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推しの所縁のお酒を飲んでみた

 推しが好んで飲んだというお酒を飲み比べてみたい。
 このnoteは、飲兵衛オタクがふとそんな事を思いついて実行してしまった一連の流れをつらつらと書き連ねたレポートみたいなものです。

 酒にまつわる数々の逸話と短歌・随筆作品を残し、誕生日が愛酒の日と呼ばれるまでに至った酒好き歌人「若山牧水」。近頃文豪が漫画・アニメ・ゲーム等各種メディアに取り上げられる機会もあって、そんな中出会ったその人にどハマりした。
 教科書に載るレベルのその名前を恥ずかしながらそれまで全く知らずに生きてきたので、興味に任せて著作・関連書籍を買って読み、その世界に浸っては晩酌をしながら思い浮かんだよしなしごとをTwitterにそっと放流する日々。彼の人は世に聞こえた酒好きなので、短歌にも酒にまつわるものが沢山あるのだが、具体的な銘柄が残っているものも。ハマってしまったからには「お酒の好みを知りたい!」なんていうしょうもない動機も十分あり、「一日一升飲む」というその人が美味しいと評する、あるいは頻繁に飲んだとされるお酒がどんなものか、ある日一人で酔っ払いながら考えたら興味が出てきた。
 というわけで、それらしき物を調べて探して買って一通り飲んでみる事にした。

銘柄のリストアップ

 まずはインターネットを駆使して、ご本尊が飲んだというお酒を検索。作家名に適当な単語を追加してググり、幾つかは歌にも詠まれていたはずだと思い公式HPの短歌検索でも調べながら、とりあえず以下の5つを候補とした(銘柄、酒造、由来の順に記載)。

白鶴(白鶴酒造/短歌にも詠まれている)
白雪(小西酒造/短歌にも詠まれている。酒造宛の直筆葉書もあり一時期博物館で公開されていたらしい)
御園竹(武重本家酒造/歌集未収録だが短歌にも詠まれている(ご本尊公式HP検索参照)。酒造にも度々訪れたらしく、愛用の酒器も展示あり)
蓬莱(渡辺酒造/愛飲していたとのこと(酒造HP参照))
神露(神露酒造/亡くなる前に愛飲していたお酒とのこと。樽で取り寄せていたらしい)

 なお、これ以外に「まさむね」という名が歌に詠まれているのだが、全国にこの名前を持つ酒が多数ありどこの銘柄(酒造)か特定できず。沼津にあるという高嶋酒造の白隠政宗だろうかとも思ったけど、該当の歌が詠まれた頃はご本尊はまだ沼津に住んでいなかったらしいのでしっくりこない。
 「まさむね」の正体、あるいは他にも「この銘柄好きだったらしいよ」と言う情報をお持ちの方は知らせていただけたら嬉しい。買って飲みます。
 ちなみに沼津には上記渡辺酒造とは別に、ご本尊の名前のついたお酒を作っていたという同名の酒造があったらしい(混同しそうになった)。そちらは蔵が閉じられてしまったらしい。残念だ。

どの商品を買う?

 いざ購入と思って取扱商品を見てみたが、どの酒造も複数の商品展開をしている上に、かなり数が多いところもある。なるべく候補そのままの名前のシンプルなものを選ぼうとするも、グレードや風味でバリエーション多数なものもある。選ぶ上で手がかりが足りない。
 今まで各種日本酒を飲んできた経験(?)上、酒造によって味の方向性を統一している所もあれば、商品ごとにかなり幅を持たせている場合もあるように思う。大吟醸などの高級品はどれも華やかで香りが良くてすっきりと美味しいけど、各々の酒造の風味が強くて個性が出やすいのは手頃で良く飲まれるラインだと聞くし自分もそう思うので、なるべく精米歩合高めの本醸造酒や純米酒を中心に安価で手頃なのものを選ぶことにする(ご本尊も大量に飲むなら手頃なものを手に取っただろうと思う)。
 飲み比べ用の少量ボトルセットなどがあればそれを優先して買って大まかに酒造の目指す味の方向性を見ようという事にする。味の基本方針は昔と大きくは違わないだろうというざっくり判断。味の振れ幅が広いタイプであれば後で考える事にする。

白鶴酒造
 気軽に公式サイトを見て商品の多さを目の当たりにして早速途方に暮れる。普通酒グレードで白鶴の名前のついたシンプルな酒というと「上撰 白鶴」かとも思ったが、在庫の問題もあり、通販ですぐに手に入りそうなものは大容量の商品ばかり。
 迷っていたらAmazonで300 mL容量の飲み比べセットを発見したため、とりあえずそちらを購入した。ラインナップは以下の通り

・白鶴 大吟醸
・白鶴 特別純米酒 山田錦
・白鶴 上撰 淡麗純米
・白鶴 特撰 吟醸鶴姫
・上撰 しぼりたての純米生酒
・上撰 ねじ栓生貯蔵酒


小西酒造

 こちらも白雪と名のついた銘柄が複数。推しご本尊はこのお酒を最初は頂き物で飲んだらしいので、普通酒より高級な物の可能性もある。
 散々迷った末、古い味を再現していそうな名前の銘柄があったのでそちらを選択。古いと言っても「昭和」なので推しご本尊の全盛期とは少しずれているだろうけど。

・純米クラシック白雪 昭和の酒


武重本家酒造

 こちらは以前試飲会に参加したことがあり、酒造の味の方向性らしきものはあるものの商品ごとにかなり味が違うのを知っていたのでどうしたものかと思ったが、代表銘柄らしいシンプルな「御園竹」のみの名前の普通酒があったためそれを選択。
 ちなみにこちらは推しご本尊の名前を冠した銘柄を出しているのをきっかけに知ったため、以前にも別の商品を購入して飲んだり試飲会に参加したりしているが、御園竹(無印)を飲むのは今回初。

・御園竹


渡辺酒造

 こちらも種類が多い。ご本尊がらみの情報も少なかったため、手を出しやすい範囲の少量瓶の複数種買いで対応。上撰「蓬莱」には145年のベストセラー!と酒造公式HPに記載されていたので選択肢としては悪くないのだろうか。

・上撰「蓬莱」古式極寒造
・純米吟醸 蓬莱 家伝手造り
・吟醸「蓬莱」伝統辛口


神露酒造
 この辺りまでくると若干の後悔が湧いてあまり数を増やしたくないなと思い始める。これまでの基準で選ぶなら「神露 上撰」を選んでいそうなものだが、なぜか本醸造酒を選んでいる。しかも低容量の300 mLではなく720 mLである。
 方針を決めた割に色々迷走したため、あれこれ考えすぎて自分でも基準を忘れた模様。多分酔ってた。

・特選本醸造「神露」

 神露については上記の通り選定基準というか状況が割と酷いのだが、後で色々あって銘柄を追加しているのでとりあえず一旦大目に見てほしい。
 ご本尊が最期に飲んだお酒らしいのにこの体たらくであることは少し反省している。

飲んでみた

 以下にリストの上から順に飲んだ感想をダラダラ書いていく。
 なお私の普段の日本酒の好みは淡麗辛口寄り、好みは新潟産の久保田や〆張鶴。甘口の酒は日本酒に限らず好き嫌いが激しい(ジュース系カクテル除く)。そんな感じの嗜好の偏りがあると思うので参考までに。
 ちなみに価格は税抜き・税込入り、あるいは価格改定前のものなど入り混じっている可能性があるのでご了承下さい(多分、大半が税抜き価格)。

白鶴酒造
・白鶴 特別純米酒 山田錦

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 代表的な酒米の一つ、山田錦というお米を使った白鶴の純米酒。冷ややぬる燗がお勧めらしい。300 mLで459円。大容量は一升瓶から?
 冷やでは辛口寄りに感じる。辛さ自体は穏やかで、辛口というより甘さがあまり無いという印象。後味はすっきりしているのでさっぱりした料理向け?
 燗をつけると辛さが穏やかになって隠れていた風味が前面に出てくる。

・白鶴 上撰 淡麗純米

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 純米酒。300 mLで370円。500 mL以上でパック酒になっていた。推奨は冷やかぬる燗、熱燗。
 冷やでは控えめな辛口?な感じ。まろやかで飲みやすい。薄いというという訳ではないがかなり穏やかな味で、個人的にはもう少しパンチがあってもいい気がする。
 くせが無いので燗酒でも飲みやすかった。こちらの飲み方は好み。

・白鶴 特撰 吟醸鶴姫

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 吟醸酒? 300 mL 412円。アルコール9%、低カロリーとのこと。女性向け商品だろうか。
 甘口。淡麗というか、かなり控えめな印象。日本酒っぽさがほとんど無いような…他の銘柄とは全然違う飲み口なので、購買層を全く別にしてありそう。

・上撰 しぼりたての純米生酒

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 純米酒、300 mLで358円。推奨の飲み方は冷や。
 淡麗辛口とあるが、濃厚さというか味がしっかりしていてまろやか。日本酒らしい感じで割と好き。辛口としては飲みやすい。

・上撰 ねじ栓生貯蔵酒

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 分類は不明。蔵出しの新鮮な風味、との事。300 mLで346円。推奨の飲み方は冷や。
 淡麗辛口寄りに分類されているが、味がしっかりしていて結構甘味も感じられる。推奨の通り冷やが美味しい。

・白鶴 大吟醸(写真無し)
 大吟醸なので今回のメインの層からは少しずれているが、セット売りだったので簡単にコメント。割と全国どこでも手頃に買えるイメージだが、味は正統派よりだと思う。大吟醸らしく香りと品のある味で、味はしっかりしつつも辛さ・甘さは程々。なんでも合わせやすそう。
 大吟醸としては手頃な価格帯な気がする(300 mL 488円)。

白鶴酒造を一通り飲んだ印象:
商品ごとにかなり味の方向性に違いがありバリエーション豊か。今回のセットはやや辛口寄り?だが、全体には穏やかめの味で尖ったものが少ない感じがした。
推しの飲んだ酒を知りたいという趣旨を考えると、銘柄はもう少し絞った方がいいかも。

小西酒造
・純米クラシック白雪 昭和の酒

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 写真の背景が散らかっているのはご勘弁を。
 純米酒。720 mLで1430円。推奨温度は常温を中心に冷やからぬる燗。酒造HPの紹介には「昭和の味」とあるが、ご本尊が白雪を飲んだと思われるのは大正の初めに人にもらっての事なので、今回の趣旨にはもっと合う商品があるかもしれない(実際に後で別の商品を追加で買う事になるのだが、後述する)。
 味は濃厚。ほんのり穏やかな辛口で素朴な味わい。穏やかな酸味とコクがあって飲みがいのある感じ。おでんなんかが合いそう。

印象:濃厚で素朴な味わいがかなり印象的。家で一杯、というのが似合う気がした

武重本家酒造
・御園竹

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 分類は不明だが、一番基本的な銘柄というか、日常的に飲む地元のお酒という感じでHPには載っている(個人の感想)。300 mLで350円、一升瓶で1838円。ちなみに今回は買わなかったが辛口ver.もある。
 お酒の味の表現は難しい(し、実際前述した酒のどれもかなりわかりにくい書き方になってしまったと思う)のだが、これは特にどう表現したか迷う。
 お酒っぽい角というか刺激が無くまろやかで、辛口ではないが甘いという感じでもなく、でも濃厚。コクはあるがしつこくない。
 まあ端的にいうとめちゃくちゃ美味しい。好きなお酒は沢山あるけど、このお酒のように飲んで思わず口に出して「うまっ」と言ったことはあまりない。
 コスパも良いのでいっそ2本くらいずつ常備したい。

印象:こちらの酒造は推しの名前そのものの銘柄を出しているので時々買って飲んだり酒造の試飲会に伺ったりもしているのだが、銘柄ごとにかなり味にバリエーションがあるタイプの酒造。その中でも「甘口でも辛口でもなく、濃厚で複雑な味だが飲みやすい」という感じのとっつきやすいタイプに感じた。

渡辺酒造
・上撰「蓬莱」古式極寒造

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 分類は不明。精米歩合63%とあるので本醸造だろうか。300 mLで389円。推奨は冷や、熱燗。
 味は定番の淡麗辛口という感じ。濃厚というよりすっきりだが、味はしっかりしている。日本酒向けのおつまみや料理なら何にでも合わせやすそうなお酒。

・純米吟醸 蓬莱 家伝手造り

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 純米吟醸酒。300 mLで556円。推奨の飲み方は冷や。
 味の系統は上記の上撰と似ている。上撰より濃厚で、辛口寄りだがほのかに甘味もある。さっぱり系よりは味の濃いめの食べ物が合いそう。
 ちなみにおでんをお供に頂きました。美味しかった。

・吟醸「蓬莱」伝統辛口

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 吟醸酒。300 mLで607円。推奨の飲み方は冷や〜常温。
 かなり辛口。すっきり淡麗に振り切っているので飲みやすい。さっぱりした料理に合いそう。

印象:たまたま同系のラインナップを選んだのかもしれないが、味の系統は同じ方向でまとめられている印象。淡麗辛口で美味しい日本酒、という感じ。

神露酒造
・特撰本醸造「神露」

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 瓶の写真を撮り忘れたので収集したラベル部分のみでご容赦下さい。
 本醸造酒(特選)。720 mLで1100円。魚料理に合う、燗をつけても美味しい、とのこと。
 甘口でコクがあるお酒。香りが良い気がする。魚料理に合いますとのことでお刺身を食べたが悪くない。甘みがあるので煮付けなどの方がいいかも。
 濃厚で個性的だが穏やかな味。美味しいけど個人的にはもう少し甘さ控えめが好きかも。

印象:系統としては御園竹に少し近い、かなり複雑な味わいのお酒。味わいに違いはあるがどちらにも濃厚で、その割に飲みやすいのが共通しているように思う。

当時の味は?

 あれこれ飲んでみた感じでは、甘口/辛口・濃厚/淡麗、どれもあってバリエーションに富んでいる。強いて言えば、白雪・御園竹・神露あたりはかなり複雑な味わいの濃厚なお酒だという印象があったなというくらい。
 普段が淡麗辛口メインの私だとちょっと新鮮だなと思っていたのだが、ふと、「そもそも淡麗辛口が流行ったのも比較的最近の話では?」と思い出す
 個人の嗜好以前に、明治〜昭和初期の当時のお酒の主流ってなんだ??

 思いついてみると「飲み比べ始める前に銘柄選抜の時点で気付け」という気がしてならないのだが、とにかく調べ始める。wikipediaに「日本酒の歴史」なんていう素敵項目があったのでとりあえず導入として読むと、色々面白い点は見つかったのだが、特に気になったのは以下の点。

・ご本尊(明治18-昭和3年)の時代は一升瓶が普及し始めた頃に該当(明治34年に白鶴酒造が初めて一升瓶詰を発売、同じ頃家での晩酌が広まっていく)
・吟醸酒が市場に出回るようになるのはご本尊没後
・吟醸酒をはじめとする高級な、精米歩合の低い日本酒造りに用いる竪型精米機ができたのは昭和5年頃

 吟醸酒が無かった時代でした。この辺りは選抜する前に知っとくべきだったか。
 加えて、調べ物の過程で岡山県酒造組合というWEBサイトを見つける。神露酒造が紹介される中で「特撰本醸造・『神露』」と「『神露』・純米吟醸」の写真が載っており、「『神露』・純米吟醸」のキャプションに以下の一文を発見。
「大正から昭和初期の歌人、若山牧水も愛飲していたという事ですが、当時の酒は今よりも精白度の低い純米酒であったようです(引用元はこちら)」

 ……当時の神露がどんなものだったかざっくりとだが記述されている……?
 今より精白度が低い、というのを読んで高性能の精米機が無いんだもんな…というのに納得しつつ、記事を書いてくれた人に感謝しながら「神露・純米吟醸」を追加注文
 「純米酒・本醸造酒に該当する精米歩合高めのお酒」という条件の下、更にバリエーションが多くて候補を絞れなかった白鶴酒造から「上撰・白鶴」も追加

 更にこの際なので、白雪を販売している小西酒造に「若山牧水が飲んだお酒は御社のどの商品ですか(意訳)」と問い合わせのメールを出す。小西酒造は直筆の手紙を受け取っているそうでそれを売りにしている所もあるようなので、問い合わせれば何か教えてくれるかも、と期待。数日後に無事に丁寧なお返事を頂いた。
 曰く、
・当時販売されていたものを再現するお酒は現在造られていない
・当時は吟醸酒は無かったから本醸造酒あるいは純米酒ではないか
 との内容(要約)と共にいくつか商品をご紹介頂いた(ご担当者様ありがとうございます)。本醸造二種、純米酒1種を知らせていただいたが、いずれも一升瓶だったのでひとまず神露の純米吟醸に合わせて「上撰白雪純米酒」を追加。
 以下にまた飲んだ感想を書いていく。

飲んでみた(追加分)

神露酒造
・「神露」純米吟醸

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 純米吟醸、720 mLで1430円。魚料理に合う、おすすめは冷や、ごくぬるめの燗。
 味がしっかりしつつすっきりして飲み易い。いくらでも飲めそう。上善如水を思い出す。分類としてはおそらく淡麗辛口だが、辛口具合は控えめ。味のベースはおそらく特撰本醸造の方と同じ系統なのだが、甘口ではないので大分印象が違う。というかおいしい上に飲み易いので止まらない。危険。お刺身に合いました。多分どんなつまみでも大丈夫。

印象:メモを取り忘れたので今回は割愛したが、吟醸酒も飲んだところ特撰本醸造の甘さを控えめにした感じだった。ベースの味はある程度統一されている感じがあるが、商品によって多少差がありそう。
 ご本尊御存命時には吟醸酒が出回っていなかったであろう事を考えると、辛口と甘口の中間のような味の、もう少し素朴な味わいの酒だったかもしれない。


白鶴酒造

・上撰 白鶴 (写真撮り忘れ。パック酒なのでラベルも回収できず……)

 本醸造酒かな? 900 mL 939円で購入。室温もいいがお勧めは冷や、あるいはぬる燗〜上燗とのこと。
 ほんのり甘口よりの、甘口と辛口の中間のような味。味は濃厚よりだが口当たりは軽くて飲み易い。毎日の晩酌向けという感じのお酒。価格も手頃で酒飲みにはいい塩梅のお酒な気がする。

印象:神露、御園竹と飲んできたが、ここにきて甘口辛口のどちらにも尖っていない、中間調の濃厚めのお酒になってきた。他の銘柄のことも思い出してみると、白鶴酒造は多種の購買者層に合わせて幅広く作るスタイルという気がする。


小西酒造
・上撰白雪純米酒

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 またしても瓶の写真を撮り忘れたので収集したラベル部分のみでご容赦下さい。追加分にもなってくると完全に気が緩んでいる……。
 純米酒、一升で1885円。上燗から冷やまで美味しさと飲みごたえにこだわった設計、とのこと(公式サイトより)。
 甘さ辛さはいずれも控えめで、その代わりというわけもないが、コクが前面に出ている感じ。濃厚ではあるが味は穏やか。少しクセがあるかと思ったが、夕食のお供に飲んでみるとよく合う。特に甘辛系タレの味付けのものが和洋問わず相性良さそう。

印象:こちらも甘口辛口の中間にありつつ味がしっかりめのお酒。追加分は日常的に飲む安価なラインで統一したせいかもしれないが、味はしっかりしているが穏やかな飲み口で、食事に合わせやすいという感じのものが多かった。白雪は純米クラシックのラインも同系のお酒の印象がある。本醸造や他の銘柄も飲んでみたい。

余談:味の変遷

 白鶴の感想欄にも少し触れたが「精米歩合高めのお酒」という基準に変えたところ、味にはバリエーションがあるもの、どれも甘口辛口のどちらにも寄らない中間調かつ味しっかりめのお酒が主になった気がした。日常的に飲みやすい手頃なラインが集まったはずで、メーカーごとの色はありつつも尖った味ではないというのは納得するのだが、せっかくなので数値化された味の比較もしてみる。
 以下の値は各商品本体もしくはメーカーの商品紹介ページに記載のものを参照した。

① 上撰白鶴 (日本酒度:1/酸度:1.4)
② 上撰白雪純米酒・上撰蓬莱 (日本酒度:3/酸度:1.4)
③ 御園竹 (日本酒度:1/酸度:1.3)
④ 神露純米吟醸 (日本酒度:2/酸度:1.5)

 ちなみにwikipediaの「日本酒の歴史」の中には「流通していた清酒の平均的な「日本酒度/酸度」の値をしめしたグラフ」なんてものにも言及されていたので、その引用元の文献も見てみたところ、明治末期〜昭和初期の流行り(?)の日本酒度・酸度も載っていた。そちらを参考に上記の銘柄を描き加えて書き起こしたグラフを以下に載せてみる(麻井宇介「戦時下の酒事情」『<食>の昭和史 8 「酔い」のうつろい』日本経済評論社 p224 図6を元に作成)。
 M40: 明治40年、T10: 大正10年、S10: 昭和10年の流通酒の平均的な日本酒度/酸度。①-④は上記の5銘柄に対応。

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 急に堅苦しい感じになったけど言いたいことはシンプルで、「昔と今では全体的に酒の味が違ってそうだな」と言う一点。明治後期〜昭和初期のお酒は結構な濃厚辛口に分類されるように見えるのだが、今そんなお酒はあまり主力商品としては売られない気がする。しかも吟醸酒みたいなスッキリしたお酒じゃなくて、雑味多めのお酒……

 なので「推しが当時がどんなお酒飲んでいたかを知る」と言うよりは、かつて飲まれていたそのお酒を造る酒造が今でも酒造りを続けていて商品を買って飲むことができる、そのロマンに思いを馳せるくらいが良さそうだなと思ったのでした。

まとめ

・若山牧水が飲んだ銘柄らしきものを幾つか見つけた
・当時は吟醸酒がなかったので多分純米酒か本醸造を飲んでた
・当時の味とはおそらく違うが、おそらく(好みにもよるが)かなり美味しく飲みやすくなっている
・甘口辛口の極端なものは少ないが、酒自体の味はしっかりめのものが多い印象
・どれも美味しかった(雑)(また買おうと思う)

そんな訳でよかったら皆さんも買って飲んでみて下さい。飲兵衛ライフ万歳。


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