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NUM-AMI-VACCINE(6) すでにストーリーがあった


▼前回記事



↓今日はだいたいこのへんの話です。



水野さん「私は……私はその……今ずっと聞いてて、『そんなところまでお医者さんが考えなければいけないんだろうか』ってことをずっと感じてて……。」

市川さん「ああ、そうか。」

ヤンデル「おっ……」

水野さん「それぞれの医療者の方が、発信力を身につけて、SNSも用いてどんどん発信が上手になっていくのはすごくいいことだなと思いつつ……その……そんなスーパーマンみたいなことを医療者の方々に担わせていいのだろうか? ということを自問自答していたのですが……。担わせていいんですか、けいゆう先生?」

ヤンデル「おっまたパスが出た」



けいゆう「そうですよね……医療者にとっては難しいことだと思います、本来は……本来の仕事ではないですよね。

いや、もちろん、医療の専門家も情報発信はしますよ。

たとえば論文を書いたり学会発表したりとかね。専門家『内』で情報共有するために自分の情報を発信するってのは、”仕事のひとつ” です。」

ヤンデル「うんうん。」

けいゆう「でも……一般の方向けに、ってのはね。好きな人はなさいますけれどね。専門家みんながやらなければいけない仕事ではないですね。」

ヤンデル「そうだよねえ」

けいゆう「で、はからずも、ここでメニューの2番に行くんですけれど」

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ヤンデル「おっメニューあったね」(*)


(*司会の不手際で「今日のメニュー」の存在を完全に忘れていたことを深くお詫び申し上げます。)


けいゆう「専門家(医療者・研究者など)の側も、一般の方に伝わるようなコンテンツを作る、そのために自らがんばって努力をする。これはひとつ、ありです。」

水野さん「はい……」

けいゆう「もうひとつのやりかたは、専門家が、コンテンツ作りのプロフェッショナルに、自分の思いを上手に伝える。」

ヤンデル「おっ、外注?」

けいゆう「はい、そして、専門家が考えている以上に質の高いコンテンツを、プロに作っていただく。」

ヤンデル「ええええええそれ大変なんじゃないの???」

(ざわめくぬいぐるみたち)


けいゆう「でも……たとえばぼくは今まで、テレビにも新聞にもお世話になってるし、週刊誌とか、大衆的なメディアにもたくさん取材をしていただきましたけれど、慎重に慎重にやってきたことで、幸いここまでは、自分の意図がうまく伝わらなかったことはないですし、とてもうまくコンテンツを作ってくださっています。」

ヤンデル「そうか……けいゆう先生はそういうとこ上手にやってるもんね。医療者側はコンテンツを作ることに関して、メディアをうまく頼るべきだということかな。」

けいゆう「そうですね。」



ヤンデル「じゃあ、メディア側から見て、今の話はどうですか? たとえば……逆に、専門家たちにどういう風に頼ってほしい、とか。」


市川さん「うーん、メディア側からすると、ですね。ちょっと難しい話をしましょう。メディアの人の中には、先にもう伝えたいストーリーが決まっていて、そこにはめ込むように専門家の発言を選んでしまうタイプの人がいますね。」

ヤンデル「ああああああ」

市川さん「あるいは、自分たちのストーリーを都合よく語ってくれる、医師という肩書きの人さえ見つかれば誰でもいい、という選び方をしている人もいます。」

ヤンデル「やだああああ」

市川さん「でも、それが仕事だもん、みたいなね。お医者さんが30万人いればいろんな人がいるってのと同じように、メディアの人も何万人もいますから、その中にはやっぱりそういう人もいるんだよ、ってことですけれどね。ぼくとしては、本当に人の役に立つことをしたいんだけれど、どの専門家に相談したらいいかわからない、っていうメディアの人が増えたらいいなとは思っています。」

ほむ(うなずく)

市川さん「さっき水野さんがおっしゃっていたように、本来、医療情報をいかにうまく伝えるかなんて話はお医者さんがやるべきことじゃない。多彩なやり方で多彩に人に伝えることは、メディアが、発信を生業(なりわい)にしている者こそがやるべきでしょう。」

けいゆう(うなずく)



市川さん「ところで……ちょっとおうかがいしたいことがあるんですけれどね。たとえば今ここにいて、発信をがんばってらっしゃる皆さんって、ほぼボランティアで行っていますよね。」

水野さん「うん。うん。」

市川さん「そういう方々にとっての医療情報発信って……今後は、より本業っぽく、サスティナブルになっていくことを目標とされているんでしょうか。それとも、もっとメディアに医療情報のジャンルに入ってきてもらって、『俺らの仕事をなくしてくれよ』って思ってらっしゃるのか、どっちなんでしょうか。

水野さん「確かに。どっちなんだろう。」





動画を見直すとわかることなのだけれど。

このときのぼくは、ここから、話題をすり替える。

なぜか。

それは、市川さんの質問に対するぼく自身の答えが、このようなものだったからだ。



医療情報発信を、本業っぽくしたいか、って?

こんなめんどうくさいことを?

そんなわけないじゃん。




メディアに、
『ぼくたちの仕事をなくしてくれ』と
願ってはいないかって?

別に……そこまでは。

みんなで少しずつ苦労するしかないじゃん。



正直に言うと、ぼくは市川さんの質問を聞いたときに、ピンとこなかった。

それこそ、「先に伝えたいストーリーが決まっていた」のかもしれない。

ぼくは話題をぶった切って、てきとうに言葉をつないだあげく、ほかの話題に移ってしまう(次回記事の冒頭はそれです)。



しかし……。

市川さんの質問を、ぼくがはぐらかせている最中、この難しい問いについてずっと考えて、答えを用意して、待っていてくれた人がいた。



(続く。)

▼次回記事