スマホを拾った

　昨日、駐車場に車を停めて自宅に帰ろうとしたら後輪近くの道にスマホが落ちていたんです。こういう落し物を拾う事は多々あって大体は警察に届けて終わるパターンが多いです。自分の中でのマナーとしてロック画面しか見ないと決めていて、今回も自分が気づかないうちに車で轢いたかもしれないと思い手帳型のカバーをそっと開いてみました。

　そこには画面いっぱいに来ていた通知の数々と画面右上の隅に愛娘であろう女の子の満面の笑みが映っていました。画面やカバーにキズが無さそうだったので、”警察まで距離あるけれど持ち主も困るだろうし行くかあー”と決めて歩き始めました。

　すると、いきなりそのスマホが鳴りました。ビックリしてスマホを落としそうになったのですが、画面を見てみると持ち主の人であろう男性の名前からの着信でした。

　電話に出てすぐにお相手の方にスマホをどこで拾ったかを説明すると、その方はすぐにこちらへ向かってくれると言ってくださりました。お相手の方の住まいが少し遠いところだったのでこちらから近くまで向かおうかと提案したのですが、お相手の方もきちんとした方で拾った場所の近くまで来てくださる事になりました。

　見ず知らずのスマホを持っている緊張は慣れないもので、お相手の方が来てくださるまでずっと緊張していました。悪い事はしていないのに、やはり何かドキドキとしてしまうものですね。

　スマホの持ち主であろう男性が到着して”すみませんー。”と声を掛けてきました。僕も相手の方が優しそうな方でホッとしつつスマホをお返ししました。車で轢いたかもしれないからとカバーや画面を確認してほしい旨を伝えると、何かあっても落とした自分のせいだから気にしないで大丈夫ですよと言ってくださり、そのまま二言三言を交わして別れました。

　ただそれだけの出来事なのですが、お相手の方がとても物腰柔らかくて丁寧な言葉遣いだったこと、スマホを返した時に感謝の言葉を述べてくれたこと、それだけで自分の心も何だか温かくなりました。

　誰かに親切にすると自分にも返ってくる。それを体感できた気がしました。もちろん、落とし主とすぐにコンタクトが取れない場合は警察に届けることがベターだとは思います。でも、こうやって直接きちんと本人に返すのも気持ちが良いことだと感じました。見ず知らずの人に親切にされたり気遣われたりすると感謝の言葉がパッと出ないことも多いかと思いますが、きちんと言葉で表すことって大事ですよね。きっとこういう事をみんながお互いにやっていけば明日は今日よりも平和になるかもしれません。

　その日の夜に飲んだお酒はいつもより少し美味しい気がしました。

　ピース！