サーフィンをしたり、言わば心の洗濯をするための場所だった。だからというわけではないが、急ぎの仕事を持ち込んでもさっぱり進まなかったし、心が浮かれているせいか、ゆっくり本を読むなんて事もできなかった。 月日は流れ、いつの間にかその立ち位置は逆転。 兵庫は月に数日、映像仕事などの用事を済ませるために向かう場所になっていた。 ・・

宿の名前は「NOMAYADO」になりました  (徳島宿プロジェクト)

「NOMAYADO」という名前は、かつて10年に渡って営んでいたギャラリーの名称「NOMA」に由来しています。当時「NOMA」で行われるイベントには、それぞれ思いを込めて個別の愛称とロゴを用意していました。 例えば、クリエイター作品の展示販売イベントは「NOMAMISE」、 ライブイベントは「NOMAOTO」、サロンイベントは「NOMAYORU」など。 その流れで行くと、宿をやるのだから「NOMAYADO」か・・・。 遊牧民を意味する言葉「ノマド」を連想させるし、「大人の

いちばん怖いこと (徳島宿プロジェクト)

敬愛する歌人・穂村弘さんのエッセイ本「鳥肌が」を読んでいる。 日常の中に潜む、よく考えるとちょっと怖いなというような出来事を独自の目線で拾い上げていて、なかなか面白い。 たとえば、コンビニで手に取ったものをひっくり返すと、ずらっと並んだ原材料の名前が単純におそろしいとか。(カラギーナン、ソルビン酸K、アゾ色素・・・) 食品に関する知識があまり無いので、カラダに悪いのかどうかの判断はつかないが 見ているだけで恐ろしくなるという気持ちは分かる(笑) やっぱり一般的に怖いとなる

見えてきたカタチ 見えてきた思い (徳島宿プロジェクト)

倉庫に暮らし始めて、早6ヶ月。 春、そして夏が過ぎ、朝晩寒さも感じる秋になった。 随分時間も手間も掛かったけれど、ようやく諸々の見積もりや申請、許可取りの作業に目処がついて、宿改装に向け具体的なイメージプランも出来上がってきた。 (表題写真は客室の小窓から海側を見たイメージ、ガラスの向こうに海が見える) これまでの打合せで、おぼろげに想像していた世界そのものなんだけど、リアルに想像できるようになることで、ここから先の準備や運営のスタイルなどが現実味を帯び始め、ビジネスとして

小さな漁村を支える赤い箱 (徳島宿プロジェクト)

宿の予定地である倉庫前には、もともと自販機が1台設置されていた。 いろんな飲料メーカーの商品が雑多に入ったもので、ほとんどが100円。見た目は赤くて遠目にはコカコーラ風だが、実はよく正体がわからない。正直あまり良い印象を持っていなかったので、不動産契約をするときに、今後宿をやるのに自販機はいらないので撤去して欲しいとお願いした。 すると、それを聞いた自販機の営業マンがわざわざ大阪から訪ねてきて、何とか宿がオープンするまでの間だけでもいいので置かせてほしいと懇願された。一応話