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NOMAyado column

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兵庫県と徳島県、4年間の2拠点生活を経て、2022年1月から始まった宿プロジェクト。思いをカタチにしていく中で、何を考え、心がどう反応したのか、ありのままの記録と、宿をやっていく… もっと読む
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#徳島

延命のような暮らしはいらない

思想家で武道家の内田樹さんが、こんなことをある本に書いていた。 よく考えると薄ら寒くなるような話だが、 実はこれって、私たちの暮らしにも似たようなことが起こっている気がする。 とにかくお金を稼いで家計を維持することが最優先で、言葉は悪いが対処療法的というのか、目的地が見えない暮らし。 ひとたび、心もカラダも健康に機嫌良く暮らしたい・・・なんてことを本気で考え始めると、社会のレールから外れ、独自の価値観で暮らしを立てるしかなくなる。 鳴門という地方都市に暮らしてみて思うの

空になった歯磨き粉にニヤついている

昨日は味噌が無くなり、今朝は歯磨き粉が無くなった。 日々暮らしていると当たり前に起こることだが、空になった歯磨きチューブを見つめて、妙にニヤついている自分がいる。気持ち悪い、何?・・・と思われそうだけど、これは鳴門という地に根を張って暮らせているという証でもある。 毎日ちゃんと歯の手入れを重ねていること、毎日たくさんの野菜を入れた味噌汁を作り、バランスの取れた食事を心がけているということに他ならない。 笑われるかもしれないけど、そうした小さな積み重ねを経て、空になった歯

味変を楽しむ

徳島と兵庫の2拠点生活を始めて、早7年目に突入した。 2拠点をしているからこそ分かることだが、徳島産の魚も肉も野菜もクオリティが抜群。しかも新鮮で安い、兵庫で魚は食べなくなったし、野菜も正直食べたく無い だから、鳴門から帰る時は、新鮮な地場野菜や果物、肉や魚なんかもしこたま仕入れて帰る。先日も帰って、もつ鍋をしようと思いつき、いつも行く鳴門の精肉店でミノやらテッチャンやらを仕入れ、新鮮な春キャベツやニラも買い込んで帰った。 もつ鍋は何と言ってもスープが命。圧力鍋でもつを

いいかげんがいちばん

あけましておめでとうございます。 1月5日より、2024年NOMAyadoの営業がスタートしました。 今年もどうぞNOMAyadoをよろしくお願いいたします。 鳴門に帰ってきて、まずは徳島県屈指と言われるパワースポット・大麻比古神社へ初詣。正月3が日には30万人もの人が訪れるそうですが、少し時期が外れていることもあってゆっくり参拝できました。 お参りの後、早速おみくじを引くと嬉しいことに大吉をゲット、今年もいい年になりそうな予感・・・。けれど読み進めてみると、個々の運勢は

さあ、旅に出よう!

2023年も残すところ1週間をきり、このnoteも今年最後の記事となりました。 今年4月にNOMAyadoをオープンして、あっという間の年末。とてもゆっくりとした立ち上がりでしたが、暖かくなるにつけお客さまも少しづつ増えて、楽しい語らいの時をたくさん持つことができました。いろんな年代、いろんな職業や境遇の方と出会いお話しを伺えたことは、私にとってかけがえのない財産となり、大きな喜びとなりました。 改めてNOMAyadoを訪ねていただいたすべての方々に、お礼を申し上げたいと

自分へのおもてなし

突然ですが、弓道を始めることにしました。 昔から、誰かに教えを請うたり、じっくりと物事に向かい合う事が苦手で、何をするにも、ひらめきと自分勝手な要領とやり方でやるというのが常。だから習い事なんて、幼い頃にお菓子欲しさに書道教室に通って以来のことです(笑)。 ・・・にもかかわらず、 60歳を超えて、今頃なぜ弓道を習い始める気になったのか。自分のことながら、うまく説明できないのですが、とにかくチャレンジしてみたいと思ったのです。 私が初めて実際に弓道を目にしたのは、今から2

鳴門海峡 冬の風物詩

冬の訪れと共に、NOMAyadoのある小さな港町が活気づいてきた。 鳴門名産であるワカメの種付け作業が佳境を迎えており、種付けに使うロープを積んだトラックが行き来し、NOMAyado前の小さな港からも頻繁に漁師の船が出入りするようになった。 鳴門ワカメの歴史は古く、1000年以上昔の文献にも阿波の国(徳島県)の貢物としてワカメが使われていたという記録があるほど。年間の生産量はおよそ7700トン、生産量では三陸ワカメには及ばないが、鳴門ワカメは強いコシが特徴。鳴門海峡の激し

音楽と共にある暮らし

NOMAyadoではゲストをお迎えする際に、ゲストのお気に入り曲を流すようにしている。いわば、ウェルカムミュージックとでも言えばいいだろうか。 予約時に任意のアンケートとして、最近のお気に入り音楽を書き込む欄を設けており、記入してくださったゲストには、このウェルカムミュージックを提供する。 すぐに気づいて喜んでくださる方もいれば、アンケートのことなど忘れておられて この曲好きなんですよね〜、とかという感想をいただくこともある。 音楽ひとつのことだけど、初対面の緊張感がスッ

村上春樹、再び

私が初めて村上春樹の本と出会ったのは、カトマンズの小さな古本屋。 日本を離れて2ヶ月が経とうとしていた時だった。 インドを旅する友人からのエアメールに触発されて、バックパックを背負って旅に出たのは、今からもう40年近くも前のこと。 インド北部のベナレスという街に魅せられ、ガートと言われるガンジス川の沐浴場に、来る日も来る日も通い続けた。そこはヒンズー教の聖地で、信徒たちが毎朝川に入り、祈りを捧げる場所。観光客をはじめ、サドゥと言われる世俗を離れた出家者、川で洗濯する洗濯屋

リアルであること

「泊まるだけじゃないNOMAyado」第一弾の展覧会が始まって、 日々、アートに囲まれて暮らす喜びを噛み締めているイボンヌです。 ひとりの時間に、一点一点じっくり作品と向き合っていると、繊細な筆のタッチや、油彩ならではの色の輝きなど、写真などで見ているのと違って、絵画に命が吹き込まれていることを肌で感じることができる。 やっぱりリアルでしか、分からないこと、感じられないことがあるんですね。 今の時代、人もモノも見栄えやイメージが先行して、なかなかリアルな姿というのか、本

深く味わえる自分でいること

落語が好きだ。 もともとうちの奥さんが落語好きで、柳家さん喬、柳家喬太郎、立川志の輔、春風亭一之輔など、彼女が贔屓にしている落語家さんの会にも顔を出すようになって、ますますその奥の深さを知り、抜けられなくなってしまった。 落語というのは舞台セットのない演劇のようなもの。 巧みな話術と感情表現を交えた人情噺などを聞くと、思わず涙がこぼれるなんてことも起きる。何もない舞台を前にしているはずなのに、頭の中に次々と映像が立ち上がってくる。上手い落語家というのは、ただの語り部ではな

「暮らし」が仕事、仕事が「暮らし」

兵庫・徳島の2拠点生活を始めて、まる6年になる。 当初徳島は、親の介護や仕事のストレスから逃れるシェルターとして、月に数日、美味しいものを食べたり、サーフィンをしたり、言わば心の洗濯をするための場所だった。だからというわけではないが、急ぎの仕事を持ち込んでもさっぱり進まなかったし、心が浮かれているせいか、ゆっくり本を読むなんて事もできなかった。 月日は流れ、いつの間にかその立ち位置は逆転。 兵庫は月に数日、映像仕事などの用事を済ませるために向かう場所になっていた。 ・・

続・「言葉」が導くもの

先日このnoteで名言集めいた記事を掲げたのだが、その後もお客さまと話していて心を動かされる言葉をたくさんちょうだいし、「続・言葉が導くもの」を書くことにしました。今回は、漢字の意味するところ、なかなか深いです。 「糸へんに売ると書いて続く」 これは奈良でSaredoという糸ブランドを展開されているお客さまから聞いた言葉。お客さまは、奈良の地場産業である靴下用の糸を製造されている工場の跡取り。近年靴下の生産が中国などへと移り、出荷量が減少。そんな逆風の中でも、楽しみながら、

才能とは、自然とできる行動のこと

元来、あまり自己肯定感が高い方ではない。 できることより、すぐにできないことを数えるし、たまに俺って天才と思うことがあっても、その考えはあっという間にスルスルと萎んでしまう。 先日、「自己理解」のコーチングというお仕事をされているお客様が来られた。 「自己理解コーチ」とは、やりたいことが見つからない、どう生きていけばいいのか分からない、そんな迷える若者に自分とは何者で、何が得意で、何が好きか、対話の中から、その人ならでの才能や価値観、個性に気づかせてあげるお手伝いをすると