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謎と『飛翔』と感嘆を、君に ─シロナガス島への帰還、感想

大富豪の遺書の中に残された『シロナガス島』への招待状。
ニューヨークで探偵業を営む男『池田戦』は
特殊な能力を持つ少女『出雲崎ねね子』と共に島へと向かう。
そこで起きる数々の奇怪な殺人事件。
果たしてシロナガス島に隠された真実とは……?
すべての謎を解き、呪われた島から脱出せよ!

─TABINOMICHI「シロナガス島への帰還」

シロナガス島への帰還をクリアした。

きっかけはGWのPayPal500円クーポンの使い道に困ったある昼だった。

「500円のクーポンか・・・この手によくある『1000円以上お買い上げの支払いのみご利用出来ます!』なんてモンじゃなくて、単に500円分が支給されてるんだよな、太っ腹じゃん」

「ん・・・?『500円』・・・?」

「・・・」

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「・・・・・・」

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もう完全にPayPalとシロナガス島への帰還のタッグ策略だろこれ。

という訳で爆速でウィッシュリストにある「シロナガス島への帰還」を購入した。
IGN Japanに掲載されたインタビュー記事を既に読んでいたため、どんなノベルゲーかはう~っすらと予習済みだった。

改めてあらすじを述べると、
主人公である探偵池田戦、コミュ症で映像記憶を持つ少女出雲崎ねね子の2人は共に謎多きシロナガス島へ赴く。
名立たる大富豪が集まった絶海の孤島、その洋館で複雑怪奇な現象が次々と起こる中、2人は悲しくも呪われたシロナガス島の秘密を知ることになる・・・といった、限られた空間のクローズドサークル型ミステリーノベルゲーである。

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僕自身読書歴は人に話せるほどでもないが、昔東方Project繋がりで読んだ「そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー)」はとても面白いミステリーだったのはよく覚えている。
「クローズドサークルってああいうモノなのかな?」と記憶を引っ張り出したのが本作に興味を持ったもう一つのきっかけである。

しかし重要な懸念が一つだけある。
僕はホラゲーがかなり苦手だ。特にドット調などの解像度の低いホラー挿絵、ジャンプスケアがどうしても慣れない。

クローズドサークルで奇怪な殺人事件、極めつけに分岐アリ。これ絶対ホラーやべぇっしょ。選択肢次第でスプラッター描写マシマシのジャンプスケア出す気満々じゃねぇか。

元をたどれば「青鬼」や「魔女の家」でトラウマを植え付けられ、今となっては淡々と最速を目指すRTAでしかホラゲーは見れなくなっていた。

とはいえ、このゲームの主軸は「ホラーでプレイヤーを驚かせる」、ではないはずだ。
なればこそ、多少のホラー要素は我慢してこのゲームを遊んでみよう。

とまぁ、こんな事を考えて「シロナガス島への帰還」をプレイし始めた。




まぁ結局ホラー要素でめちゃくちゃヒィヒィ言う羽目になったけどな!!!!

以下、ネタバレ有り感想。グロ描写があるため注意。
未プレイの方はさっさとSteam行って500円払ってプレイするんだ!!






・池田とねね子の凸凹コンビ

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池田はハードボイルドを体現しており、臨機応変な判断でピンチを何度も救う。長年修羅場を潜ってきただけあって、経験をベースにした立ち回りが非常に狡猾で爽快だ。本作ストーリーの心地いいテンポはこの男に支えられているといっても過言ではない。また、合間に挟むアメリカンなジョークもテンポに一味加えている。

ねね子は映像記憶能力があり、本作のTIPS枠を担う膨大な知識の持ち主・・・とまではいいのだか、極度のコミュ障でまともに話が出来ず、池田には例外的にめちゃくちゃイキる性格の持ち主でもある。アレだよアレ、ポンコツヒロイン。

本当に対極的な2人だが、窮地に立たされた時の連携はピカイチである。シロナガス島の真実に近づくにつれ、主人公たちに何度も迫る危機をあの手この手で掻い潜る様はやはり見ていて面白い。

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・主人公に負けないキャラクター達

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殺人犯であるジゼルの仕掛けたトリックは幼少期に味わったシロナガス島の実態から丸々引用していたのが、ジゼルの復讐心のスケールの大きさを暗示していてとても面白かった。ジゼルの冷静沈着な従者という当初のイメージを生かしたギャップもあって、中々強烈なものだった。

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リールもまた、プレイする前と後で印象がかなり変わった一人だ。
本性は普段の言動からかけ離れたニヒリストで、酒を飲んで汚れ仕事をこなすエージェント。池田に検視の情報や爆弾解除の指示をしてくれる、ねね子に次ぐ助手となる存在だ。
こういう泥臭いエージェントってかっこいいと思う。「生きるためなら死地にも行く」という信念で行動してるからこそ、人間味が出るのがとても良い。




・絶えない緊張感とシロナガス島の謎

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「序盤は動きが少なく退屈だが、中盤でエンジンに火が付き、終盤から大どんでん返し」というストーリー構成を持つ作品は珍しくない。だが、本作は序盤からエンジンが温まっている。殺人ミステリーは序盤で既に人が死ぬため、ストーリーに刺激があるという特性があるためなのかもしれないが、それを加味しても本作の展開は中々早い。

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ストーリーの柱は「殺人事件の真相」「シロナガス島の秘密」、そして「青リボンの少女、アウロラ」だ。1つの事件が起きるごとにおよそ2-3点は新情報が解禁されていくため、本当にやめどきが見つけられない。これら3つの謎が徐々に交わり、解けていく楽しさは筆舌に尽くしがたいものだった。

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文献を利用した殺人トリックは前述した「そして誰もいなくなった」にもあった手法なので、「もしかしたらこれ以外にもオマージュあるんじゃね?」とWIkipediaであらすじを読み直したりした。こういう記憶に引っかかるキーワードをその場で速攻検索できると、あの本読んでいて良かったなぁとしみじみ感じた。




・やっぱりあったホラー展開

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ハンドル型のドア、切り離された客室、絶海の孤島・・・まぁ疑わない方がおかしいと言わんばかりのキーワードの揃った舞台だなと思えば、臓器売買、違法買春、生物兵器と並々ならぬパワーワードがポンポン出て「オイオイオイ死ぬわオレ」とホラー要素で死ぬ未来がありありと見えた。

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ねね子と生物兵器とのかくれんぼシーンは初手ロッカーを選んでしまったため、無事「コンニチワ」されて心臓ぶっ飛んだかと思った。というか飛んだ。

心のヘルスはゴリゴリ削れましたがたのしかったです(棒)





・「飛翔」

ここを書くためだけにこの記事を書いたといっても過言ではない。

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この後に流れるBGM「飛翔」が流れた時、「うわマジかよ!?」と大声を上げてしまった。

フリー音源サイトのH/MIX GALLERYにて配信されている、壮大で緊迫感のある戦闘をイメージしたシネマティック調のBGMである。

フリー音楽素材は主に個人製作ゲーム、実況動画によく使われる。前者では「ひぐらしのなく頃に」が一番有名な例だろう。
元々フリー音楽素材を鑑賞目的で沢山聴いており、H/MIX GALLERYの他にもMusMus、煉獄庭園、魔王魂などからよくDLしていた。フリー音楽素材サイト管理人が集まって作ったCD「音屋FES【祭-Matsuri-】」も買ったし、僕にとってこれらのBGMはどのアーティストよりも聴き馴染みのあるものだ。

話を戻す。何故飛翔が流れただけで感嘆したのか。


そりゃ知ってる曲流れたらテンション上がるに決まってる。

バンドライブでトリにデビュー曲を披露するのと同じようなものである。しかも「ここからが本当のシロナガス島への帰還だ」と言わんばかりの勢いでクライマックスへと向かっていく訳だから、盛り上がらない道理がない。

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池田の目にアウロラとジゼルが映った時、BGMも夢現な曲調に移るようタイミング調節されていたのも凄かった。

本当にただ、完璧だった。




・その他、記憶に残ったワンシーンなど

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爆弾解除の最後の問いにアウロラを聞くのは反則だろ・・・
「えっアウロラ!?・・・アウロラ?嘘だろまさか青リボン!?」って反射的に青切ったなぁ・・・

こういう所でプレイヤーに直感的に指示する仕組みは大好き。CoD4MWのラストでプライス大尉からM1911を受け取ったら、本能で「コイツでザカエフを撃つ」のを理解しちゃうもんな・・・それと同じ感覚だった。


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池田とリールに託され、通信機を抱えて走るねね子のシーン。

レイモンド卿の部屋に行って消息不明となった池田を救うべく単独行動した時や、ジゼルの記憶に飛び込む時もそうだったけど、いつも怯えてばかりだったねね子が勇気をもって行動するのが本当に良かった。

このシーンが大好きだからこそサムネの背景に選んだしな。ここだけでもいいからアニメーション化してくんねえかな・・・


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どうしてシャワーシーン2回も出すのかなぁ!!!!やっててビックリしたわ!!!!!!

実はアレックスが女性というのは驚いたけど、エピローグの女性らしい恰好より本編の男装の方がスタイリッシュで好きだったりする。しかしアウロラの心臓が移植された過去というのは中々胸にくるものがあるなぁ。アレックス胸ないけど。


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強気なアキラが毒蛇に咬まれてすぐ死を悟ったのは最早笑うしかなかった。終盤でジゼルに捨てられ独りぼっちになった時は精神崩壊しかけてたけど、ねね子の世話(強引)をしたり捜査の協力をしたりと独特の立場で個性を出している良いキャラだった。






あ、そうだ。一つ言い忘れてた事がある。






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ルパンvs複製人間じゃねーか!!!!!

昔金ローで見たわコレ!!クッソ懐かしいんだけど!!
つい最近までこのシーンを「くたばれノストラダムス」と勘違いしてたけどな!!!!!!


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