腰椎椎間板ヘルニア、無意識的「意味づけ」も関係
30代男性、腰痛と右足の痺れを訴えて来院。今回の腰痛は1ヶ月前から始まったが、腰痛は年に6〜10回ほど慢性的にあるという。仕事や家事、日頃行なっている運動に支障が生じている。特に起床時に症状が悪化する傾向がある。今回の腰痛で整形外科、整体、アクティベータ療法など複数の治療を受けたとのこと。レントゲン診断では異常がないと言われたらしい。
初回の検査では右側の腰部、大腿部周辺の筋肉系、骨系、軟骨系に生体反応検査による誤作動の陽性反応が示される。2回目、3回目と継続して治療していくとL5-L4間の左側椎間版への圧迫刺激で誤作動反応が繰り返されるのが見えてきた。検査と治療経過から主に椎間板由来の疼痛があることが推測できた。毎晩、痛み止めを飲んで就寝していたが、昨晩は痛み止めを飲まずに眠れたとのこと。
まだ、レントゲン診断しか受けていなかったので、MRIでの診断を受けた方がいいのか相談された。手術の選択肢はないとのことだが、どのような状態になっているのか一度検査をしてみたいとのことだったので、それを止める理由はなかった。しかしながら、今までの経過から推測すると、恐らく椎間板ヘルニアの可能性は大きいが、それが直接的な痛みの原因というよりも、ヘルニアを生じさせるバランスの問題なので、そのことを知っておいてくださいと伝えた。
4回目の施術では、椎間板などの誤作動反応はほとんど消失していたが、痛みを訴えていたので、検査をしたところ意味記憶やエピソード記憶の反応が示されていた。かなり痛みが強かった様で痛み止めは欠かせなかった様子。スマートな方で理論的に考えるタイプ、記憶力もよく、大会社のリーダーを勤めているのも納得できる。それが故に、医学的なネガティブな情報も意味付けして、痛みの神経回路を強化してしまうようだ。
薬を飲んでいないから痛い・・・ブロック注射を打たなければ治らない・・・最終段階はこれしかない・・・など。当院での治療を受けつつも実際にブロック注射の予約をされていた様だ。最初の状態からすると、かなり症状が改善されているので、それでもブロック注射はされるのですか?と質問すると・・・何か気づかれた様子で、キャンセルされたとのこと。もしも、そのままブロック注射をする計画に沿っていくと、注射をするまで痛みが治らないという無意識的な前提、すなわちノーシーボ的な暗示効果による意味づけが生じてしまう。
「え〜そんなことが起きるの?」と思うかもしれないが、脳の無意識的な意味づけはとても影響が強い。慢性症状の多くが、抹消からの誤作動記憶と中枢(脳)で創られる意味記憶やエピソード記憶による誤作動の影響が深く関わることが多い。ヒトそれぞれに意味付けの内容は異なるが、患者との信頼関係、分かりやすい説明を踏まえて、段階的に意味付けの説明の機会を待つことが必要になる。そして、その意味づけを調整することで、早期に回復し、また、ぶり返しにくい体質へと変化していく。
ちなみに患者さんが持参してくれた病院で検査したMRIの画像では明らかに腰椎椎間板ヘルニアが三箇所ほどあった。ヘルニア部分の椎間板の軟骨の色が全体に黒く、明らかに水分量が減少し弾力性が失われているのが分かる。多くの患者さんは椎間板ヘルニアのMRI写真を見るとネガティブな意味づけによる影響を受け易く、治癒力の妨げになりかねないが、前もってそのことを説明していたので、想定内の情報として受け止められている様子で、その後のMRI写真による意味づけの影響はなかった。
6回目の施術では腰部や坐骨神経痛の症状はほとんど改善していた。前脛骨筋、足の親指の違和感の症状を訴えられていたのでその部位を調節。9回目の治療を終えてとても改善されたことを大変喜んでいただいた。その後、長いバケーションを取るとのこと。今度、来院して下さることを楽しみにしている。