マガジンのカバー画像

NOMAyado column

106
兵庫県と徳島県、4年間の2拠点生活を経て、2022年1月から始まった宿プロジェクト。思いをカタチにしていく中で、何を考え、心がどう反応したのか、ありのままの記録と、宿をやっていく… もっと読む
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

音楽と共にある暮らし

NOMAyadoではゲストをお迎えする際に、ゲストのお気に入り曲を流すようにしている。いわば、ウェルカムミュージックとでも言えばいいだろうか。 予約時に任意のアンケートとして、最近のお気に入り音楽を書き込む欄を設けており、記入してくださったゲストには、このウェルカムミュージックを提供する。 すぐに気づいて喜んでくださる方もいれば、アンケートのことなど忘れておられて この曲好きなんですよね〜、とかという感想をいただくこともある。 音楽ひとつのことだけど、初対面の緊張感がスッ

村上春樹、再び

私が初めて村上春樹の本と出会ったのは、カトマンズの小さな古本屋。 日本を離れて2ヶ月が経とうとしていた時だった。 インドを旅する友人からのエアメールに触発されて、バックパックを背負って旅に出たのは、今からもう40年近くも前のこと。 インド北部のベナレスという街に魅せられ、ガートと言われるガンジス川の沐浴場に、来る日も来る日も通い続けた。そこはヒンズー教の聖地で、信徒たちが毎朝川に入り、祈りを捧げる場所。観光客をはじめ、サドゥと言われる世俗を離れた出家者、川で洗濯する洗濯屋

リアルであること

「泊まるだけじゃないNOMAyado」第一弾の展覧会が始まって、 日々、アートに囲まれて暮らす喜びを噛み締めているイボンヌです。 ひとりの時間に、一点一点じっくり作品と向き合っていると、繊細な筆のタッチや、油彩ならではの色の輝きなど、写真などで見ているのと違って、絵画に命が吹き込まれていることを肌で感じることができる。 やっぱりリアルでしか、分からないこと、感じられないことがあるんですね。 今の時代、人もモノも見栄えやイメージが先行して、なかなかリアルな姿というのか、本

深く味わえる自分でいること

落語が好きだ。 もともとうちの奥さんが落語好きで、柳家さん喬、柳家喬太郎、立川志の輔、春風亭一之輔など、彼女が贔屓にしている落語家さんの会にも顔を出すようになって、ますますその奥の深さを知り、抜けられなくなってしまった。 落語というのは舞台セットのない演劇のようなもの。 巧みな話術と感情表現を交えた人情噺などを聞くと、思わず涙がこぼれるなんてことも起きる。何もない舞台を前にしているはずなのに、頭の中に次々と映像が立ち上がってくる。上手い落語家というのは、ただの語り部ではな