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Roland MC-101レビュー

2020年の9月に妻に買ってもらったMC-101、レビューを書きたかったのだが、なかなかじっくり触る時間が取れず、今になってようやく書けるようになったので、レビューを書きます。

僕は2000年頃からテクノ・ミュージックを作り初めて、最初に買ったマトモなツールがRoland MC-505でした。ツマミが一杯ついた機械らしい見た目と、「どんな音でも出る!」という万能感がたまらず、当時楽器屋の店長さんと仲が良かったこともあり、かなり安く手に入れました。かなり緩いテクノを量産して、翌年にはiBookとReason(確かv1.5とか)を導入するのですが。

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ときにGroovebox系ギアが恋しくなって、時々思い出したかのように買うことはありました。特にYAMAHAのRS7000はサンプリングも扱えて、シンセサイザー的な処理をするのに必要なツマミが全部出ていて、「リアルタイムループリミックス」と呼ばれるフレーズ内のMIDIノートをツマミで並び替える機能が素晴らしかった。大きすぎること、すぐボタンがだめになったけど良くできた機械で、ああいうハードが今の技術で出てくればなぁ、と思っていました。

2019年、Groovebox本家のRolandから、MC-101とMC-707が発表されました。4トラックまたは8トラックでPCM、VA、サンプリングが扱えてSCATTERも付いているなんて、まさに理想のハードウェアが手に入ると思いました。
ちょっと私が音楽作りから離れていたのですぐには買えなかったけど、妻が誕生日プレゼントとして、「たまには欲しい楽器でも買ったら?」ということで、MC-101を希望したところ、通りました。

もちろんMC-707の方が色々楽しいのは分かっているのだけれども、
・音源はZen-Coreで共通
・MC-101の音源は本体のフルエディットはできないが、Zenology Proで何とかなるだろう(これは期待通りZenology ProのプリセットはMC-101に移して読むことは可能)
・PCや他のハードで4Trの制限はカバーできるし、逆に限定されていた方が良いだろう
・とにかく小さい!(一番重要)
上記理由と予算の都合上、MC-101でヨシとしました。

前置きながくなりましたが、レビューに入ります。

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【デザイン・操作性】
これだけのサイズに、これだけ機能詰めて、よく出来てるなと思います。
かなり覚える事が多く、ドラムトラックのベーシックな操作である各パートのミュートもトラックボタン押しながら任意のパッドを押す、なんて説明書見なきゃわからないので、慣れるまでは説明書とにらめっこです。
主要な操作はShiftキーとボタンの組み合わせでアクセスはできるので、操作を覚えてしまえばノンストップでガシガシとクリップを作っていけます。
ループトラックのサンプルまでも演奏を止めずに消去・読み込みできるのは地味に優秀です。

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【音源・音質】
音源はZEN-Coreと呼ばれる、PCM/VAの合せ技的な感じですが、Zenology Proのエディット画面を見れば分かる通り、音声処理の工程はMC-505やJV、JX等のPCMシンセサイザーにみられる仕組みとほぼ同じ方式です。
このあたり詳細はZenology Proについて記事を書きますので割愛しますが、フィルターはアナログモデリングのタイプが用意されていますし、LFOもSTEP LFOと呼ばれる波形を自分でデザインすることができるなど、凝った音作りも可能です。

MC-101でエディットできる範囲は非常に限られているし、本体でのエディットは少々大変です。
しかし、Zenology ProでBANK書き出し→読み込み(但し現時点ではSDカード経由)か可能で、実質MC-101の音色プログラムエディターとして機能します。ただ、JUPITER-8やJUNO-106といったSound Expansionsやドラムのパッチは移せないので要注意。
PCMは波形、キャラクター共にMC-505を思い出させるものがありました。やはりダンス/エクレクトロ系の音色にフォーカスされているというか、ブレないなという印象です。生音系も一通り揃っていますが、色っぽいというよりは解りやすい音しています。
音質について、AIRA系はTR-8やSYSTEM-1など使ったことありますが、MC-101含めて安定して使える音です。単体で聴いて特に感動するような分厚さとかあるワケではないのですが、ビンテージ・シンセやElektronのギアと混ぜてもちゃんと馴染んでくれる「丁度良い音」なんですよね。
あと、Zenology Proで音作っていてPCのイヤホンジャックで聴いていて「イマイチだな」と思ってMC-101をオーディオインターフェース代わりにしてみたら「うわ、良い音」と思いました。D/Aの品質は高いと思います。Windows10のドライバーもまずまずの安定感です。

【サンプリング】
PCの波形編集ソフトでループを作って、SDカード経由で読み込ませれば結構インテリジェンスな感じでループトラックに読み込ませることができます。
ほぼ間違いなく小節数もいい感じに一発で調整してくれます。ただ、オリジナルのBPMから±10%以上違ってくるとしんどい感じにはなりますが。
サンプリングのキャラクターとしては突出したものはありませんが、素直に出力する印象です。
操作性の部分にも書きましたが、ループトラックに読み込んだクリップの削除=ループの削除と読み込みはシーケンス止めずに作業が可能です。
ちょっと手間にはなりますが、サンプルの編集も可能で、サンプラーとしても中々使えます。
作業領域のメモリーとして潤沢ではないので、沢山のサンプルをプロジェクトに載せることは難しいですが、消したり読み込ませたりの工夫でライブも乗り切れるのではないでしょうか?

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【シーケンサー】
限られたボタンの中で打ち込んでいくので、特にTONEトラックで打ち込むのは結構大変な作業です。ドラムトラックも専用機に比べれば「少し手間だな」と思ってしまいます。MC-202に比べれば天国みたいなものでしょうけど。笑
MIDI入力は備えているので、MIDIキーボードを使うなどすれば快適になるかも知れません。
せめてSEQモードで打ち込むときに、ベロシティがかんたんに変更できれば良いんですけどねぇ。(NOTEモードでパッドベロシティ変更すれば反映される)
シーケンサーで面白いのは、つまみの動きを記録するMOTION機能があり、このテの機材では普遍的な機能であるが、SHIFTボタン+MODボタンのメニューにMOTION DESIGNERなるものがあり、LFO的な感覚で自動的につまみの動きを生成することができます。この中にFORM TYPE「RND」にするとランダムにツマミの動きを作るのでカオスなシーケンスを作ることができます。
TRACK SEL任意の数字ボタン+「>」ボタンでシーケンスをランダムに再生、という機能があったり、ちょこちょこ面白い機能があります。

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【SCATTER】
AIRAシリーズお馴染みのSCATTER機能は、TR-8では専用のノブがあり、有機的に変化がつけられ、SYSTEM-1ではアルペジオとの合せ技っぽく活用できて、独特のフレーズが作れました。
MC-101では、SCATTERをエディットできて、各PADにアサインできます。プロジェクトの中で16個までカスタムした効果のSCATTERを保存することができます。
このエディットも結構骨の折れる作業ではありますが、グリッチっぽい効果はもちろん、ターンテーブルのスクラッチのような効果やSCATTER用に独立した2種のエフェクトのSEND機能もあるので、ディレイに送ってDUBっぽい効果を作ることも可能です。
プロジェクト毎にSCATTERを作り直すのは大変なので、16個のボタンをシンプルな効果に設定したものをテンプレート的なプロジェクトとして保存しておくと便利です。
MC-101とPCを接続して、DAWからの2mixをSCATTER通してDAWに戻すことも可能。これだけでも、MC-101はDAWの強力な外部エフェクターとしても機能します。

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【エフェクター】
SH-32やSPシリーズなど、Rolandのエフェクターは信頼性高いのだが、MC-101も良い感じのエフェクターが各トラックに1つずつ、SCATTERは2系統、各トラックにSENDでリバーブとディレイ、マスターに1,と十二分にエフェクターを搭載。テープエコーはもっと本物に寄せて欲しかったというか、Intensity全開で発振しなきゃREじゃないだろ!と残念に思いましたが、JUNOコーラスはお見事な出来栄え。あのノイズの感じは、JUNO-106のフェーダー下げたの忘れてた感じを思い出します。
リバーブやディレイはもっと汚く掛かるのが好みですが(やっぱSE-70は手放せない)、全体的に気持ちよく掛かるエフェクター達です。

【その他】
ドライバをダウンロードして、DAWのMIDI I/O兼DAC(MC-101はアナログ音声の外部入力は備えていない)としても使うこともできます。ControlノブはCC信号を出力する設定にもできるので、MC-101をMIDIキーボード/コントローラーとして使うことも出来なくはありません。まぁこれをやる旨味はないし、もっと適当なMIDI入力機器は安くて良いのいっぱいありますが。
DAWの音をMC-101で加工しつつ、MC-101内部の演奏もミックスしてDAWに返すことができるので、DAW+MC-101でライブしたものを録音することも可能です。
Zenology ProがあればCPUが許す限りでZEN-Core音源のトラックは8どころじゃ済まない構成でプレイできることになります。
私の場合、Bitwig Studioなので、有機的に変化していくシーケンスやZenology Proだけではできない複雑なモジュレーションを効かせたシンセ音、Model Expansionsの音はBitwig、MC-101で打ち込んだドラムループやサンプリングを重ねて、すべての音にSCATTERやエフェクターで加工してDAWに戻してライブ録音、というような使い方が一番美味しいと気づきました。

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MC-101とDAWの同期はズレが出るので、MC-101とDAW側Zenology Pro等でシンプルな4つ打ちキックとスネアのループを打ち込んで同期運転して、ズレなくなる調整をしましょう(下の図では97.5msに調整している)。

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【まとめ】
操作を覚えるまで大変なのと、初心者にはハードルが高く直感的に使うのは難しい、単体で完結には少々心許ない感はある機材ですが、DAW+Zenology Proと組み合わせると結構なモンスターマシンに思えてきます。
単体でも遊べるポテンシャルは多く秘めているので、テクノフリークな方の夜遊びの相手には良き友になる機材じゃないかと思います。
私にとっては、気軽にテクノトラックをスケッチして、ガシガシ加工して遊べるので大変満足です。

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MC-101とThinkPad E595、Bitwig StudioにNanoKontrol2のシンプルな組み合わせ。これだけでめっちゃ遊べます。

少し時間掛かるかも知れませんが、MC-101設定メモとZenology Proのレビュー・使い方は書きます。

以上です。


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