大学事務での研究者データ作成の自動化

概要

部員の太田優希と髙谷つぐみが、岡山大学研究協力課のデータ処理業務における技術支援を行いました。日本学術振興会から提供される競争的研究費への応募・採択情報を基に、岡山大学の部署ごとの統計データを作成するシステムを開発しました。異なる識別子で管理されている研究者の同定を自動化することで、担当職員の労力を軽減するのが目的です。

はじめに

大学に所属する研究者には競争的研究費を獲得することが求められています。岡山大学研究協力課でも、学内研究者の競争的研究費への応募・獲得状況を把握し、活動を支援する業務が行われています。これまで、この業務に必要な学内の部署ごとの統計データは、日本学術振興会から提供される情報を基に担当職員が手作業で作成していました。特に、競争的研究費関連の管理を行う外部システムe-Radと本学職員録のデータは共通の研究者識別子を持っておらず、研究者の同定が負担の多い作業になっていました。

手法

日本学術振興会から提供される競争的研究費への応募・採択情報を基に、学内の部署ごとの統計データを作成するシステムを開発しました。システム全体としては、日本学術振興会からのファイルを指定されたディレクトリに置き、デスクトップのアイコンをクリックするだけで、統計データを含むファイルを作成します。内部の処理としては、まず研究者の生年月日により同一人物の候補を作成し、次に旧字体等の表記ゆれを考慮した姓・名の照合により同定を行いました。これによって本学職員録内の研究者が同定され、その研究者が所属する部署が特定できます。

結果

文部科学省所管の競争的研究費である科学研究費補助金(科研費)について本システムを適用したところ、今年度の本学の科研費採択案件のうち約96%について研究者を自動で同定することができました。同定できなかった約4%については個別の例外処理をすることで対応しました。また、研究者同定の結果として、採択者についてはe-Radと本学職員録の研究者識別子の対応が得られました。

考察

同定できなかった場合のほとんどは外国人の研究者で、e-Radと本学職員録で氏名の扱い方に差異があったことによるものでした。このような場合は、氏名のアルファベット表記の併記や、姓・名およびミドルネーム等の扱いのルールを厳密に行うことで削減が期待できます。

おわりに

研究者を同定するシステムによって、競争的研究費に関する統計データ作成の労力を大幅に削減することができました。また、結果として得られた研究者識別子の対応によって、今後の同様の作業についても効率化が見込まれます。今後は、学内の複数のシステムにおいてですら独自に用いられている研究者の識別子について、統一的に管理できるシステムの導入が必要だと考えています。

備考

e-Rad : 府省共通研究開発管理システム。助成金や補助金の申請、採択、結果報告等の研究開発管理に係る一連のプロセスをオンライン化するとともに、適切な研究費の配分を支援する府省横断的なシステム

謝辞

この活動は、協力教員の馬場謙介先生の業務の補助として行いました。

著者

太田優希
髙谷つぐみ


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