紙のノートは厚みと共に

修士課程を卒業して会社員になったのは1995年でしたか。それからゲームプログラマとして25年、ずっと紙のノートを思考の助けに使っていました。いまでも続いている、創作のマストアイテムです。

それをぜんぶ保管していたのは偶然ではありません。よくあるんですよね、「これは一度考えたことがある、たしか〇〇の作業をやってたとき」のようなことが。紙のノートは検索性に問題があるようにも思えますけど、時系列に並んでさえいればすぐに見つけられます。実際に昔のノートを参照することがあるんです。なので宝物とも言えます。

今回改めて内容を見てみると、これがなかなか面白い。せっかくなので、差し障りのない範囲でピックアップしてみましょう。

セガ期(8冊)

この時代はネット検索も十分にはできなかったので、基本的にはゲーム実装も我流でした。工学部だった大学時代の名残で、オーバーシュートの問題を解いていたみたいです。生意気なヤツですね。でもこのページは後々もよく見返していました。

ソニー期その1(4冊)

某シューティングゲーム期です。

わかる人にはわかる、いかにも PlayStation やってるなあ、という図。生々しいですが、まあこのぐらいは大丈夫でしょう!

でたーアナログ渡し。ちゃんとツールを作る場合もありますが、ゲーム中にひとつしか出てこないような仕様だとこうやって口頭でがんばるに決まってますよね。

ほか、画像は自粛しますけどメモリマップにスタックの番地まで書き込まれている図もあってアツいです。当時はメモリの動的確保をやらない実装も普通でしたね。この某シューティングは自作のアロケータで動的確保をやっていましたが。

ソニー期その2(9冊)

某レーシングゲーム期です。ハードはPS2とPS3。ここはちょっと公開できない内容ばかりだったのですが、興味深い裏表紙の記述を見つけました。

Wake me up! つまり「用があったら起こして」ですね。これを下げて、机の下の寝袋で気絶していたものです。プロジェクトが佳境になると、起きる→限界まで働く→気絶する、をひたすら繰り返します。周期が24時間ではなくなり、曜日が消滅し、世界の時間の流れから切り離されます。ブラックですねえ。楽しかったですけど。
(いまはホワイトだと思います!)

Unity期(継続中7冊目)

Unityにお世話になってもう5年になりますか。講演のメモが多いですね。

この証明は「乱数完全マスター」っていう講演のために準備したけど使われなかったもの。よくありますそういうこと。

たまにヘタクソな絵を書くこともあった模様。

謎の情熱で群数列を解いていました。これは講演中のオマケコーナーで採用。

そんなこんなで今に至ります。

ノートに歴史あり

同じことを25年も続けると、それなりに厚みも出てきますね。長く生きてると忘れちゃうことも多いのですが、この、ノートに書き込みながらウンウンと唸っていたのは、紛れもなく自分でした。

こんなのを見つけました。セガ時代、ようやくアセンブラじゃなくC言語が普通になってきた時代。ある先輩がニヤニヤしながら、質問を書いてきたんです。なに勝手に他人のノートに書いてるんですか。「リファレンスのことです」と書いたらこんな問答に。その間言葉は交わさず、書いては相手に渡して、を繰り返す・・いまでいうテキストチャットみたいに。

そうそう、こんなことありました。ずっと忘れていたけど、あのときの机の場所、先輩の表情も思い出しました。

今年の夏、その先輩は急逝してしまいました。あまりにも急で、一報を聞いてもずっと実感がわかないままだったんです。これを思い出して、いまやっと少し涙が出てきました。先輩には、仕事にユーモアがどれだけ大事かということを教わりました。この25年でいちばん好きな先輩でした。

先輩ありがとうございます。ご冥福をお祈りします。

#創作のマストアイテム

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