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2024/3/27フィネスさん試飲セミナーその②午後(ジョルジュ・ルーミエ / ジャン・ルイ・シャヴ)

ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエ

クリストフさん

スピーカーは現当主クリストフ・ルーミエさん。
ドメーヌ紹介は大変あっさり。
地図を用いながら、1953年購入のクロ・ド・ラ・ビュシエールに始まり、ドメーヌ・クリストフ・ルーミエ名義のシャルム・シャンベルタンとリュショット・シャンベルタンも含め、さらっと所有畑を紹介。
早々に試飲ワインの紹介へ。

シャンボール・ミュジニー プルミエクリュ レ・クラ 2015

  • 二つの区画(1.6ha/0.15ha)を使用。土壌は泥灰土で水はけがとても良い。丘の上に位置しており風通しが良く、夜間も温度が保たれやすい。樹齢は平均50年

  • レ・クラは毎年とてもよく熟し、長熟に仕上がりやすいワイン。ミネラルが多く、口の中に塩気が残る。熟成するとアロマがこなれてふくよかさを発揮

  • 2015年は気候の良い年。深みのある仕上がりで、タンニンもこなれてなめらか。後味にフレッシュさがあり、アルコールもほどほどで、バランスの良い仕上がり

モレ・サン・ドニ プルミエクリュ クロ・ド・ラ・ビュシエール 2014

  • 周囲をしっかりとクロで囲まれた畑で、2.59ha。土壌は地滑りで上から落ちてきたもので、クロ・ド・タールやボンヌ・マールと同様の丘の上の要素がある。粘土質で鉄分が多い。鉄分の影響でワインには血のような感じや引きしまった感じがある

  • 現当主の祖父のジョルジュ・ルーミエ氏が畑を購入した時には状態が良くなかったが、何度も植栽を繰り返して回復させた。よって樹齢は40-45程度と若い

  • 2014年VTはしなやかでタンニンがこなれた仕上がり。今飲んでも既に飲み頃で、早飲みタイプ。ソフトな仕上がりながら、余韻には引き締まったタンニンが主張

ボンヌ・マール グランクリュ 2013

  • 土壌は泥灰土と石灰。表面は泥灰土、下が石灰。ボンヌ・マールの内側は母岩の土壌

  • 2つのコミューン(CMとMSD)の2つの区画に跨ってブレンドしているのが特徴。昔は2つのキュヴェに分けて醸造していたが、1988年から分けずにアッサンブラージュすることに決めた。アッサンブラージュにより両者の良いところを高めあえる

    • テール・ブランシュはミネラル分と緊張感、花のアロマが広がる

    • テール・ルージュは肉厚さを与え、果実味豊かでリッチ・豊潤、アルコール度数を上げる

  • 2013年は寒い年で、春に雨が多く開花が遅れミルランダージュを起こした。春から初夏にかけて多雨が続き、収穫は10/5。他の寒い年に比べると良い仕上がりで、10年経った今飲んでもまだ若いと感じる

ボンヌマール、色調には熟成感見て取れるものの、味わいは確かにまだまだ熟成ポテンシャルたっぷり

QAに突入も、なんと質問者は途中から後部座席で聴講されていたジャン・ニコラ・メオさん(おちゃめ!)
「難しいVTだった2013のボンヌ・マールがこんなにうまくできた秘訣は?」との質問に対し「もちろん全部は教えられないけど!」と前置きをしつつ応じるクリストフさん(こちらもおちゃめ!)

クリストフ氏「ミルランダージュが起きた年なので収穫時に気を付けてブドウを選別したことと、2つのテロワールがあることで成熟度を補完できていることが良かったのでは。逆に、どの点がそんなに良い出来だと思った?」
ジャン・ニコラ氏「新鮮さ、溌剌さ、全体のバランス。2013年は酸は控えめな年だったので、この新鮮さがどこから来ているのかが気になった」
クリストフ氏「その点は、やはり2つの区画のアッサンブラージュにより色々な味わいを欠ける事無く出せる点が大きい」
…とのやりとり。
また別の質問者からの「除梗するしない、その割合はどの段階で決めているのか」との問いには、収穫時にとれたブドウを見てから決めており、予め決めておくことは一切無いそう。傾向としては夏の気温が高かった時ほど、除梗を多くせず全房で使うとのこと。

ドメーヌ・ジャン・ルイ・シャヴ

ジャン・ルイさん

スピーカーは現当主ジャン・ルイ・シャヴさん。
地域について「ブルゴーニュより南だが、まだ『バターを使う地域』なのでローヌでは北部」というコメントから入り、ちょうどこの数日前に「バターとオリーブオイル地域分類マップ」を見たばかりだったのでタイムリーなどと思いながら拝聴。

さすがアッサンブラージュの魔術師「ローヌ北部はシラーのモノセパージュであり、テロワールの違いに集中してワイン作りができる」とのお言葉通り、この後各テロワールについて大変熱量の高い説明が続く。

紹介されていた畑はベサール、メアル、ペレア、ボーム、ロクール、メゾン・ブランシュ、エルミットなどで、写真を見せながら丹念に説明。
その後試飲ワインの解説に

ジャン・ルイ・シャヴ・セレクション サン・ジョセフ・オフリュス 2022

  • サンジョセフ・セレクションを立ち上げたのはシンプルで飲みやすいワインを作りたかったからで、ドメーヌのセカンドワインを作る目的ではなかった。ドメーヌはオートクチュール、セレクションはプレタポルテのイメージ。気軽に飲めるスタイルがいいと思った

  • セレクション立ち上げ当初、サンジョセフは捨てられたような畑で、再開発したい思いがあった

  • ローヌ渓谷の地形を生かしたサンジョセフ。南北で60kmの地域にわたり繋がっている。土壌は花崗岩が主流。かなりの急斜面で、とても日照条件が良い

  • (コンポートやジャムのプラムやブルーベリー、胡椒、ほんのりお肉感のある凝縮感の高いシラーで、前述の狙い通りシンプル&カジュアルに楽しめそうな親しみやすい味わいだった)

ドメーヌ・ジャン・ルイ・シャヴ エルミタージュ・ブラン 2021

  • ドメーヌで白の栽培面積は5ha程度。エルミタージュ・ブランの品種はマルサンヌ、ルーサンヌの2品種

  • 18c頃はエルミタージュは白が主流だった。赤がもてはやされるようになったのはイギリス市場の要求によるもの

  • エルミタージュの白はテクスチャーを楽しむ。現代的な溌剌重視の作りではない。オイリーなテクスチャー、苦味のある独特の味わい。バターやクリームを使ったこってりしたものに合わせるのがおすすめ。

    • ロクールの石灰により、オイリーで肉厚になる

    • メゾン・ブランシュやエルミットは新鮮さやアロマを与える

イケナイお薬顔負けの恍惚をもたらす罪な液体がこちら

個人的にこちらが今回最大の不意打ち感動ワイン。
凄まじい果実の熟度。こっくりツヤツヤの黄桃・アプリコットのコンポート、独特の藁のような香りなど複雑さも。どこまでも肉厚でオイリーで、享楽的というか背徳的というか、とにかく恍惚としてしまった。
すみません、マルサンヌ&ルーサンヌなめてました…とスライディング土下座せんばかりに反省。
すっかり魔術師のつくる超高級エルミタージュ・ブランに骨抜きになったところで、「エルミタージュ白を熟成させることをためらわないでほしい。10年も軽く行ける。テクスチャーがこなれて丸みも甘味も出て来てバランスが良くなる」との「熟成のススメ」のダメ押し。
「いつかお金持ちになったらこのエルミタージュ・ブラン買って大事に熟成させるんだぁ…」という野望に火をつけていただいた(←そんな日はいつ来るのか…熟成している間に本人がポックリ逝きそうw)

ドメーヌ・ジャン・ルイ・シャヴ エルミタージュ・ルージュ 2021

  • 各畑のもたらす要素について

    • ベサールの花崗岩からはストレートで鋭利な骨格、熟成するとセプタントリオナルの特徴が出る。熟成が進んでも果実がジャムのようにならない。血や墨汁、ヨード成分、金属質は花崗岩から来る

    • メアルは丸み、甘味、ジャムのような味わいを与える。メリディオナル的要素を出す。ボルドーで言うポムロール/メルロー的な位置づけ

    • ペレアは繊細で優しくエレガント。タンニンは控えめ

    • ボームはスパイシーで動物的なニュアンス

    • エルミットは区画特性により、何もしなくてもアッサンブラージュしたかのような感じが出る。タンニンはこなれて質が良い。標高が高いため新鮮さが出る

「『エルミタージュとは何か』と毎年考えているが、今はまだ絶対的な答えは見つけられていない。将来的には見つかるのかもしれないが…」との深いお言葉とともに閉会へ。

午後も錚々たるラインナップ!

午後の二時間もあっという間!
個人的には、大好きなブルゴーニュの(しかも素晴らしい生産者の)ラインナップはもちろんのこと、エルミタージュ・ブランの衝撃が忘れられない。

ワインの勉強をしていて一番喜びを感じるのは、産地・品種・作り手・キュヴェ等々で自分のコンフォートゾーン外で新たな発見ができた時なので、その意味でもとても印象深い試飲会となった。
このような機会をいただいたことに心から感謝。


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