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2024/3/27フィネスさん試飲セミナーその①午前(マルキ・ダンジェルヴィル / メオ・カミュゼ)

気づけばセミナーから2週間ちかく経過している…!
勉強用に逐語録もとってみたものの、たっぷり4時間分はとんでもなく長いため、個人的に勉強になったポイントを抜粋して書き留めておくことを思い立った次第。

ドメーヌ・マルキ・ダンジェルヴィル

スピーカーは現当主ギョーム・ダンジェルヴィルさん。
ドメーヌ紹介は「クロ・デ・デュックはダンジェルヴィル家の裏庭のようなところ」という第一声で始まり、クロ・デ・デュックへの愛着を感じる。
創業約220年と歴史あるドメーヌだが、畑は追加されたクロ・デ・カイユレの一部とクロ・デ・ザングルを除き、創業当初と変わらないとのこと。

ギョームさん

畑の紹介では、普段字面しか意識していない畑名の意味が興味深かった(特にタイユピエ)。

シャン・パン: シャン=畑、パン=坂
タイユピエ: タイユ=切れる、ピエ=足。石があまりにもたくさんありゴツゴツしていて、靴が切れるような畑
クロ・デ・デュック: クロ=塀、デュック=公爵。ブルゴーニュ公が遊びに来る一番お気に入りの畑だったことから

また「赤ならばヴォルネイ・サントノ、白ならばムルソー・サントノ」で(ソムリエ試験的に)おなじみのサントノ。
現当主の祖父マルキ・ダンジェルヴィル氏が「赤ばっかり作っているから」という理由で白を植えたというのも面白い。
続いて試飲と解説に。

2021VTの色の淡さよ!

ヴォルネイ プルミエクリュ シャン・パン 2021

  • ヴォルネイ1erの典型で、マルキ・ダンジェルヴィルの1erの中でも一番女性的な、シルキーでなめらか、酸が溶け込んで調和するスタイル

  • 2021VTは霜被害に言及。既に芽が出た状態からの霜で手が打てず、収穫量の75%が失われた。7-8月の低温・多雨もあり、収穫は遅く9/20に開始

  • VTの影響で色が淡く、軽くアルコール度も低い仕上がりになっているが、綺麗で緻密、陽気で溌剌としており、ギョーム氏はこのVTが好きとのこと

ヴォルネイ プルミエクリュ タイユピエ 2020

  • 2021とは対照的に容易なVT。当初8/25と決めた収穫を、最終的にさらに1週早めて8/19に収穫。酸の引き締まりを残し、ブドウが熟しすぎないようにするための措置

  • 2020のタイユピエは典型的な仕上がりで、果実・タンニン・酸が調和しており、ギョーム氏のお気に入り。収穫を1週早めた判断が功を奏した

ヴォルネイ プルミエクリュ クロ・デ・デュック 2019

  • 畑の特徴は傾斜の強さと土の多さ。傾斜により水はけと日照が良く、二つの丘の間で風通しも良い。東と南向き二つの斜面があるのも特徴で、東向き斜面があることで朝の太陽を浴びられる点も好条件

  • 結果として繊細さと複雑味を併せ持つワインを生む畑となっており、シャン・パンやタイユピエと比べるとフローラルやスパイシーな要素が感じられる

  • 2019年はエレガントで良好なVT

2021~2019と各VTに触れた流れで、温暖化についても言及。
2015や2018は気温上昇による乾燥ストレスが見られ醸造にも影響したが、2019以降は日照量や降雨量が同程度の年でもあまり乾燥ストレスが無いように感じられるとのこと。
ブドウの木が温暖化に適応してきており、今後は暑くても問題無く成長していけるのではと考察されていた。

またQAで出た「アルコール発酵に木製の開放桶を使用している理由」では、台形という形により発酵中の動きが変わってくること、ステンレスに比べて木製は温度の下がり方が緩やかであることを挙げられていた。

ドメーヌ・メオ・カミュゼ

スピーカーは現当主ジャン・ニコラ・メオさん。

ジャン・ニコラさん

導入はカミュゼ家の歴史、特にエティエンヌ・カミュゼ氏の功績に焦点を当てたもの。当時ネゴシアンとヴィニュロンの対立があり、氏がヴィニュロン側にたって原産地呼称法を通過させた話。
試験対策ではともすると「当然あるものとして」暗記に走ってしまいがちな原産地呼称だが、そもそも…

  • フィロキセラ禍 → ワインに色々なものを混ぜて作るようになる(北アフリカやギリシャから干しブドウを買って水につけて着色料を入れて発酵させる、等) → 「ワインとは何か」の定義が必要に

  • その後の植え替え → 今度はワインができすぎて品質低下 → 品質管理が必要に

…という流れの産物だと聞くと、改めてなるほどと。
また、ネゴシアン優位にならないよう、制度にあえて「品質」の要素を入れないで法律を通過させたという話も興味深くうかがう。
さらに、1920年にレオンス・ボッケが売却したクロ・ド・ヴージョの畑を、当時村長だったエティエンヌ氏の働きかけでヴォーヌ・ロマネの生産者達が購入したことで、現在ヴォーヌ・ロマネの生産者の多くがクロ・ド・ヴージョを所有しているというお話も面白かった(自身での購入も検討したそうだが…人の上に立つという事はいつの世も大変だ)

エティエンヌ氏の偉大さを学びつつ、試飲へ。
VTの異なる3つのワインだが、それぞれテロワールの典型とのこと。

ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエクリュ オー・ブドー 2018

  • 丘の下の方の畑で樹齢が非常に高く、メオ・カミュゼの中でもシルキーでなめらか、豊満なスタイルのワイン

  • 2018VTは暑く、ワインにもブドウの完熟感・暑さが表現されている

  • 今はちょうど飲み頃だが、これから一度閉じるとの予想。再度飲みやすくなるまでに5-10年を要するので、早めに飲んで欲しい(完熟したVTは長熟になりがちだが、長期熟成させると一度ワインがタイトになって良い熟成をもたらすとのお考え)

ヴォーヌ・ロマネ プルミエクリュ レ・ショーム 2017

  • 繊細なワインで、余韻にタンニンが感じられ硬さが得られるようになってきた。こちらも長期熟成型。豊満なオー・ブドーに対して、レ・ショームは直線的

  • 2017VTはそれほど暑くなく、遅めの9月中旬の収穫。収穫量が多く、凝縮度も高くなく、最初はあまり満足していなかった。しかし瓶詰してからの進化が期待以上で、今はハーモニーがあり、フレッシュで開いており、予想以上の凝縮感で、期待を超える出来になってきたとのこと

ヴージョ グランクリュ クロ・ド・ヴージョ 2016

  • 控えめでいて力強さがあるのがクロ・ド・ヴージョの特徴

  • 2016年は霜被害が大きく、40%の収穫減、収穫も9月末になった大変なVT。途中多雨であったが、9月後半の天候に恵まれてブドウは完熟

  • 前述のクロ・ド・ヴージョの特徴に、VTによる完熟感・溌剌さが合わさりうまくバランスが取れている。今飲みやすいが、閉じかけている感じがあるとのこと

その後のQAでは「ネゴシアンもので自分が所有していない畑のテロワールをどのように理解してワインづくりをしているのか」との質問。
自ら収穫を行うなどの工夫をしても理解に数年はかかることに加え、「区画による理解しやすさの差もある」というお話が興味深かった。
例えばシャンボール・ミュジニーはヴォーヌ・ロマネと隣接しているため通じる部分がありより理解しやすいが、ジュヴレ・シャンベルタンはより難しく感じる…など。
また、ネゴスは今非常に投機的になっており毎年同じ区画のブドウを得るのも難しいが、できるだけ毎年確保する努力をされているとのこと。

錚々たる生産者のお二方・贅沢すぎるラインナップの試飲で、あっという間の二時間。
こちらの試飲会、2013年から2021年までの垂直ラインナップ。
午前の部では2016~2021が並び、各VTについての各生産者の見解を聞きつつ、畑を超えた比較試飲ができる趣向はとても勉強になった。

午前の部試飲ワイン達。
2016-2021まで揃い踏み


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