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怪談市場 水の章

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2000字前後の短い怪談を取り揃えております。すべて投げ銭なのでお気軽にお読みください。いずれ百物語にする計画です。
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2015年2月の記事一覧

怪談市場 第四十話

怪談市場 第四十話

『蟹』

シゲユキ君(仮名)は子供の頃、珍しいカニを捕まえたことがある。

小学4年生の夏休み、父親と弟の3人で水族館に行った。母親は生まれたばかりの妹の世話で家に残り、同行していなかった。それでも久しぶりの遠出に兄弟は大喜びだった。

午前中いっぱい水族館を見て回り、遅い昼食に母親が持たせてくれたおむすびを食べると、午後のひと時を磯遊びに興じた。お盆も過ぎて、海水浴をするには土用波やクラゲが心配

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怪談市場 第三十九話

怪談市場 第三十九話

『雪の足跡』

清水君(仮名)から、次のような話を聞いた。

それは高校2年の冬、日曜日の午前中だった。前の晩は夜更かしをしたため、いつもより遅く起きた清水君は、居間の炬燵で向かい合う両親を目にして不安を覚えた。なにかよくないことでもあったのか、声をひそめ、妙に深刻な顔で話し込んでいる。

「なんか、あったの?」

清水君が問いかけると、母親が内緒話を耳打ちするように答えた。

「どうやら親戚に不

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