部屋と煙草と僕〜JK vs 僕〜

 僕の部屋は賃貸なので、家で吸う時はベランダでタバコを吸っています。今日はそんなある日の出来事を。

 僕の部屋がある2階建てアパートの道路を挟んだ向こうには4階建ての女子校があります。

 女子校の校舎の廊下に面している窓と僕のベランダが向かい合わせになる形の構造で、休み時間にJKたちが教室を出てぞろぞろと廊下に出てくるのが見えてしまう距離の近さです。

 皆さんは女子校って聞くとお嬢様とか清楚とかをイメージするかと思いますが、向かいの女子校はめっちゃ元気です。

 土曜日に仕事休みでゆっくり家で寝ようとしても、女子校の休み時間にすごいデカい笑い声が聞こえてきたり、賑やかすぎる声が響いてくるので、どうしてもゆっくり静かに寝ることもできず起きてしまいます。元気なことは悪いことじゃないと思うので、全然イヤな気持ちにはなりませんので、JKたちに怒っているわけではありませんよ。

 つい最近、僕は諸事情があって平日に2時間のお休みをいただいてから出社した日がありました。

 煙草を吸いたくなって窓を開けてタバコに火をつけたら、校舎からチャイムの音がしました。そう、1時間目の授業終わりのチャイムです。今思えば、これが僕とJKの試合開始のゴングだった気がします。

 僕は、JKたちを見てしまうと社会から追放されてしまうのではないかといつもビクビクしておりますので、JKたちが見える距離だからこそ、タバコを吸う時は、常に下を向くか校舎の前にある駐車場に視点を合わせるかをしていました。過去に1回だけ色々とありましたけど、それはまた別の記事で書きます。

 その日も同じように駐車場に停めてある車を見ながらタバコを吸っていました。しかし、授業終わりのチャイムが鳴り止んだ時に声が聞こえてきました。

「おーーーい。」

 僕は、JKたちが友達を大声で呼んでいるんだろうなあと思って特に気にもせずにタバコを吸っていました。しばらくすると、何回か同じ声で「おーーーい。」と誰かを呼んでいました。僕は、別の階とか校舎の外にいる友達に声を掛けているんだろうかと思いながらも特に気にならずにいつも通りタバコを吸っていました。すると、

「聞こえてますかーーーー?」

先ほどよりも少し大きい声でJKが誰かを呼んでいました。

 僕は、「ひょっとして”誰か”=”僕”なのではないか?」とタバコを吸いながら考え始めてしまいました。

 そして、お隣さんのベランダにも人はいないし周りを見渡しても校舎から見える範囲にいる人間は僕だけだというのを確認しました。これはやはり僕のことを呼んでいるのか?と疑問は膨らんでいくばかりでした。そうこうしている内にタバコを吸い終えてしまい、いつも通り2本目のタバコに火をつけて吸い始めました。すると今度は今までとは違って痺れをきらしたような声で

「ねーーーーえ。」

 という声がしました。僕は思わず反射的に声のする方を向いてしまいました。今思えばあのJKは策士でした。きっと現代の諸葛孔明か司馬懿仲達でしょう。そう、僕はついつい声のする方を見てしまったのです。見た先には廊下の窓を全開にしてこっちを見ているJKがいました。

「わー!こっち見てるーー!」

 ...やられました、そんな大声で言われたら俺がJKを覗き見たと誤解されるでしょうよ、どうして無邪気に大声で「こっち見てるー」とか言っちゃうのですか貴女は!そっちが何回も声掛けてきたから、ついつい気になっちゃって見てしまっただけなのに。学校の先生とか僕の部屋の大家さんに聞かれていたら、僕はこの部屋から退去命令を出されるところでしたよ。

 そして、無情にも僕がJKを見たことが大声で拡散された直後に、2時間目の授業開始のチャイムという名の試合終了のゴングが鳴りました。僕も恥ずかしさのあまり早く家を出ようと思って、過去の自分史上最速のスピードで着替えやら身支度やらを済ませて出社しました。

 あと数分。いや、あと数十秒。ぐっと堪えていれば今回は勝てたはずだったのに、そう思えば思うほど自分の未熟さに情けなくなる敗戦でした。

 いつかまた戦う日がきた時は、絶対に振り向かない強い意思を持って雪辱を晴らしたい!でも、次は逆に会釈くらいしたほうがいいのではないだろうか?と色々な想定をしながら、リベンジマッチを熱く望んでおります。

 もしもこの記事を見た隣の校舎のあのJKよ。平日の午前中だったこともあって寝間着に寝癖ボサボサの髪だったけれど、次回の勝負の時はもう少しバシッと服装もキメて勝負させていただく。どんなに声掛けられても次は聞こえないフリで終始一貫しますから。あと、僕はニートとかではないんで、もしも誤解していたら訂正しておいてくださいね。

絶対に負けられない戦いが、そこにはある。

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