見出し画像

2024年3月4日更新:BOOK REVIEW

2024年3月4日

芸術家は自分の思いのために作品を作るとき孤独になるが、そんな時でも友がいる。

自由な魂と誠実さを持ち合わせるジャン・クリストフは、ドイツで音楽を理解しない人々と対立する。そして、ドイツを追われ、フランスへ移るが、そこでもまた、ドイツの時と同じように、人々と対立するが、そうした対立は、音楽というものを人々に伝えるためだった。民衆の芸術の無知に激しい苛立ちを覚えたが、他人に合わせること、利権に縛られたブルジョワの階級から降りた時、民衆の中に誠実さ、純潔な本能、頽廃しない矜持を持つ貴族がいた。クリストフは、生活費もなく路頭に迷っているが、人々への可能性を捨てず、音楽会に足を運び続け、音楽を磨いているとき、彼を理解する青年に出会うのであった。

ここで、クリストフの精神性は民衆の中の貴族と出会うことで向上した。そうした貴族は、"他人よりも純潔な本能を、おそらくは血潮を、もっていて、それをみずから知り、自分の真価を意識し、頽廃しないという矜持をもっている人々こそ、貴族というべきである。彼らは少数者である。しかし、たとい彼らは孤立していても、彼らこそ第一人者であることはよくわかる。そして彼らがその場にいるだけでも、他の人々にとっては一つの抑制となる。他の人々は、彼らを模範としあるいは彼らの真似をすることを、おのずから強いられる。"の性質をもっている。力量はどうであれ、誠実さ、生への意志の力が強い人々のことだ。彼らの存在が人を変える。

ロマン・ローラン:"ジャン・クリストフ 2巻" 岩波文庫

2024年2月26日

意志を遂行せよ

超人は、永遠回帰をしてしまう人と違い、生の意志を遂行し、永遠から抜け出す。否、否、三たび否、正しいとされる社会を否定する。創造する人が、超人になる。

ニーチェ:"ツゥトゥストラかく語りき"



2024年2月5日

〇〇があるから戦が始まる

平和や自由を多くの人が呪文のように唱えているが、その一方で、そうした理想と逆を突き進むように防衛や武器の製造に力を入れる。お金や土地の資本を持つと、私たちが手に入れたものを誰にも渡さんぞと言わんばかりに、警備を強化する。

徒然草の第11段「神奈月のころ、栗栖野という所を過ぎて、」にも、それと似た話がありました。山里の木々の紅葉した中に庵があり、とても趣のあるところだと思われた。その近くの柑子の木(みかんの木)が立派に育っていたのだが、みかんを取らせないためか、厳重にみかんの木を柵で囲っていて、誰がこんな山中までみかんを取りに来るのだろうかね〜風景を壊さなくても良いものなのにと作者が愚痴をこぼしたお話がある。

資本を増やすと、それを失わないように守る。この思いからは逃れられないのだろうか。節税の話が人気になったり、取られないためにどうするのかについて、血眼になって、話し合う。

人間の性なのかどうなのか、復興支援をしていると、支援物資を受け入れて、被災者に配給するのだが、倉庫がないから建物の部屋を借りて支援物資を並べている。その倉庫の前で整理券を配り後日支援物資と交換をしているのだが、整理券と交換せずに物資をとっていってしまう人もいる。私たちの支援物資は潤沢にあるわけではないから、そうなると必要な量を整理券をもった被災者に届けられなくなるため、私たちはそれを阻止するために見張りを立てて取らせないようにする羽目になる。少し、?マークが頭に浮かぶよね。私たちは支援物資を被災者に届けるためにやっているのに、なんで支援物資を守るのかと。

絵本「六人の男たち」は、戦争が起きる理由を説明している。土地を守るため傭兵を雇ったが、誰も取りに来ないので、傭兵の仕事がなかった。だから、傭兵は怠惰になったから、土地のオーナーは傭兵の力が劣っていくのを恐れて、どこかで戦いの火種をつくった。そうして、傭兵が土地を守るためではなく、火種のために戦いに赴いた。それが戦争の姿なんだと作者は語った。

領土を守るために武力を作るから戦いが生まれる。

生活が苦しくなると、そこには、法律を無視して手を出してしまう。それはどこの国でも同じことだ。だから、資本が多いところは監視が厳しくなる。でも不思議と、私たちはモノを捨てている。それも1つや2つというレベルではなく、湾を覆い尽くすのではないか、海岸を埋め立ててしまうのではないかというぐらいモノを捨てている。ファストファッション、ファストフードの言語が生まれて、衣食住が満ち溢れている。今は捨てなくてはいけなくなった。こうなった時に私たちは何を守るのだろうか?私たちはモノを捨てている。

そうした流れに憂慮して、ヴァージル・アブローはルイビトンの製品を革と見立てて新しい布を使わずに製品を作った。もう布はいっぱいあるのだから、新しく布を作らなくても良いではないか!ファストファッションの福にスクリーン印刷でロゴを打ち自分の服をつくるストリートウェアの流れに乗り世界へ豊富な資源の使い方のメッセージを送る。新しく作らなくてもよいではないか!そして、この流れはシェアリングにも通じる。何個も何個も買わなくても良いではないか!みんなで共有しようじゃないか!

シェアリングが食との親和性はあるかと言われたら、食は食べたらなくなるから、そうした親和性はないかもしれないが、生産現場のところはシェアリングできる。一緒に農地をつくり食を生産したら、農地に関わった人一人一人に食が行き渡る。食材のシェアリングすら、できないこともない。

【参考文献】
"徒然草"
"六人の男たち"
"ダイアローグ"

2023年12月12日

キグレサーカス

"サーカスの子"には、キグレサーカスで生活した人々の足跡が描かれている。19世紀後半から1970年代初めまで続いたキグレサーカスは、大人から子供まで「いてもいいよ」と感じさせてくれる場所であり、誰もが自分の体一つで生計を立て生きた場所である。サーカスは非日常の祭りであり、遊牧民のように毎回、公演場所が変わる。そのため、サーカスで生活する人々はテントをあてがわれ移動しながら暮らしている。人だけでなく、動物もそうだ。そうした中で、団員たちは、表現者としての自分を磨いていた。

サーカスに登場する道化師・ピエロには、クラウンとブッフォンがあり、クラウンは役者がボケて聴衆から笑われるが、ブッフォンは役者がカウンターカルチャーのように社会への風刺・批判をする。役を演じて使い分けることで、その場に合わせることができる。


アスリートから学ぶ強い体の作り方

川端理香「筋肉の栄養学」を見ると、アスリートの栄養学から私たちの体に必要な栄養摂取について学べます。

筋肉は、姿勢や歩行に影響を与えるため、どんな食事をすれば、生活に必要な筋肉を補えるのかがわかります。

まず、筋肉をつけようとすると、タンパク質をどのように食べるが肝心です。 

タンパク質は、ペプチドが連なったもので、ペプチドはアミノ酸でできています。私たちの体内では、タンパク質を分解して、アミノ酸の形で取り込みます。このとき、タンパク質がどんなアミノ酸で構成されているのかを知っておくと、タンパク質を摂っていても、体内に必要なアミノ酸を摂れていないということを防げます。

アミノ酸の摂取を心がける時、気をつけるのが、食材のアミノ酸スコアです。

人体に必要なアミノ酸は20種類、そのうち、人体で作られない必須アミノ酸が9種類あり、食事で摂取する必要があります。また、残りの11種類も体内でつくられるとはいえ、摂取することがすすめられています。

そして、必須アミノ酸がすべて含まれている食材は、アミノ酸スコア100として知られています。例えば、肉類、魚介類、卵、牛乳、納豆です。こうした、肉類や卵、納豆を食事の中に含めることで、必須アミノ酸が取りやすくなります。

また、タンパク質と一緒にビタミンやミネラルを摂ることが必要です。私たちは運動したり、生きることで、少なからず、免疫力を下げたり、体を壊しています。そうした、免疫力や体を修復させるのが、タンパク質、ビタミン、ミネラルです。体内の各地で、さまざまな栄養素が使われ、どれかが欠けることで、栄養不足に陥ります。

タンパク質と一緒にビタミン、ミネラルの摂取を心がけましょう。

ビタミンは修復、免疫や発育に関わり、ミネラルは骨や血液の成分や筋肉の収縮に関わります。ビタミンは水溶性と脂溶性にわかれます。水溶性ビタミンは、A、D、E、Kです。水溶性は、ビタミンB群とCです。

次は、ビタミンやミネラルの効用について見ていきましょう。

ビタミン一覧


ビタミンAは、成長や免疫に関わるビタミンです。レバーやうなぎに豊富です。また、にんじんやほうれん草を摂ることでベータカロテンを摂取でき、これがビタミンAに変わります。

ビタミンDは、骨の強化と、筋肉増強さようがあります。魚介類や椎茸に多く、また、日光に浴びることで体内で精製されます。15分から1時間で、1日に必要なビタミンが作られます。

ビタミンEは、活性酸素という老化の原因となる物質を取り除きます。これは、魚介類やナッツに多いです。ビタミンAやCと一緒に摂ると吸収率が上がります。

ビタミンKは、骨粗鬆症予防に必要なビタミンで、納豆に多いです。また、ケールやほうれん草、モロヘイヤにも豊富に含まれます。

ビタミンCは、肌の艶を出すコラーゲンの合成や、細胞と細胞を繋ぐ役割があります。野菜や果実に多く含まれます。

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えます。豚肉、ニンニクやネギ、ごまに多いです。豚キムチは、ニンニクと豚肉が取れる疲労回復効果の高い食事です。

ビタミンB2は発育のビタミンです。また、口内炎にも効果があります。レバー、うなぎ、カレイ、さば、納豆に含まれます。

ナイアシンは、アミノ酸のトリプトファンから合成できるので、タンパク質を十分にとっていたら、体内にあるので意識しなくてokです。

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝に関わるので、タンパク質の吸収に関わるビタミンです。ただ、腸内細菌から合成できるビタミンでもあります。鮭、マグロ、鯖の魚介類、鶏胸肉、レバー、牛肉、バナナに含まれます。

ビタミンB12は、血液を作るビタミンです。不足すると貧血になります。トレーニングをすると、筋肉や血液が壊されるので、摂取したいビタミンです。貝類やレバー、サンマに含まれます。動物性食品におおく、植物性食品にほとんど含まれません。野菜中心の方は、サプリメントで補給する必要があります。

葉酸は、細胞を作ります。ほうれん草、春菊、ブロッコリーなど、緑の多い食材に含まれます。また、ビタミンB6と同じように腸内細菌から作られます。

ビオチンも腸内細菌から作られます。生卵を10個とか食べた時は、卵白のアビジンがビオチンの吸収阻害をするので、卵かけご飯に卵を10個使うとかはやめましょう。

ミネラル一覧

カルシウムは、骨や歯、血液の成分です。血液のカルシウム濃度が少なくなると、骨や歯からカルシウムが血液に流れ込み、骨や歯が脆くなります。こうしたことを防ぐために、カルシウムが含まれる牛乳やイワシ、厚揚げ、高野豆腐をとると良いです。

マグネシウムは、骨や歯に70%含まれ、筋肉に30%含まれます。海藻や、貝類におおく、牡蠣に豊富に含まれます。

鉄は、血液に酸素を取り込む時のヘム鉄に使われます。鉄は、ビタミンCやクエン酸、お酢と一緒に摂るとよく、卵黄や納豆とお酢をかけると効率よく鉄を吸収できます。また、レバーやマグロ、牛肉には豊富にあります。

ナトリウムは塩から摂取できるますが、ナトリウムの摂取量を抑えるようにした方が良いです。取りすぎたら、カリウムの摂取でナトリウムが排出されます。

カリウムは野菜にふくまれているので、野菜を食べていると大丈夫です。


体が100倍強くなる方法

「病気にならならい体のつくりかた」という本の表紙を見た時、氷水に使っている変な人だと思ったが、内容を読んでみると、ヨガトレーニングとそっくりであった。起きたら、冷水シャワーを浴びて、瞑想、そして呼吸法を取り入れ、身体機能をあげるトレーニングを行う。この一連の流れを毎日行うことで、私の師匠と勝手に読んでいるヨガマニアは、超人的な身体機能を持っていた。真冬でも麻布の薄い半袖短パンで過ごしていた。初め、北国出身だから、寒さに強いのかと思っていたが、冷水シャワー、瞑想、呼吸法、食事管理を取り入れた生活は身体に秘める力を最大限に引き出している。ヨガの観点からも、本書の中で調査された医学的な観点からも、本書のトレーニングは、「はじめはそんなバカなことを!」と思うかもしれないが、理にかなっている。愚か者を通して世の中は変わっていく面白い例でもある。

さて、本書で書かれているトレーニングは、コールドトレーニングと呼吸法、食事管理である。

コールドトレーニング

コールドトレーニングは二つある。一つは、冷水シャワートレーニング、もう一つは氷水トレーニングだ。

コールドトレーニング:冷水シャワートレーニング
①温かいシャワーを浴びながら、 3〜 5秒かけてゆっくりと息を吸い、 3〜 5秒かけて吐く。鼻から深く息を吸って、ゆっくり吐く。これを 1分間続ける

②温度を下げると呼吸が止まったり速くなったりするかもしれないが、そこで大事なのは呼吸のペースを戻すこと。呼吸を操れたとたん、冷たさが違って感じられるはずだ。慣れるまでは無理をしない

②の温度に慣れたら、また温度を下げる。呼吸が変わったら、ゆっくりとした呼吸に戻そう。これを 2〜 3回繰り返して 1〜 2分間、冷水シャワーを浴びる。 1か月かけて少しずつ低温に慣れればいい


コールドトレーニング:氷水トレーニング
①大きめの容器に冷水を入れ、氷を加える。

②両手を氷水に入れる。

③両手が温かく感じたら、手を出す。2分間経っても手が温かくならなければ、そこで終わりにしてよい。

呼吸法

①無理をしすぎず鼻から深く息を吸って、ゆっくりと吐く。完全に吐き切らず、肺に空気をほんの少しだけ残す。これを最も気持ちよく感じる速度とリズムで 30回繰り返す

②息を完全に吐き切り、もう一度思い切り深く吸う

③再びゆっくりと吐き、あごを引いて息を止める。吸わずにいられなくなったら、呼吸を再開する

①〜③を頭がクラクラになったり、くたびれるまで何度も繰り返す。

私たちが取り込んだ酸素の90%はミトコンドリアで使われ、ATPエネルギー生産に使われます。はじめに、ゆっくり深く呼吸すること体を落ち着かせ、息を吐いて止めることで、心拍数の減少や、血圧の低下が見込めます。こうして、ミトコンドリアを活発化させます。

食事管理

栄養価の高い食事を午後5時〜10時の間だけたべる。炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルのバランスに気をつけます。栄養に関しては別の記事にも書いています。


こうした、コールドトレーニング、呼吸法、食事法を繰り返し行うことで、身体機能の向上はもちろんのこと、体温の上昇、免疫機構の機能やがんの発症といった、数多くの重要な生理学的処理の基礎となっている核因子 k B(カッパービー)、略して N F − kBの活動に影響を与えられるようになる。病気にも強い体が作られる。

光で心がわかる

脳内はシナプスが結合することで、電気信号で伝わっている。外部からの刺激に対して、外部に信号を出力することでしか計測ができなかったところ、光遺伝学の手法を使うことにより、脳内に光に反応するタンパク質(ロドプシン)を送り込むことで、光に反応して電気信号を起こせるようになったため、脳内の信号のやり取りが可視化できるようになった。そのため、行動に対して脳細胞のマッピングができるようになった。私たちの行動抑制の方法や行動を促す方法もわかってきている。

カール・ダイセロス:"「こころ」はどうやって壊れるのか"より

ソウルロッカー

魂のロッカーと書かれていたから、魂を入れておくタンスのことかと思っていたが、英語表記では、ROCK'N' ROLLのことだとわかり、ごめんなさいと思って読み始めました。

アーサー・ホーランド:"ロックンロールバイブル"

喜怒哀楽が人の心理であり、真理こそ人を自由にする。

"正しいか間違いかで決めるより、最後は好きか嫌いかで決めればいい。"
"あなたはあなたの大切な進むべき道があることを忘れることがないように"
"必ずどうにかなる。今は己との戦いなのだ。自分を赦すことだ"
"愚かさを認めている奴を通して世は変えられるのだ。"
"人智を尽くして天命を待つのだ。""もっとイマジネーションを養うことだ"
"あなたが人に対して思う気持ちや行動であらわす態度こそ、あなたの中で育まれて来た体験に基づく価値観であり、生き方なのだ。"
自分の感覚に触れたもの、感情として湧いたものを無視するな。人は、知性がなくても、感覚でダメなことがわかっているようで、脳がそう判断しているようだと実験結果もあるみたいで、どうやら、私たちの感覚にビビッときたものをそれなりに信頼してよい。それを自分で把握する。


社会が変わるたびに変わる善と悪

裁判で陪審員をしていたネフリュードフは、容疑者に仕立て上げられてしまった女性が、以前、小間使いで恋仲になり子どもを宿らせたが分かれ離れになったカチューシャと気づく。過去の禍根の償い誓い、罪なきカチューシャの無実を晴らそうと奮闘する中で、ネフリュードフは、法の社会構造を知り、自身の役割を知る。

裁判で人の無罪、有罪と決めるわけだが、人間とは何なのか。私たちは、報道や裁判の結果、人を分類してしまう。しかし、トルストイは、人間の性質をネフリュードフを通して、"おのおのの人は人間性のあらゆる萌芽を蔵しているが 、ある時はその一部が外面にあらわれ 、ある時はまた他の性質が現われる 。で 、人はしばしばまるっきり別人のようになってしまうけれども 、その実 、依然として同一人なのである 。"と書き記す。人はもともと複数の性格をもちどの表情が表に現れるのか判断しづらい。経験から、考えが変わってしまい、もともとの性格が別のものに変わることもある。

人は、そうした不明確な存在だが、一方でネガティブなことには著しく反応してしまう。例えば、法律で罪の範囲が決められているからこそ、それ以外は良いことになる。悪いと決めたことを通して、良いことが決まっている。でも、人はうちに複数の表情を持ち、善悪は、その人の過去からの立場であったり、その時の感情で揺さぶられる。だからこそ、人の好意に対して、行きすぎたところを止めるために法律があり、社会の変化に応じて、法律も変わる。善悪も変わる。時代によって変わる社会構造の中で善悪を決める裁判を題材にして、人間に迫った本が、トルストイの「復活」だ。

ストリート

かつてデザイナーのヴァージルアブローは「ストリートウェアはファッションの言語になった」と言っていた。そして、彼は、すでに服があるのにさらに服を作る必要があるのかと問いかけ、ストリートウェアの考えを元にルイヴィトンの生地にOFF-WHITEを印刷して、彼のブロンドに書き換えた。それは、多くの人を魅了し、ストリートウェアの可能性を押し広げた。その流れは、スポーツウェアにも波及し、今なお多くのブランドが生まれている。

スポーツは誰もが気軽に取り入れて楽しめるものであり、アマチュアとプロがあるように、熱中し続ければ先の世界に行ける。サッカーでスラムの成り上がりのプレーヤーが頂点を極める話はよく聞く。ストリートウェアも底辺の裾野をもち、頂点に駆け上がる可能性を秘めている。そして、copy and pasteの考えで、誰かのアイディアをすぐに取り入れ、発展させられる。ストリートには、素人の楽しみが大いにある。

1000年の知恵を学ぶ

国、会社、グループ、チームをまとめてくときに、リーダーが何を気をつけると良いのか書かれている。リーダーは背中を見せるため、学びを深め、例えば、礼や書物について精通し、チーム内では憚ることなく意見ができる環境を整えていくようにしましょう。さて、今の時代の学びとは何だろうか?現代は、生成AIが跋扈し、割と何でも聞けば回答が得られる状況では、学びはAIが勝手にしているかもしれないが、そこから出た回答を聞いて理解できるかはヒト側の努力になることを踏まえると、やはり、学びを深めないと、目の前に転がる宝を拾えないと思われる。この、先人たちの声を集めた書物の言うことを真面目に考えた方が良いだろう。

心の対話

以前、ダイアローグインザダークが主催した西川梧平さんのピアノコンサートに行った。彼の強さは、ピアノと言葉を通した対話だった。コンサートの参加者を言葉で惹きつけ、お話に合わせたピアノを弾く。指の本数に関わらず、求め続ければ、表現できることはたくさんある。しかし、表現できる場所を獲得するには、資本主義の土俵で結果を残さなければならない。そうでなければ、次のステージに立てない。

心のままに生きる少女

久生十蘭「キャラコさん 社交室」は、石井剛子の心の変化を通して語られる、人を理解することの難しさや人への気づかいについてのお話です。ホテルにひっそり滞在している老人の正体は何だろうか?理性は感情を押し殺せるのか?噂を広げる人々はなぜ言葉に重みがないのか?「キャラコさん」はそうした人間心理が描かれています。

クソどうでもよい仕事の捉え方

デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ」の信条は、"人間とはたんに社会的な動物であるだけではない。もしも、他の人間との関係から切り離されたならば肉体的な崩壊がはじまるほどに、本質的に社会的〔な存在〕なのだ。"だろう。

ここでいう、ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態のことである。

"ブルシット・ジョブにはまりこむことによってなぜ壊滅的な効果がもたらされるのか理解するための、最初の手がかりが与えられる。まず、役に立つから雇用されたかのように扱われる。そして、実際そうであるように調子を合わせてふるまっている。ところがそれと同時に、自分が雇われているのは役に立つからではないということも痛烈に自覚している。このようなあり方が、ひとに甚大なる悪影響を及ぼしてしまうのである。それは、個人の自尊心を損ねているのみならず、わたしはわたしであるという根源的感覚に対する直接攻撃なのだから。意味のある影響を世界に与えることのない人間は、存在することをやめてしまうのだ"

興味深いことに、富裕国で働く30〜40%の労働者が自分の仕事を無意味だと思っていることだ。彼らの力を別のところに使えたら、どれだけ有意義だろうか?

"とはいえ、こうしたテーマの検討に先立って、ブルシット・ジョブに就業する者たちが一概に惨めであるわけではないことを認めることが重要である。"

ブルシット・ジョブをすることで賃金を手に入れ、子どもたちの養育費を稼ぐとなると、無意味な仕事だが、自分の子どもたちのためになっているのだ。人間関係が目の前の無意味な仕事を有意義に変えるのかもしれない。

ブルシット・ジョブを認めないなら仕事を変えるべきであり、ブルシット・ジョブを認めるなら良い人間関係を作っていくべきではないか。

素直な気持ちで1日を過ごさせてください

松下幸之助「リーダーになる人に知っていてほしいこと1」には、お礼、掃除、話を聞くといった、人生の至る所で、「素直さを持つように」と書かれている。その時の一挙手一投足に人のあり方が現れる。自分に素直になれば、自分を客観的に見ることができ、仮に不安を煽られたとしても、今は不安になっているんだと気づき、また元の安定した状態に戻れる。そうして、無策で飛び込んだり、見込みのない戦から身を離すことができる。また、一見面白みのない仕事が、その仕事が存在していることで誰かの役に立っているなら、そうした仕事を尊く思うようになるべきだと、松下幸之助は言っている。すべてのものを尊く思えるからこそ、自分の持っているもの以上の何かを掴める可能性が生まれる。それは、悟りのようなもので、体得するしかない。

超高速の世界

物理の分野で第一原理計算というコンピューティングがある。AIみたいに、こんな物質を作ってみたいのだけれどどうかなと聞いたら教えてくれる。この方法論は1930年代に生まれた。その後、ハードウェアの進歩とともに、コンピューティングの予想が現実味を帯びてきた。その時に超伝導に関する計算で第一原理計算は躓いたかに見えた。ある一派は現実に合う計算をしていないから、うまくいきようがないと言い、別の派は、現実に合わない計算をしているから現実を何か教えてくれるという。それが、1990年代に決着を迎え、後者に軍配が上がった。こうして、ハードウェアの進歩とともにコンピューティングは進化し、壁を乗り越えることで、普及する。AIもそうだ。1960年代に概念が生まれた。そこから50年後に、日本の会社でもAIの可能性が囁かれ、その度にうまくいかないのではないかと疑問を呈された。しかし、2020年代にAIがもう神なんではないかと言われるようになった。そして、2024年にエクサスケールのコンピューティングが生まれるため、現在のスパコン富岳が442000兆(442ペタ)フロップスの計算性能に対して、エクサスケールでは110京2000兆フロップスになる。CPUの限界をさらに引き上げることで、AIの計算性能を格段に上げる。

福岡が地方最強になったのは〇〇

リッツカールトンができたり、スタジアムが建設されたり、若者人口、生産人口が増加と、今、福岡が熱い。その理由は何だろうか?というのが、木下斉「福岡市が地方最強都市になった理由」に書かれている。何も、都市開発だけのことを書いているのではなく、集落に関わる方にも関係する話であり、都市と集落の中間に位置する街にも関わる話が書かれている。

一言で言えば、まちづくりは、目先ではなく、次世代を見据えて、行政に優秀な人を集めるのではなく、民間主導で変わり者が地域の課題を捉えて変えていくこと。

まず、日本の都市は、経済発展しているとき、鉄鋼業や工業地域を主にして成長した。しかし、経済発展がうまくいかなくなったとき、次の発展・展開ができなかった。貞観政要に書かれているように、誰も諫言を聞けなかったか、言い出せなかったかで、発展しているときに次に来るものの危機感が足りなかった。一方で、同じアジアで発展している都市にシンガポールが挙げられるがここは、ハブ空港を都市近郊に作り、産業を発展させ、さらに、学術研究を盛り上げた。日本の都市とシンガポールの都市の違いは、課題が何であるのかを真正面から考え抜いたか、外部の意見や外資を取り入れ発展させられたかだと言われている。

今では、参考にできる都市が日本にも、世界にも現れているから、逆に言えば、これまで発展できなかったけれども、都市開発•街づくりのポイントが何であるのかが分かれば、チャンスは広がる。

福岡市が伸びたように、流山市や明石市が先日、ニュースを賑わせていた。それは、これらの都市に共通して、"都市を「一つの会社」で捉えると、やるべきことが見える"と考えたからではないだろうか。というのも、都市計画の基本は、官民のヒト・モノ・カネを生産性の高いカタチで活用して、平均所得の向上を目指していくことだからだ。住んでいる人たちに高い所得をもたらし、ストレスのない生活環境が整えば、人口が増えるのだ。流山市も明石市も、子育てをしやすい街にして、人々の生産性をあげたから、暮らしやすい町になった。保育園や学校の教育の充実は、街づくりの中で避けて通れない道だ。

そして、都市に絞ると、世界的にもウォーカブルシティーが流行っている。歩ける範囲で生活環境が整えられるのは住みやすさの中で大きな利点になる。福岡市は、そこに、交通網を充実させた。電車、バス、タクシー、都市近郊に空港を整備、クルージング、船の往来までを取り揃えたコンパクトシティーを維持し続けた。それは、福岡市が、"福岡市のような管理中枢都市の経済は、周辺都市からの人口や消費の流入によって成立します。"と理解していたから、無理に郊外の開発を進めず、街としてコンパクトになることで、エリアマネジメントの強みを生かせるようになり、必要なところだけを伸ばし続けた。

こうした政策ができたのも、福岡市の立てた総合計画が、「市民にとって本当に正しい選択なのか」という議論を市民に代わって新聞社が行い、その議論を積極的に公開し、自治体に問いかけていくという努力をしたからだ。福岡市と市民の両方の立場で意見のやり取りをして、考えを巡らせることで、みんなが街を盛り上げようと動き出した。

こうした取り組みは、民間の力を使い都市を発展させようとした機運を作り出す。民間事業というのは、競争と淘汰により発展していくものだから、民家事業でしっかり稼げる都市を作り出す。だから、地方都市の発展において、他都市との違いをつくり出すためには、行政事業ではなく、地域内外からの資本を用いた民間主体の事業だ。福岡市にスタジアムやリッツカールトンができたというのは地域内外の資本をうまく取り入れるということを体現した。福岡市では、街づくりをあえて民間に委ねることによって、都市計画だけでは見えない、現場だからこその知恵を生み出すことが可能になった。

福岡市は、行政の次世代を見据えた計画を市民に問い続け、若者人口に着目した政策を行い、そして、民間主導のまちづくりを進めたことで、最強都市の座をものにした。

生命を説明せよ

生命をどう定義しようか?その一つの問いを考えるための本が「生命とは何か」だ。これまで、生物の分野では、遺伝子を入れたり減らしたりして、どんな現象が起きるのかを見たり、詳細に構造を調べようとした。

しかし、そうした努力だけでは、生命とは何か、という問いに答えられないのではないかと疑問を呈する研究者が増えた。

研究者の向かう進路を決めるため、先端研究に勤しむ研究者が集まり、話し合った。そこで、生命をどう定義すると良いを議論しあった。遺伝子を持っているもの?動いているもの?何が良いのだろうか?

それまで、一つ一つの性質を見ていたが、それら一つ一つの細胞や機構を貫く大きな法則があるのではないか?そうした法則を記述するのは、数学や物理の言葉だろう。そこで現れたのが、同一粒子を多量に扱う平衡・非平衡統計力学の考え方だ。しかし、細胞内は、一つの原子数が多いというより、高分子の種類が多いため、物理の世界の統計力学を変更する必要があったが、そこは、物理側のブレイクスルーがあり、「ゆらぎ」の概念が生まれた。

「ゆらぎ」をうまく細胞内の高分子(タンパク質等)のシミュレーションに応用し、細胞内の現象を捉えられるようになった。こうした、数学・物理・生物の融け合ったところに、生命とは何かのヒントが隠されているかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?