見出し画像

競争の無い市場をつくれ。という、ブルーオーシャン戦略

連休に時間が取れたので、前からやってみたいと思っていた、Wチャン・キムさんのブルーオーシャン戦略を読み返してみました。

ブルーオーシャン戦略は、もう今から10年以上も前に発表された戦略論です。競争のない世界で事業を展開するためのアプローチとして、世界中の経営者から注目をあつめた論文です。

ブルーオーシャン戦略について(復習)

ブルーオーシャン戦略は、INSEAD大学のWチャン・キムらによって提唱された、事業戦略のコンセプトです。

市場をレッドオーシャンとブルーオーシャンになぞらえており、激しい競争がある既存市場をレッドオーシャン、そして競争のない新しい市場をブルーオーシャンと説明しています。

ブルーオーシャンは、市場競争があるレッドオーシャンを抜け出したその先にあると説いています。知られざる市場であり、誰の手もついていない。そんな市場がブルー・オーシャンです。なんだか、ワンピースに似ていますね。

ブルーオーシャンの例でイメージをつかもう

ブルーオーシャンとは競争のない市場と言われても、イメージがつきにくいですよね。そもそも競争のない市場など、現在ではほとんど存在しない。

ブルーオーシャンの例としてよくあがるのが、コロナウイルスの余波を受けて活動を縮小せざる負えなくなってしまったシルク・ド・ソレイユです。

従来のサーカスでは当たり前だった、「花形スターの演出」「動物の登場」「子ども向けのエンターテインメント要素」を取り除いてしまいました。そして、ターゲット顧客を、大人に限定し、チケットの価格を演劇等と同じレベルまで引き上げます。

日本のブルーオーシャンの例

日本にもブルーオーシャンの例があります。オロナミンCドリンクです。

オロナミンCは1965年に大塚製薬さんが販売した炭酸栄養ドリンクです。わたしも子どもの頃に、(あまり意味なく)飲んだ記憶があります。内容量は120mlで他の缶ジュースと同じ価格設定。スーパーや、大塚製薬の自動販売機でよく売れており、1985年までに累計100億本も売れたそうです。

オロナミンCドリンク発売当時、新しいカテゴリーの製品になりました。それまで、炭酸飲料水という市場があり、一方で、薬局などで売られていた栄養ドリンクの市場がありました。オロナミンCは、栄養ドリンクに炭酸を加えることで、その売場を薬局以外に持つことに成功したのです。オロナミンCドリンクは炭酸飲料水と価格が同じであり、栄養ドリンクよりも安く、栄養ドリンクとしてコストリーダーシプを獲得することができました。

当時、オロナミンCドリンクは、ブルーオーシャン市場を作り出すことに成功しています。今では、数多くの栄養炭酸ドリンクが存在しています。そうはいっても、オロナミンCドリンクは、当時、先行者利益をたくさん獲得できたのではないでしょうか。

ブルーオーシャンにたどりつくためには

Wチャン・キム氏によれば、ブルーオーシャン市場をつくりだすためには、マイケル・ポーター氏の提唱する「コストリーダーシップ」と「差別化戦略」を両立させることが必要条件となります。ブルーオーシャン戦略とは、たったこれだけです。

コストリーダーシップと差別化戦略を両立させることで、市場の新たな需要を生み出し、製品のあらたな提供価値が生まれます。こうして書くだけなら、ブルーオーシャンをつくることは、そんなに難しくないように聞こえてしまいます。

ポーター先生に逆らって、コストリーダーシップと差別化を両立する

市場のトップ企業が大きな市場シェアを獲得することで、その製造や流通コストを下げることができます。その結果、同市場の2位以下に比べてコストにおける優位性(リーダーシップ)を確保することができます。これは、競争戦略では、テッパンとも言える概念です。マイケル・ポーター氏が提唱していますね。

コストリーダーシップを、ブルーオーシャンにて成立させるためには、既存の製品から既存機能を取り除いたり、減らしたりします。電気ポットから保温機能を取り除いたティファール、従来の散髪から洗髪やひげ剃りなどを取り除いた1,000円カット、至れり尽くせりの機内サービスを減らしたLCC(格安航空会社)などがあります。

一方で、差別化をします。上記の取り除いたサービスで、顧客価値や顧客満足度を高める工夫をします。同時に、複数の市場に関連するニーズを探す。前述のオロナミンCドリンクで言えば、栄養素を確保しながら炭酸でのどごしスッキリ。のような感じです。

顧客ニーズをとらえながら、市場の境界線を改めて引き直すことで、新しい市場=ブルー・オーシャンを作り出します。

ブルーオーシャン戦略って、新しい戦略なのか?

ブルーオーシャン戦略について理解が深まると、1つの疑問が生まれてきます。

「そもそも、ブルーオーシャン戦略って、新しい戦略論なのか?」と。

コストリーダーシップと差別化なら、従来の戦略論でさんざん議論されつくされているような気がします。どこにも真新しさがありません。だから、あらためて「戦略」と称させると、まったく新しい競争戦略のように聞こえて誤解が生じる原因となるように思えます。

新しい市場をつくるとか、競争を避ける、ということは、差別化とか、市場を特定し資源を集中投下することで他社が提供できない価値を提供するポジショニングという戦略論の概念でさんざん使われてきました。

同じものを低コストで提供するコストリーダーシップも同じです。ブルーオーシャン戦略は、新しい理論やコンセプトなどなく、すでに知られている戦略要素を新しく組み合わせながら、顧客ニーズにあったサービスを提供するという点で、新しさはあります。

既存の戦略論は、あくまでも市場競争をするための戦略です。ブルーオーシャン戦略は、そもそも競争が存在しないことが前提でありながら、新しい戦略論の要素が無い。ここがブルーオーシャン戦略を、新しい戦略として捉えがたいところでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?