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NUM-AMI-VACCINE(7) 切り取る、かぎ取る、すり寄る、そこにいる


▼前回記事


↓今日はだいたいこのあたりを書きます。


ヤンデル「水野さんは……取材相手の気持ちに入り込むタイプですよね。メディア側だからと言って、取材対象(例:医療者など)を『使う』というイメージからは遠い感じがする。」

水野さん「はい……」

ヤンデル「医療の専門家たち……情報の一部を切り取られたくない我々にとって、水野さんの情報の扱い方ってのはとっても丁寧に思えるんですよ。」

水野さん「そうですね……私は取材相手を専門家だとか患者だというように分けて取材することはなくて……」

ヤンデル「おお」

水野さん「もちろん、取材の前にすべき準備は違うんですけれど、私は、一時間くらい話していると本当に相手のことが好きになっちゃうんですよね

ヤンデル「あーーーあなたそういう方ですよね」


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(我先に取材を受けたがるぬいぐるみたち)

水野さん「話してると、なんかこの人すごい素敵だな、これを世の中に伝えたらもっと素敵なことが起こるはず、だからもっといろんな人、聴いて聴いて聴いて……って気持ちになるので、なんか、こう、気持ちよく話してもらいたいと思って取材はしてます。」

ヤンデル「おおおお」

水野さん「このやり方、うーん……(取材における)『効率』は悪いんですよね、でも、たとえば1時間お話しして、後日、追加の質問をするときとか、すごくやりとりがスムーズに行くんです。意図がずれない質問をできるというか。」

ヤンデル「メディアの側が、水野さんみたいな当事者感を出していただけると、取材を受ける医療者としてはしゃべりやすいでしょうねえ……そういうやりやすさはあるある。すごいある」



ヤンデル「でもその一方で、水野さんのような(相手にほれ込んでじっくりナラティブを掘り進めていく)やり方では、マスには伝わりきらない、ということもあると思うんですよ。もっと手っ取り早くバチンと伝えたいメディアもあると思いますし、あっていいと思います。言葉を切り取らなければやっていけないメディアというのもやはりあると思う。そういうメディアに対して、ぼくら専門家はどうふるまっていけばいいんですかね?」

市川さん「おお……難しい。」

ヤンデル「たとえば、大塚先生どう? 大塚先生だったら、そういう、”切り取らざるを得ないメディア” にはどうやって話するの?」

オツカ「ぼくそういう、切り取りそうなメディアの取材には答えない。」

水野さん「えっ、どうやってかぎ分けるんですか?」

オツカ「見分け方……難しいけど……知り合いが増えてくると、この番組は危ないとか、いろいろ、教えてくれません?」

ヤンデル「くれるの? やばそうな話題だな(笑)。よし、ほむほむ先生はどうですか」

ほむ「ぼくは、もともと週刊誌さんとかテレビさんのお仕事はあまりお引き受けしてないんですよね。多くの人の注目に耐えらえるタイプじゃないし」

ヤンデル「えええ笑」

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(一斉に注目するぬいぐるみたち)


ほむ「Yahoo!の記事に載ったりすると、患者さんから載ってましたねって言われちゃうし……ぼくの最終目標は目の前の患者さんがよくなることなので、ぼく自身が注目されることは目標ではないし。」


ヤンデル(あ……これは市川さんのさっきの質問に対するお答えになっているんだな……。)

市川さん「ところで……ちょっとおうかがいしたいことがあるんですけれどね。たとえば今ここにいて、発信をがんばってらっしゃる皆さんって、ほぼボランティアで行っていますよね。」

水野さん「うん。うん。」

市川さん「そういう方々にとっての医療情報発信って……今後は、より本業っぽく、サスティナブルになっていくことを目標とされているんでしょうか。それとも、もっとメディアに医療情報のジャンルに入ってきてもらって、『俺らの仕事をなくしてくれよ』って思ってらっしゃるのか、どっちなんでしょうか。」

水野さん「確かに。どっちなんだろう。」

――NUM-AMI-VACCINE(6) すでにストーリーがあった より

ヤンデル(ありがとう、ほむほむ先生)


ほむ「医療情報を広げていくことを、職業にする専門家がこの先現れるかということについては……情報発信を本業にして、たとえば5年、10年経ったとき、その人はそれだけ医療から離れてしまった人になってしまうでしょうね。」

ヤンデル「なるほど」

ほむ「医療の現場にいて、目の前の患者さんが今困っていることがあって、それに対してその都度勉強するんですよ。ぼくらって。」

水野さん「うんうん。」

ほむ「今、目の前で困っている人にフィックスするために勉強をする。そうしないと、モチベーションなんて絶対保てない、とぼくは思います。」

ヤンデル「なるほど……。」

ほむ「そこで、需要が大きい、ニーズが大きい悩みを感じ取るためにも、目の前に患者さんがいないと……ぼくは無理です。だから、ぼくのような医療者は、医療情報を伝える職業に専従してしまうと、逆に医療について伝えることができなくなってしまう。」

市川さん(のけぞる)

ほむ「いや、できる人はいると思いますよ。いつまでも医療現場の、まさにシズル感的なものをずっと保っておられる方はきっといらっしゃる。でも、自分にはそれは無理です。」

ヤンデル「うん……」


(続く。次回最終回です。)