森に於ける光と水の散文

 森は清閑だ。それぞれの木は正しい間隔で直立している。枝葉が空にモザイクを描く。そこから溢れ落ちた光が地面で弾ける。陽だまりの中でプリズムが乱反射する。太陽と森が生んだ光の湖だ。

 森には小川が流れている。心地良いせせらぎ。擬音で表現できないような水の音。一定のリズムを刻んでいるようで同じフレーズがひとつもない。自然が奏でるオーケストラ。譜面には起こせない。

 森には様々な生き物がいる。沈黙しない春。光の絨毯と水の音楽。草が木が森を創り、虫が鳥が森を環す。黴が菌が森をすすぎ、花が果実が森を飾る。

 森に夜の帳が下りる。 天鵞絨ビロードに金糸と銀糸で刺繍された宇宙のカーテン。光は月に反射して優しく森に降りそそぐ。生き物はみんな眠っている。せせらぎだけが響く森の中。

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