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Illustrator 2024(28.1)アップデート情報

2023年12月にIllustrator 2024が「28.1」にアップデートされました。
→ 新機能や改良ポイントついてまとめました。

なお、2024年1月3日の時点で、日本語版のリリースノートは公開されていません。リリースされてから3週間。サボりすぎですー!!!


1. 【新】寸法ツール

新しく[寸法ツール]が追加されました(アドビのヘルプ)。

ツールパネルの[寸法ツール]をクリックすると、ウィジェットが表示され、長さ、角度、径の3つのツールを切り替えられます。

長さ、角度、径のツールを切り替えるキーボードショートカットはありません。
設定もできません。

長さ、角度、径(半径/直径)を計測しながら入力できます。描いたものは「寸法オブジェクト」と呼びます。

計測方法

基本的には次の手順で計測します。

  1. 計測の始点でクリック

  2. 計測の終点でクリック

  3. 寸法オブジェクトを置きたい箇所でクリック

2つのオブジェクトの間隔の計測にも使えます。

半径はよいとして、直径を計測するのは少しトリッキーです。

寸法オブジェクト

「寸法オブジェクト」は寸法線、寸法補助線、寸法テキストで構成されます。

線幅や種類、フォントなどの設定は、コントロールパネル、または、[プロパティ]パネルで後から編集できます。

バリエーション展開

[寸法ツールオプション]ダイアログボックスで各設定を調整すると、次のようなバリエーションを展開できます。

現状では、線の種類(破線/点線)を選択したとき、線分/間隔の調整ができません。そのため、線幅とのバランスによっては、よい結果にならないことがります。

また、幅が狭いときにも寸法線は分割されません。

デフォルト設定

[寸法ツールオプション]ダイアログボックスでは、寸法オブジェクトを構成する線幅、種類、スタイルなどのデフォルトを調整できます。

寸法オブジェクトの移動と3つのアキ設定

寸法オブジェクトには、3つのアキ設定があります。

  • 寸法補助線:オフセット

  • 寸法補助線:延長

  • テキスト:オフセット

テキストの位置は、描いた後に[寸法ツール]でドラッグして移動できます。しかし、四角形の逆側に移動することはできません。

寸法オブジェクトを[選択ツール]でドラッグすると拡張されてしまい、寸法オブジェクトとしての再編集ができなくなりますので要注意です。

複数の寸法オブジェクトのスタイルの統一

[プロパティ]パネルにのみ、次の2つのボタンがあります。

  • すべてに適用:すでに描いた寸法オブジェクトにも反映させる

  • デフォルトとして設定:今後、描く[寸法オブジェクト]のデフォルトにする

寸法レイヤー

「寸法オブジェクト」は「Dimensions」という別レイヤーに作成されます。

レイヤーだけでなく、レイヤー名(=寸法オブジェクト)も英語で表記されます。

  • 長さ寸法:「Aligned Dimension」

  • 角度寸法:「Angular Dimension」

  • 径寸法:「Radial Dimension」

寸法の単位と尺度

寸法ツールは、描くだけでなく、計測できます。

  • [単位]や[精度]は[プロパティ]パネルで設定します(コントロールパネルでは設定できません)。

縮尺は[寸法ツールオプション]の[尺度]で設定しますが、現状ではプリセットからしか設定できません。

再編集

寸法ツールは「ライブ」ではないため、対象の図形を変更しても自動的に更新されません。ムリに変更しようとすると、拡張されてしまいます。

拡張

寸法オブジェクトは[グループ選択ツール]や[ダイレクト選択ツール]で、構成するパーツを選択することはできません。

  • グループ化:NG

  • 分割・拡張:NG

  • アピアランスを分割:OK

拡張を行うには、[プロパティ]パネル最下部の[拡張]ボタンをクリックします。

[拡張]の操作は、アクションやスクリプトで実行することはできませんが、寸法オブジェクトを選択ツールで移動しただけで拡張されてしまうことを利用するのがシンプルです。なお、対象のオブジェクトを一緒に移動しても拡張されてしまうのは不便です…

拡張後、テキストが変形してしまう場合には⌘ + shift + Xキーでリセットしましょう。

また、変更する場合には[線幅と効果も拡大・縮小]オプションをOFFにしておきましょう(ONだと線幅が変わってしまいます)。

まとめ

コントロールパネル、[プロパティ]パネル、寸法ツールオプションの3つのUIでできることの違いです。

なお、コンテキストタスクバーは非対応です。

ワークフローとしては、次のように俯瞰できます。

その他

UserVoiceに【寸法ツール】オプション設定内への要望が上がっています。コメント欄も含めて読みつつ、投票しましょう!


2. [リンク]パネル

2-1. [削除]ボタンが追加

[リンク]パネル下部(一番右側)に[削除]ボタン(ゴミ箱アイコン)が追加されています。なにげに便利。

リンク/埋め込みを問わず、[リンク]パネルはもちろん、アートボード(カンバス)から削除できます。

左:旧(2023)、右:新(2024)

[削除]ボタンをクリックすると、アラートが表示されます。

  • option + クリックしても表示されます(バイパスしたい)

  • 埋め込みでも「選択したリンクを削除しますか?」という文言です。

2-2. 複数画像の埋め込み解除

複数の画像を選択し、[埋め込み解除…]を実行できるようになりました。

左:旧(2023)、右:新(2024)

[埋め込みを解除]ダイアログボックスには[このフォルダーに対して選択したすべての画像の埋め込みを解除]オプションがあります。

  • ONにして実行すると、指定ディレクトリーに書き出される。その際、ファイル名は自動で設定される

  • 「選択したすべての画像」と書いてあるように、選択した画像のみが対象

なお、2023年リリースの27.3.1から[リンク]パネルメニューには[Finderで表示…]コマンドが追加されています。

3. [選択範囲を保存]が [レイヤー]パネルに追加

[レイヤー]パネルに[選択範囲を保存]ボタンが追加されています。

左:旧(2023)、右:新(2024)

2023年6月リリースの27.6から
[リンク]パネルメニューにレイヤーのフィルタリング機能が付いています。

アイコンの意味としては、選択した領域(バウンディングボックス)にリボンを付ける(お気に入りにする)という感じ。

[選択範囲を保存]機能は、ずーっと昔から[選択]メニューにあります。グループ化とは異なり、[選択範囲を保存]はレイヤー構造を保持します。

左:旧(2023)、右:新(2024)
[選択]メニューの最下部に保存したセットが表示され、スピーディに呼び出せます。

Illustrator 2024(28.1)での差分は次のとおり。

  • [レイヤー]パネルにボタンとして実装される
    (クリックするとポップアップが開く)

  • [選択範囲を更新]が追加


4. アセットの書き出しファイル名に「アートボード番号」や「連番」のプレフィックスを追加

これまでも[スクリーン用に書き出し]ダイアログボックスには、[プレフィックス]がありました。

たとえば、「abc-」と入力すると、「abc-アートボード名」のように、書き出されるファイル名に接頭辞が付きます。

Illustrator 2024(28.1)では、これまでの「カスタム」に加え、次の設定が可能になっています。

  • アートボード番号:#AN(Artboard Number)

  • 連番:#IN(Increasing Number)

なお、カスタムには「#AN」や「#IN」を組み合わせることができます。

「#AN」や「#IN」の位置がずれているのは、ご愛敬…
英語版ではずれていません。

せっかくのプレフィックスの強化ですが、次の点で融通が利きません…

  • あくまで「プレフィクス」(接頭辞)なので、アートボード名の前に付く
    (アートボード名の後に付けたいこともあるのですが…)

  • ゼロパディング(1を01のように表記すること)の機能はない

「アートボード番号と連番はどう違うんだろう?」

[スクリーン用に書き出し]ダイアログボックスで、特定のアートボードを対象外にしたとき、「連番」だと欠番をスキップして番号付けを行います。

ここまで書いてきてなんですが、アートボード書き出しには宮澤さん謹製のスクリプトを使うことをオススメします。

理由は次のとおり

  • 標準機能よりも多機能(背景色、ネーミングルール)

  • 標準機能には「テンプレートレイヤーが書き出されてしまう」バグあり

「テンプレート」レイヤーにすることで[プリント]オプションがOFFになり、印刷やPDF書き出しの際、無視されます。

アートボード書き出しでも無視されるべきですが、標準機能では含まれてしまいます。


5. レビュー用に共有: コメントを未読してマーク

日本語版のIllustrator 2024(28.1)では実装されていません。

英語版では実装されています。

Unread(未読)の場合には、青いドットが表示されます。

そして、漢字が中華フォントで表示されてしまっています。


6. プリセットに 「A5」サイズが追加

ドキュメントプリセットに「A5」サイズが加わっています。

以前の[新規ドキュメント]では[サイズ]のポップアップに出てきます。

Illustrator 2023(27)までは、A5サイズはありませんでした。

7. トラッキング設定時のバウンディングボックス

トラッキングでアケ組みにしているときの行末の扱いが変わっています。


【番外編】寸法ツール:サードパーティのプラグイン

寸法ツールって、プラグインでできなかったっけ?

今もあります!

CADtools

CADtoolsはバージョン14になり、2024(28)に対応しています。評価版アリ。

BPT-Pro

ベビーユニバースの「BPT-Pro」はサブスクになり、アップデートされているようです。

Dynamic Measure

Astute Graphicsのプラグイン群にもDynamic Measureがあります。

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