ツイッター用1

Twitterで卒制を公開した本当の理由

私が在籍している桑沢デザイン研究所の卒業制作展『桑沢2020』の中止が決定した翌々日の2/28、私の卒業制作の作品画像をTwitterへ投稿しました。

今回このツイートをするにあたって、投稿するか一日中悩んだし、投稿するツイートが完成してからも1時間以上悩みました。

#桑沢2020 というツイッターでの作品公開をした理由や、自分が思ったこと、思っていることを書いていきたいと思います。


自分の作品をツイートしようと思った理由

投稿後しばらくしてバズり、ツイートした理由をプロフィールに固定しました。

これが、ツイッターに投稿しようと決意した時の想いです。

投稿することでどこかのメーカーにアイデアを取られたりしても、私はこれからもたくさんのアイデアで次々新しいものを生み出していく自信があります。


ただ、もう1つ別の理由があります。

卒業制作展で発表するより、ツイッターで発表する方が報われる作品だと思ったからです。

桑沢には「デザインすること」に対して真摯に取り組んでる人が大勢います。

今回#桑沢2020のツイートがバズっていた人たちは、そのような人たちです。

彼ら彼女らは、桑沢でもかなり優秀な人たちだと私は思っています。

ただ、レベルが高いと言われている桑沢にも、中途半端な人、デザインに向いていない人、遊んでばかりの人、いろんな人がいます。

私は客観的にどうなのかは知りませんが「中途半端な人」に当てはまると思っています。デザインしていくうちに飽きていき、アイデアを思いついた時の熱はすぐに冷めていきます。

卒業制作をしている時もそうでした。

このアイデア最高!素晴らしい!卒業制作展まで頑張るぞ!という気持ちは次第に薄れていき、自分のデザイン本当にこれでいいのか?まぁいいか、時間もないし、とりあえず作らなくては、間に合わない。そんな気持ちで取り組んでいました。

そんな気持ちで取り組んでいる作品が良いものになるはずもなく、クオリティが低いものを制作し続けている自分に嫌気がさしてしまい「卒業制作展に出したくない」とも思っていました。

そんな気持ちで搬入の日を迎え、「中止」を言い渡されました。

中止を知った時の「最後まで完成度を上げて3年間の大集結にするぞ」と頑張っていた人たちと、「クオリティの低い自分の作品を展示したくない」と思ってた私の卒業制作展中止に対する想いの温度差は想像に難くないと思います。

そんな時、ツイッターで #桑沢2020 というダグが作られました。

#桑沢2020 は次第に熱を帯びていき、桑沢を知らない人やデザインにあまり興味がない人のところまでも拡散されていきました。

このタグは、私の作品を投稿するのにぴったりでした。

卒業制作展には卒業生や有名なデザイナー、美大生芸大生、ほかのデザイン系専門学生など、「デザインに詳しい人」が多く来場し、卒業制作展で就職先が決まる人もいます。

コンセプトからもののディテール、作り込みの丁寧さまで、プロのデザイナーやデザイン系学生の目に晒されるわけです。

ただツイッターは140字の文章と画像4枚のみの投稿です。ツイッターのような制限されたフォームで表現できるのはコンセプトと作品の雰囲気のみ。

コンセプトや自分のアイデアには自信がありました。

デザインが苦手で作る技術も低い私にとって、アイデア出しは唯一の強みです。なんなら「ちょっとひねった発想」と「市場リサーチからのコンセプト立案」だけで3年間桑沢を生き抜いてきました。

つまり、コンセプトと作品の雰囲気のみを伝え、SNSでは伝わらないディテールなどがごまかせるツイッターは、私の作品にとって卒業制作展で展示されるよりも高い評価が受けられる場所だったのです。

これがTwitterに私の作品を投稿した理由です。


ツイートの構成について

デザイナーらしく、少しだけですが「作品をどのように見せるか」を考えてツイートの構成を考えたので書かせてください。

クオリティの低い私の作品ですが、もちろん写真に写してもクオリティが低いことには変わりありません。そもそも展示も完成していなかったのでまともな写真もありません。

この時点で「作品をよりよく見せることができない」写真を載せることは極力減らそうと考えました。

ただ、ツイートに画像がないと作品の雰囲気を伝えることはできません。

1枚は必ず作品の写真を入れなければ伝わらないと思い、私の5sで撮った画質がめちゃくちゃ悪い写真の中からましなものを一枚、Twitter用のサイズにトリミングしました。

画像が一枚だと寂しいので、本来展示パネルで使う予定だったデータをTwitterに合うように横長で作り直した画像と、ツイートの文字数に制限がありコンセプトを伝えきれないと思ったので、新しくコンセプトの元になった背景を伝えるための画像をTwitter用に作りました。

また、ツイートの文章も、コンセプト→アイデアの元→最終的なデザインの説明という普段のプレゼンテーションと同じ流れにしました。

画像の順番も同様です。


商品化が難しい理由

今回のツイートでたくさんの方から商品化して欲しいとの声がありました。

ただ、今回展示するはずだったものは、あくまでもコンセプトモデルであり、商品化できるデザインかまだ自分でもわかりません。

また、靴は履き心地が悪かったり作りが良くないと、健康被害を及ぼすことがあります。私は靴職人でなければシューズメーカーに勤めている者でもありません。

商品化できるデザインとわかり資金がある程度調達することができても、実際にクオリティの高いものをお届けすることは難しいです。

どこかのメーカーと共同開発しない限り現実的には不可能に近いです。

今回多くの方に私のアイデアを見ていただくことができて、自分の発想に自信を持つことができました。

このような靴がいつかどこかのメーカーから発売されることを私も楽しみにしています。


ツイートしてる桑沢生は一握りどころかひとつまみ

#桑沢2020 というタグによって「やっぱり桑沢レベル高い!」「さすが!」というツイートを多く見かけました。

同感です。みんな凄すぎ。

ただTwitterに投稿してる人は今年度桑沢卒業生のほんの一部の人です。

本来開催されていたはずの卒業制作展にきていただいていれば、Twitterで見たときの何百倍もの感動を味わえたことだと思います。

実物を見なきゃ伝わらないような作品、たくさんの説明が必要な作品、来場者が体験して初めて完成する作品、Twitterでは伝えられないような作品がたくさんあります。

また、来年度の桑沢卒業制作展の来場者数を増やすために、作品をTwitterにあげてるわけでもありません。今年の卒業制作展のために作られた作品は、来年度の卒業制作展には展示されません。

SNSという場に作品を投稿するリスクにおいても重々承知しています。

展示の機会がいきなりなくなり、SNSにしか発表する場がないから#桑沢2020で投稿しているのです。

#桑沢2020 のタグで、来場者以上の多くの人に見てもらってよかった!展示は無くなったけどこれで満足!なんて誰も思っていません。

まだ展示を諦めていない生徒がほとんどです。

私たちが卒業制作展に向けて作った作品たちが、今後どのような形で公開されたり展示されるようになるのかは未定です。今、教職員の方々が会議を重ね、私たち卒業生のために色々と検討してくださっています。

今年度の桑沢卒業制作展示会は中止になりましたが、別の展示の機会が設けられる可能性もあります。

今回のTwitterでの#桑沢2020 の盛り上がりが収まっていっても、少しでも作品に興味を持った方、卒業制作展を初めて知った方などは、今後の桑沢公式からの正式な発表を待っていただければと思います。



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