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『週刊DiGG』#9 -最新HIPHOPレビュー紹介('20/10/17〜10/22)-

今週も始まりました『週刊DiGG』。#9では、10/17〜10/22までに公開された最新MV 7曲をレビューをつけて紹介します。

数年後には資料として使えるよう、曲にまつわるエピソードや関連リンク、そしてこの瞬間の空気感を封入しました。 


▶︎ HIPHOPに興味があるけど、どこから聴いたらいいか分からない。
▶︎ 手っ取りばやくカッコいい曲を教えて! 


という方にオススメの記事です。最新HIPHOPを一緒に味わってください。


※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse
とHIPHOP用語で表記しています。
※ アーティスト名に下線がある場合、TwitterまたはInstagramとリンクしています。

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|Red Eye / Get over it. Feat.漢 a.k.a. GAMI|

2020/10/18 公開

ぶっちぎって!ぶっちぎって!ぶっちぎってる!

Red Eye の前MV「Nakid Fact」では、中華料理屋の円卓でただ食事をするだけの出演だったのに、抜群の存在感を見せつけた 漢 a.k.a. GAMI 。

このままでは終わらないだろうなと思っていたら、やっぱり共演してた。

ビートメーカーLil'Yukichi による気ぜわしく、あおるエレクトリックなトラック。早口でながり立てるRed Eyeは、スキルがあるのは当然として、ラッパーとしてどれほどの覚悟があるのかをリリックに込める。

「好きなことを努力と呼んでる奴は一生残れねえ
 身を削り必死こいても簡単には登れねえ」

「デカくなると決めたあの日からは何も変わらない
 狭き門を渡るための犠牲ならば厭わない」


おそらく私を含めた多くのクリエーターは、耳が痛く感じただろう。愚痴や泣き言を言ってる間に、差がどんどん開いていく。重い覚悟を背負いスキルを磨くと、これ程までにぶっちぎれるのかと思い知らされる。

ドラッグをキメながらレコーディングするのを、逮捕をきっかけに止めたと言う客演の漢 a.k.a. GAMI。ラップに、昔のスピード感が戻っている。まさに「Get over it = 乗り越える」 



⬇︎前MV「Red Eye / Nakid Fact」を紹介した記事。レビューを読んだ後に聴くと100倍楽しめる。

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|KAYA / Livin' Proof|

2020/10/17 公開

だんじり祭とレゲエの町・大阪 岸和田が生んだクルー BASE HEZZより、KAYAのソロ作品。

奇をてらう訳でなく、新しいサウンドを追い求めるでなく、好きな音楽をただ好きだからやっているだけ。それ以上でもそれ以下でもない。

そんなシンプルな純粋さがある。DJ AKによるドラムは、各パートの粒が立って聴こえるのも同じ思いからだろう。歯を磨く、トイレにいく、食事をするように、生活の一部にHIPHOPがある表現者としての強さを感じる。


「これ以外表現法は分からず響かす 
 端から見ればカス」



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|P-NOM & BoNTCH SWiNGA / ING|

2020/10/18 公開

女性ラッパーにも色々なタイプがいて、HIPHOPの王道を歩く人、可愛らしくてスキルフルな人、闇を抱えて痛みを吐き出す人など様々だ。だた、日本にはこの手の女性ラッパーはいなかった。

彼女は、兵庫の田舎から単身で京都に乗り込み活動するラッパー P-NOM 。ビートメーカーBoNTCH SWiNGAによるJAZZYなビートに合わせ、チャキチャキとしたラップをする。物怖じしない気風がよさがあり、言いたいことは言わせてもらうという強い意思が感じられる。

またラップの鬼になる前の華やかさもあり、今しか見れない彼女の貴重な進行形が刻まれている。

「時はいつでもING
 流れるがままに愛を演じる」



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|REKI / KAZE|

2020/10/19 公開

奥まった喉の深部を震わせて歌う超低音ボイスが魅力的な REKI 

ダークなTrapがピタリとハマる声質だが、この曲では明るくも暗くもない中間色のビートに、節々にメロディアスなフローを織り交ぜる。いや、一度聴いただけで耳に残る美メロを、低音に落とし込んだというべきか。

実はREKI、テラスパンパンスというタバコ系(?)YouTuberで、喫煙動画を200本以上作成しつつ、ハーモニーのある曲も歌うグループのリーダ。メロディの良さに合点がいく。この意外性は100点!

晴天の日々も
暗澹な日々も
止まれないんだ
風を切って


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|KyonCee Apartment / DaFlava4WAX|

2020/10/22 公開

思わず中指を立てる。

これは、カッコいいHIPHOPの価値基準。解像度の低いくぐもったベース音が、余計に腹の底から感情を突き動かす。

2017年7月から西東京を中心に活動する KYONCEE APARTMENT 。飾り気なし、小細工なし、「やっぱこれだろ REAL HIPHOP」とひたすらにBoomBapを突き詰める求道心がある。

彼らの情報は少なさに反比例して、周辺のアーティスも含めた頻繁なリリースがあり。西東京のシーンが、熱く活性化しているのが伝わってくる。

ISSUGI仙人掌など東京アンダーグランドの血を脈々と受け継いでいて頼もしい。

断りはなく こだわりで吐く
この街のスタンス あの街でダンス



⬇︎西東京のことが知りたくてTwitterで情報提供を呼びかけたところ、同じく西東京で活動するラッパー A さんがリプしてくれました。紹介してくれたBARI3BRAND(ばりさんぶらんど)は、写真、ビデオ、オリジナル書道を駆使したアーティスト 平川雅人 さんのチャンネルです。KyonCee Apartmentが気になった方は、こちらもチェック!


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|空音 / scrap and build|

2020/10/21 公開

なんと2180万回再生‼️

「空音 / Hug feat. kojikoji」がモンスター級の大ヒットとなったラッパー空音 。多くのリスナーに支持され、大物アーティストとのコラボも増えた。

がその反面、HIPHOPリスナーからは「空音はラッパーじゃない」「アイドルだ」と嫉妬も含めた批判の対象にもなった。

そんなヘイター達へ、空音からの回答がこの曲。1stアルバムで見せたスウィートでファンタジーな要素を排し、ダークに怒りをぶつけたTrapとなっている。

みんなが作り上げたイメージなんて何回でも壊しては作る。既定路線とは異なり、自分にもファンにも厳しい表現を選択した空音。

「Your best も 誰かの通過点かも」

お得意のキレのあるラップは健在。句読点がどこにあるか分からないほど早口でまくし立て、スキルを見せつける。

やりたい表現が色々あるもんで悪いね
と言わんばかりに、ヘイター達を置いてく様が痛快だ。

俺はそこらの一発屋じゃない
ジャンルの檻では暴れ足りない
から 空音がジャンルさ 黙りなさい



⬇︎ヒットして喜ばしいはずなのに、なぜか批判が多いことへの問題点が書かれた記事。私も“にわかファン”をいかに増やすか、その内の何割をコアなファンにするかが勝負だと思っています。


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|Madness Pin Drops / CRY|

2020/10/17 公開

洗練されたエレクトリックなビートに、HIPHOPの要素を掛け合わせ、異質なオリジナリティーを感じる Ryuuta Takaki 率いる新鋭レーベル makran 

そこに所属する、透明さと無邪気さ、儚さをあわせ持つインディR&B系のシンガー Madness Pin Drops

吹けば空気に溶けそうな歌声。
闇の中で揺らめく陽炎は、深遠なピアノと共に暗い暗い底へと沈んでいく。

あの時は繊細で閉ざした世界
Pease please come back
Pease please come back
暗い暗い暗い cry cry cry

自身の1stアルバム『INTERFERENCE』では、ラッパーZIWを起用したり、北九州の若手クルーJUNCTION THREEとも交友があるだけあって、曲の後半にはHIPHOPの要素も取り入れたフローも披露する。

日本では数少ないインディR&B系シンガーは貴重な存在。ビー玉みたいなキレイな瞳の奥には、まだまだ多彩な表現を秘めおり、これから注目されるアーティストである。



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今週のHIPHOPニュース

ラッパーのKENNY Gと舐達麻のBADSAIKUSH が揉めているという噂がありましたが、Instagramのストーリーズを熱心に追いかけている人でないとよく分からないという状況でした。

⬇︎そんな矢先、SNSに公開された情報を丁寧に拾い集め、時系列順でまとめた動画が公開されました。ようやく概要がつかめた感じです。

ただ制作者も「あくまでフィクションです」と述べているように、本当の真意は2人のみぞ知ることです。

私としては、血なまぐさいニュースにならないでと祈るばかり。2人が楽曲制作に取り組めるよう環境を整え、新しい曲を届けてくれることで早くリスナー達を安心させて欲しいですね。

⬇︎10月16日に公開された舐達麻のインタビュー。“舐達麻PR”と書かれていることから、彼らの強い意思が込められていることが伺える。


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さらにHIPHOPを知りたい人へ

最新HIPHOPを7曲紹介してきました。皆さんのお気に入りアーティストは見つかったでしょうか?オススメのMVがあれば教えて下さい。チェックします。

『週刊DiGG』では、これからも毎週HIPHOPを紹介していきます。まとめて読みたい、という人のために『月刊DiGG』も始めました。月1回 約30曲分をまとめてチェックできるので、お好みでどうぞ。

また日本のHIPHOPを海外に向けて発信しようと準備をしてます。近々noteで発表しますので、見逃さないようフォローをお願いします。ではまた来週お会いましょう!


⬇︎筆者によるYouTube動画


⬇︎毎月2回作成しているプレイリスト。'20/10/1〜10/15までに公開されたMVの中から厳選した30曲をセレクトしました。今回紹介しきれなかった曲がたくさんあるので聴いてみて下さい。


⬇︎『週刊DiGG』バックナンバーはこちら


HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。