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HIPHOPのMV 15曲をピックアップ(2022年4月公開作品)

Twitterで毎日レビューを書き続け、4年目に突入したドラム師匠です。毎週100曲以上(!)公開されるHIPHOPのMVの中から、2022年4月に公開された15曲をピックアップしました。

  • 最新曲を一気に知りたい

  • 曲にまつわるエピソードも知りたい

なんて人にオススメの記事です。では15曲の音の旅へ。

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YAMANE / NAKARISHIKA feat.ELOQ & JUMBO(Tracks by NATAL)

2022/04/03 公開

▌このスタイルは、誰もマネできない。

孤高のラッパー YAMANE 。

その歴史は古く、2006年に設立されたレーベル LOW HIGH WHO? の初期メンバーであり、当時 Jinmenusagi が憧れるほどエース級の存在感であった。

2010年にはアルバム「アオソラ」「アカソラ」を発表するも、2013年に突然活動を引退する。しかし、2015年に復活し、アンダーグランドの奥深くから単発的にDopeな音を届けていた。メディアへの露出が少ないことから、いまだ謎めいた存在である。

そして、まとまった音源としては久しぶりとなるEP『ENISHI』を2021年8月21日にリリース。そのEPに収録されたこの曲は、"Mumble Rap"と呼ばれる言葉の輪郭があやふやで、日本語かどうかも判別が難しいフローが特徴的だ。

それは精霊を呼び出すためのシャーマンの儀式のようであり、怖さすらも感じる迫力がある。理性が剥がされ、人間の動物的な本能を突き動かす力作となっている。


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▼この曲のMV公開に合わせて行われたYAMANEの貴重なインタビュー。これまで語られることがなかった引退の理由や今後の展望などが語られている。このサイトより期間限定で未発表曲2曲をフリーダウンロードできるので、お見逃しなく。

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Watson / break bad

2022/04/06 公開

▌これから全国に名を轟かす新鋭ラッパー

徳島出身のラッパー Watson 。

UK Drillのノリで、無数の矢のように放たれる言葉たち。ザラついた声がダイレクトに胸を突き刺してくる。それは"生きること"と"ラップをすること"が限りなくイコールだからだろう。

PRKS9のインタビューによると、1日2曲以上作り続け、すでに600曲のストックがあるという。研ぎ澄まされるリズムアプローチ。言葉の端々にはリリックの内容以上に自信が宿っている。やり続ける努力は嘘をつかない。

「確かに必ず売れる だけれどメルカリでは売れない」

「break bad」のリリックより引用


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S.L.N.M / 娑婆にさらば

2022/04/07 公開

▌カオスを楽しめ

これはHIPHOPか?ロックか?
いい意味でジャンル分けに困る、まさにオルタナティブな3MC+1DJ / ビートメーカーのユニット S.L.N.M(サルノメ)。

この曲は、チンドン屋を連想する昭和の猥雑さとファンキーさがある。テンションの高い男性MCの ユキテロ(空きっ腹に酒)、(memento森)に対し、にゃおみ(木原尚美)の気だるいCOOLな歌にゾクゾクさせられる。

後半、甘美なSAXから過剰にディストーションが掛けられたギターが展開する暴れっぷりは、バンドならではの醍醐味。このカオスさは、関西インディーシーンの系譜を受け継いでいる。

4s4kiや環ROYを輩出したササクレクト からリリースしているのも頷ける。


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中島九条珈琲 × illmore × Skaai[ Scent of home ]

2022/04/09 公開

▌春のうららかな日差しと音楽と…

カフェの枠に収まらず、金と銀のコーヒーカップといったオリジナルグッツを展開するなど面白い動きをみせる中島九条珈琲

その一環として、HIPHOPアーティストとオリジナルソングを作っており、この曲はその第3弾。前2作とも大分のビートメーカー illmore がトラックを作成しており、今作は同じ小学校出身というラッパー Skaai をフィーチャー。

足踏みしている暇はないが、走り続けている自分に与えるわずかな休息。そこには罪悪感もあったりして。でも、それは次に進むために必要な一時。そんな情景を、Skaaiは柔らかくフォーキーな歌にしている。


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▼ Skaaiの名を一気に拡めたラップスタア誕生の動画。研究者としての道を進むか?音楽家としての道を進むか?葛藤の中、ブースに入ったSkaaiはレコーティングを中断してしまう…

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Jwyed / Kushu

2022/04/09 公開

▌決意の裏にはこんな理由が…

埼玉・群馬のクルー Kl$nt.JP(クレセントジェイピー)は、2021年11月に「NOBORI」を発表した。それは志を高く持ち、行動しようと訴えているものの、次の場所に行けていない歯がゆさが、焦りと共に吐き出された名曲であった。

▼「NOBORI」の魅力について語った対談記事


そのメンバーの1人 Jwyed のソロ作品。ハリウッド映画のようなスケール感のあるストリングが、凶悪なベースに飲み込まれそうなほどスリリングに展開するダークなTrap。無骨でコスれた声が、野蛮な闘争心を掻き立てる。

あの日の痛み変える強さに 
勝負時必ず出るadrenaline 曲にし歌う
後には引けない 逃げ道は無い
まず引く気もない

「Kushu」のリリックより引用

音楽をするために自らを追い込み、退路を断つ決意がつづられている。だからこそ、「自分の人生 自分で決めろ」のフレーズが心に響く楽曲に仕上がっている。

と、この話には続きがあった。

この曲のリリース直後、クルーであるKl$nt.JPの解散がアナウンスされた。
それを知ってから聴くと、リリックに込めた並々ならぬ思いが伝わってくる。Kl$nt.JPは、メンバーのキャラが立っていたので解散は残念でならない。(もっと曲を聴きたかった…)だが、各々実力があるので、今後の展開を楽しみに待とう。


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AKANE feat. Rudebwoy Face / 美味美味Smoke

2022/04/10 公開

▌斬新なのに踊れる

ダンスホール・レゲエシーンを先駆するシンガーでありながらラップもかます AKANE 。

ラガベースのメロディに、毒っ気ある歌い方は挑発的。歌声を細切れにし、パッドを叩きながら音出しているようなブツ切り感が斬新。バッドトリップするイカれた映像も最高。それでいて踊れるのがカッコいい。


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Tokyo Gal, Lil Gummy, VAPESHARK / NEXT LEVEL(Prod. Tokyo Gal)

2022/04/11 公開

▌軽々と国境を越える

Abema TV『ラップスタア誕生』で一躍脚光を浴びるようになった Tokyo Gal 。ラッパーとしてだけでなく、シンガソングライター、トラックメーカーとしても才能を発揮するマルチプレーヤーだ。

自身のビートを使用したこの曲では、韓国在住のLil Gummy、FUNNYSTREET所属のラッパー・VAPESHARK をフィーチャーしている。

Tokyo Galが、BlackとJapaneseの血を持つ東京育ちのバイリンガルなだけあって、英語と日本語が入り混じったVerseを披露。Verse2のLil Gummyも英語・韓国語を使い分け違和感なく曲に溶け込んでいる。

ベースに飲み込まれキック音がほとんど聴こえないDrillサウンドは、挑発的なラップと相まって凝り固まった概念を壊していく。最後にZ世代のラッパー VAPESHARKのVerseで締めていることも、NEXT LEVELを象徴している。

国籍の壁を軽々と越える活躍が期待できそうだ。


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▼「あなたは日本人なの?アメリカ人なの?」との質問に対してコメントした動画

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TORAUMA / 火光 feat.柊人 (beat by 詩奏)

2022/04/13 公開

▌あきらめにも似た静けさと
捨て鉢なポジティブさ

青森出身、沖縄のHIPHOP集団・604で活動する TORAUMA と、彼の代表曲「椿Ⅱ」のビートメーカー 詩奏 が、ダブルネイムで制作したEP『アレイズ』に収録された曲。ラッパー / シンガーである沖縄の 柊人 がHOOKを担っている。

TORAUMAと柊人は、ほとんどリリックができていない状態でスタジオに入り、トラックを聴きながら2人でセッションするように歌いながら、踊りながら歌詞を書いていったという。

ラップパートにコーラスが挿入され、コーラスからさらにメロディが生み出され、折り重なるようにハーモニーが生まれている。

TORAUMAの行き場を見失った生命力を、柊人が上手くすくい取り、歌と共に緩やかに伝えている。2人の声のコントラストが素晴らしい。


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PUNPEE & JJJ / Step Into The Arena(Prod. PUNPEE, JJJ)

2022/04/14 公開

▌メジャー作品に忍ばせる実験精神

世界的に有名な戦略系トレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」とコラボした楽曲。

ラップだけでなくトラックメーカーでもある PUNPEE と JJJ の2人が、ゼロからトラックを共作した。ホーンが高揚感をあおり、破裂音を重ねる演出は、映画のようなストーリーが想像できる展開力。音色のドラマチックさとは裏腹にハイハットが左右でパンし、リズムが次々と変わる野心的なDrillサウンドとなっている。

リリックにはゲーム用語を散りばめ、不利な形勢から逆転をねらい技を繰り出す勇ましさがある。JJJは、文節を区切らず一気に畳みかけるテンション高いラップを披露。対するPUNPEEは、ゲームの世界観を大切にしつつ、さりげなく地元・板橋や芦田愛菜を挿入するユーモアセンスに思わずニヤリとさせられる。


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JUMADIBA / Kick Up feat. ralph(Prod.Double Clapperz)

2022/04/17 公開

▌DJ KRUSHを唸らせる才能

DJ KRUSH のソロ活動30周年を記念してつくられたEP『STORY / 道』にフィーチャーされた2MCの共演作。

3月に大学を卒業したばかりという JUMADIBA は、大雑把に切った野菜みたいなゴロっとした語感が特徴的なラップ。レッドブルのインタビューでは、「日本語の並べ方とかは独特なんじゃないかなって自分でも思います」と語る通り、「絆創膏貼る カストロ」と言った予想外のワードを掛け合わせて引っかかりを作り、イメージを膨らませる。

Liveでの共演も多いVerse2の ralph は超低音ボイスが特徴的。JUMADIBAが高めの声に対して、下へ下へと身を潜ませる対比が面白い。


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Nina Utashiro / ÉTUDE(Prod. starRo)

2022/04/21 公開

▌いったい何者?

クリエイティヴ集団・PETRICHORを創立し、アートの境界線を越えていく 歌代ニーナ 。不安の溝に吸い込まれそうな音に乗せ、切々と念を込めた朗読に近いラップ。それはエキセントリックな見た目からは想像もできない、昭和のアングラ映画のような日本語ならではの響きがある。

「外から見えてる私は1人 でも頭の中には13人」と多重人格を思わせる描写は、得体の知れない狂気へ飲み込まれる。インダストリアルロック・フリーJAZZ・ノイズ・Trapが混在した上手く定義できないサウンドが、さらなるカオスを生み出している。

Awichの楽曲「洗脳」や椎名林檎のアルバム『加爾基 精液 栗ノ花』が好きな人は聴いてみて欲しい。


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EVO form THA ANTHEM / MAD (Prod. CEACE FLEMMIE)

2020/04/24 公開

▌死神に誘われそうなホラーコア

HIPHOPクルー THE ANTHEM の中心人物でもある IMUHA BLACK に目を付けられ、共演を繰り返すうちにクルーに所属するようになった EVO 。上京をキッカケにIMUHA BLACK宅に10日ほど泊まり込み、6曲入りEP『TRAINING DAY』を完成させる。

EPに収録されたこの曲は、ピアノの残響音が感情を不安にさせるトラックで、深い霧から現れた死神に誘い込まれそうになる。悲しみを背負ったEVOのラップは怖いほどに冷静。青い炎のような熱さがあり、その中に色気が宿る。


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Sound’s Deli (feat.漢 a.k.a. GAMI) / DAWG LIFE FREE STYLE [REMIX]

2022/04/25 公開

▌若さゆえの奔放さ

Sound's Deli は東京・下北沢を拠点に活動する G YARDGypsy WellKaleidoMoon JamTim Pepperoni の5MCから成るクルーで、メンバー個々でもすでにリリースを重ねる実力派集団。

2021年にリリースしたアルバム『MADE IN TOKYO BANG』に収録された楽曲「DAWG LIFE FREE STYLE」に漢 a.k.a. GAMI を迎えたREMIX曲。

軽やかなフルートの音色に誘われるように、Sound’s Deliのメンバーは自由気ままにラップしている。Verse1のGypsy WellとVerse2のG YARDは、スピーカーをブチ破って本人が出てきそうなほど声が前に押し出されている。他のメンバーも枠に収まりきらないラップをしており、若さゆえの奔放さがあふれる。

"仲間"をテーマに、明るい未来を創造すると歌うSound’s Deliに対し、過去を語る漢 a.k.a. GAMIは、消えていった"仲間"にエールを送り、手を差し伸べる優しさを見せる。世代による"仲間"の捉え方の違いが楽しめる。


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TYOSiN / 雷鳴(feat. Xgang, HAKU FiFTY, ₩, Yvng Patra, ORIGAMI & GNB AAlucarD)

2022/04/28 公開

▌90sのデジタルパンクをアップデート

 早くからTrapを取り入れ、哀愁のメロディーメイカーでもある TYOSiN(トキオシン)が、Trap Metal系の若手クルー Xgang のメンバーとコラボしたマイクリレー。

次に上り詰めるのは自分達とギラギラついた野心と憤りが、ラップを鋭利にしていく。Xgangの面々が個性が光っている。

ブレイクビーツが挿入される度に、上がっていくボルテージ。TYOSiNによる2度目のHOOKがきっかけで、シャウト系のラップに変わる。トラックも疾走感が増し、ノイズにまみれて破壊力も増していく。

様々なジャンルが入り混じる様は、Atari Teenage RiotやTHE MAD CAPSULE MARKETSに代表される90sのミクスチャー系のデジタルパンクに通じる。


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Campanella / RAGA feat. 鎮座DOPENESS(Prod. Ramza)

2022/04/29 公開

▌奇才×鬼才×奇才

愛知県出身で独自のスタイルを確立する Campanella 。2020年にリリースしたアルバム『AMURUE』に収録された楽曲「SUMIYOI」や、ビートメーカーSTUTSの楽曲「Sticky Step」で共演していた 鎮座DOPENESS と再び手を組んだ作品。

気持ちよさの中にあえて不安定さを織り交ぜるビートメーカー Ramza 。ビートの心地よさを最大限生かしながら、絵の具を染み込ませるように三連符でラップする2MC。

トリッキーに言葉を分解するCampanellaと、演歌に通じる日本らしさとユーモアがにじみ出る鎮座DOPENESS 。

我が道を追い求める孤高の求道者たちが、引き寄せられて交わった邂逅。ここはまだまだ通過点に過ぎないだろう。

終わらない表現の旅
くだらない問題は逃避
チャプターワンから巻き戻し

「RAGA」のリリックより引用

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終わりに

最後まで読んで頂きありがとうございます。いい曲と出会えたでしょうか?気に入ってくれた人は、ぜひ高評価とフォローをお願いします。皆さんのアクションが支えになりますので…

また、皆さんのオススメMVも教えて下さいね。必ずチェックしますので!

今回、紹介しきれなかった曲たちがまだまだあります。毎月2回、プレイリストを作っているので、さらに深堀したい人はクリックして下さい。
では次の記事でお会いしましょう!

ドラム師匠でした。
Twitter:https://twitter.com/drumshisho


HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。