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肯定的意図と目的論 (閉ざされていた心の扉を開く勇気)

次回の中級2セミナーでは、大脳皮質系レベルの誤作動に焦点を当て、「意味記憶」や「エピソード記憶」の調整法を学習します。これらは、慢性症状に繋がる奥深い内容に関わる「誤作動記憶」です。

先日、ある通院患者さんの睡眠障害に対するアプローチを行った際、「意味記憶」の反応が示されました。さらに、意味記憶の検査チャートに沿って進めていくと、「肯定的な意図」から「被害者、犠牲者であるという承認」という誤作動反応に繋がっていることが分かりました。この反応は、幼少期の育った環境に対して、娘として被害者的な感情を抱いていることに関連していました。

通院の過程で、「育った環境」が原因とされる誤作動反応が何度か繰り返されていました。私はその繰り返されるパターンに紐付けされた誤作動記憶を深掘りしたほうが効果を引き出されると感じ、次のような「チャレンジングな質問」を投げかけてみました。

術者:「『育った環境』の影響が誤作動反応として何度か示されていましたが、繰り返される場合、心理的に深いところを探索した方がいいと思いますが、どうでしょうか?」

患者:「そうですね…」

術者:「もしも、自分の心の奥で育った環境のせいにする目的があるとしたら、それは何だと思いますか?」

患者:「……」

術者:「この質問は、心理的に深いものですので、答えるのは難しいかもしれませんが…」

患者:「何か、ある種の免罪符のようにしている感じがします…」

術者:「分かりやすく言うと…」

患者:「自分が被害者だと思うことで、何かを失敗したとしても、自分のせいではないと感じられるような…」

術者:「深いところからの答えが出てきましたね。無意識のうちに、そのような目的があって、自分を被害者の立場に置くことで責任を回避している、ということですね。」

患者:「そうです。」

アドラー心理学では「目的論」の重要性が強調されています。PCRTにおける意味記憶の「肯定的な意図」は、この「目的論」に通じるものがあります。さまざまな経験や体験をネガティブに解釈する背景には、その目的があるという視点を持つことで、「他責」ではなく「自責」へのパラダイムシフトが生じやすくなります。自分の解釈次第でトラウマを変えることができると気付くことで、過去のトラウマから解放されることも少なくありません。

このような深いレベルの思考パターンに気づく患者さんをサポートしていると、患者さんが、閉ざされていた心の扉を開く勇気に感動します。また、単に症状が改善するだけでなく、慢性症状を引き起こす心身相関のプログラムが解明されたという発見に繋がり、治療の奥深さや醍醐味を味わうことができます。

今回紹介した症例は一例に過ぎませんが、PCRTの熟練度が上がるにつれ、治療の質が高まり、「なぜ治るのか、なぜ治らないのか」がますます明らかになってくるでしょう。

それでは、PCRT中級2のセミナーで、皆様と共に深みのある学習をしていきたいと思います。




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