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データアナリティクスや機械学習の組織をどう育てるか?

昨今のAI・機械学習ブームもあり、データ分析やAIのCoE組織を作る、作りたい、という取り組みは多くのところで散見される。
一方で、
「データサイエンティストを雇ったのだが、データサイエンティストにやらせる仕事がない」
といったあまり好ましいとは言えない状況に陥っている事例も見聞きする。

自分がコンサルタントおよび事業会社におけるデータ関連組織の責任者として分析組織の立ち上げやデータ活用プロジェクトに関与した経験から、分析組織の作り方に関してのTipsを2つ紹介したいと思う。

Tips1:データ活用の目的と戦略を明確にし、遂行できる専門家にリードさせる

何を当たり前のことを、と思うかもしれない。
しかし、規模の大きな会社ではデータに関連する部署の所掌範囲が分かれていたり、諸般の事情でAIやデータ活用をしたいという手段先行の検討が行われることも散見される。

結果、とりあえず分析の基盤を作ってみる、単発的なPoCを繰り返す、といったことが横行し、「結局、これはなんのためにやっているのか・・・?」という状況に陥りがちである。

つまり、何のためにデータを活用し、どうその道のりを歩んでいくのか?というところが曖昧なまま取り組みがなされている。

これは何も大企業に限った話ではない。スタートアップ・ベンチャーなどの組織においても起きうる。

当初は分析組織をリードする専門家がいたものの、その人材が何らかの理由で退職した結果、所掌できる専門家が不在となり結果として上記のような状態に陥ってしまうこともある。

このようなパターンに陥ると分析組織を会社に根付かせることはかなり苦しい戦いになる。

そうならないように、データ活用の目的や戦略、その実行のロードマップなどを描きつつ、実成果が出るまでやり抜けるような人材に組織をリードしてもらうことが望ましい。もちろん経営層など事業を牽引するリーダーシップのバックアップや理解も重要である。
(このような取り組みは短期的に成果が出ることは多くない。地道な取り組みが必要であるため、一定期間粘り強く挑戦できる環境を整備することも重要であり、そのためには経営層の理解は不可欠である。)

Tips2:ゲリラ戦法:オアシスを作り先導者となりなさ

とはいえ、
「データ活用の目的や戦略、その実行のロードマップなどを描きつつ、実成果が出るまでやり抜くことを経営レベルで意思決定し、推進できる状況」ではないことの方が多いように見える。

そんな環境が作れるなら苦労しないわ!という声が聞こえてきそうである。

「データ活用の目的や戦略、その実行のロードマップなどを描きつつ、実成果が出るまでやり抜く」ような環境を作れない場合、どうすればよいのか?

「理想としてはデータ活用の目的と戦略を明確にし、遂行できる専門家にリードさせるべきである」という前提で別解を書いてみたい。

結論から言えば、とにかく役員受けのいいデータ活用成功事例をなんとかして捻り出し、社内で市民権を得ることである。

とにかく組織を動かすために一つでいいので成果が出た事例を作り出し、それを喧伝する。

そして、予算と権限、そして影響力を獲得する。

オアシスを作って先導するのである。

そして、正攻法のやり方を遂行していくのが良いだろうと思う。

ただし、これはあくまでゲリラ的な戦法である。
結局何らかの成功事例が作れたとしてもその後に組織をリードできる人材や中長期のロードマップが不在な場合、分析組織もデータ活用も続かなくなってしまう可能性が高い点は注意が必要である。

Tips2の補足:どうやって成功事例を作るか?

では、どうやって成功事例を生むためのパイロットプロジェクトを作るか?

抽象化すると以下の図のようみ、投下コスト(Effort)が少なく、効果(Benefit)が大きい領域をやる、ということになる。
なので、データ分析・データサイエンスあるいは機械学習によって解決できうる課題をリストアップして以下のような図にプロットしていく、というのが大まかなプロセスの典型例であろう。

★の位置あるパイロットをプロジェクトを作りたいところだが・・・

しかしながら、現実問題としてこのような「投下コストが低く期待される効果が大きい領域」にプロットできるような施策案(所謂Low Hanging Fruit)がない、ということは往々にしてある。
一見、Low Hanging Fruitのように見えるが、実際に成果を創出するためには越えなければならない実行上のハードルがデータ分析や機械学習モデル構築そのものの外にもたくさんある、ということも決して珍しいことではない。

一つのヒントになりうるのは、すでにルールベースで動いている業務や施策をより高度なデータ関連技術で置き換える、というアプローチである。

このような業務や施策は、効果や実行の見通しが比較的立ちやすく比較的成功例を生み出しやすい可能性がある。(あくまで比較的・・・であるが。)


あえて、データアナリティクス組織や機械学習の組織というフワッとした書き方をしてしまったが、そもそもとして自社の事業戦略に応じて、データ戦略と目指すべき組織のあり方をより解像度高く描くべきだろうと思う。

  • データアナリストに近いデータサイエンティストを中心とした組織

  • 事業の課題を機械学習などで解く・自動化する組織

  • 自社のサービスの一部としての機械学習モデルなどを作る組織

  • あるいはこれら全てを統括する組織

など、データ関連の組織といっても様々であり企業規模やフェーズ、ビジネスモデルなどによっても守備範囲が広くなったり細分化されたりなど組織がやることは変わってくる点は注意が必要である。

よって、ゲリラ戦法で成功事例を作る場合でも、「将来ビジョンとしてはこういう組織になるべきだろう」ということから逆算してパイロットプロジェクトの中身を決めた方が良いだろう。


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