見出し画像

【改めて考える】車間距離

こんにちは。
自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

今回は、改めて車間距離について考察します。

ネットで「車間距離」と調べると、教習所の学科教本に掲載されているデータを引用したり、2秒や3秒が適切と出てきたりします。また、「車間距離 空けすぎ」という言葉が関連キーワードとして出てきます。

そこで今回は、車間距離を空けなければならない理由、車間距離は乗る車によって変えなければならない理由について考えます。


車間距離を空けなければならない理由

出典:PAKUTASO

車間距離を空けなければならない理由を一言でいうなら、「追突事故や信号無視などのルール違反をしないため」です

至極当然のことですが、車間距離を空けなければ、前の車が急減速した時に自車の減速が間に合わず、追突する可能性があります。

また、前を走る車両等がバスやトラック、高さが高い車だった場合、前方の状況が見えにくくなり、信号無視などの交通違反をしてしまうことも考えられるでしょう。

このような事故や違反をしないために、車間距離は空けておく必要があるのです。

車間距離が短すぎると「車間距離不保持」という違反になる

車間距離が著しく短い場合は、「車間距離不保持」という交通違反になります。

簡単に言ってしまえば、あおり運転(妨害運転)です。

そもそも、交通違反の取締りは事故の危険を未然に防ぐためにあります。車間距離が短すぎることに対する交通違反があるということは、車間距離の長さが事故に関係しているということです。

であれば、車間距離を長く取っておけば事故につながる危険性は下がるということになります。

車間距離が長すぎ(空けすぎ)は違反ではないが・・・

出典:PAKUTASO

車間距離が長い(広く空けている)ことに対する交通違反はありません。そのため、車間距離が十分にあれば、事故につながる危険性は下がるということになります。

確かに、車間距離を十分に取ってれば、前方の交通状況を早めに認知することができ、減速や回避などの対処が早めにできるため、安全性は高いと言えるでしょう。

車間距離をもっと詰めるよう急かすのはいいの?

車間距離を広く空けていたり、空けすぎていると、後続車から「何でそんなに空けてるんだよ?」や「もっと詰めろよ!」と威圧感を感じることがあります。

また、車間距離を詰めるよう後続車が自車に詰め寄ってくることもあるでしょう。

さらに、車間距離を空けすぎていると後続車に迷惑になるという意見もあります。

このような威圧的な態度を取ることや、後続車の迷惑になるという意見は正しいのでしょうか?

確かに、交通の流れを乱すほど低速で走行している場合などは、他の交通の迷惑になるでしょう。

また、道路交通法 第1条には、「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」と明記されていることから、正当な理由がないのにも関わらず、低速走行したり、円滑な交通を妨げたりするのは法律に則っていないことになります。

では、法定速度を守り、円滑な走行をしているのにも関わらず、威圧的な態度を取ったり、もっと速く走るよう急かしたりするのは良いのでしょうか?

ルールを守って円滑な走行をしている車両等に対し、威圧的な態度を取ったり、急かしたりするのは、高圧的な態度のドライバーの方に問題があると言えるでしょう。

そもそも、運転免許を取得するためには、一定の知識と技量か必要で、学科試験と技能試験に合格しなければなりません。

ということは、威圧的な態度を取っている運転者や急かしてくるドライバーも本来のルールは知っているはずです。

それにも関わらず、「この道は捕まることもないし、こっちは急いでるんだから、もっと飛ばせよ!」という攻撃的な態度を取るのは、いかがなものかと思います。

便利な機能を使って対処すればよいのでは?

出典:PAKUTASO

運転中に急かしてくる人には、さまざまな事情があるのでしょう。しかし、その身勝手な事情と個人的な感情を前車にぶつけても何も解決しません。

そんなに急ぐのであれば、高速道路を使ったり、交通状況によって到着時間が遅れる可能性があることを事前に連絡したりしておけばよいのではないでしょうか?

交通ルールを守って運転している人に対して威圧的な態度を取ったり急かしたりしてくる運転者は、何のためにスマートフォンを持ってるのでしょうか?

近年のスマートフォンの多くは音声コントロールやアシスト機能が使えます。このような便利な機能を使えば、携帯電話を持つことなく電話をかけることも可能です。

また、ディスプレイオーディオなどにスマートフォンをBluetooth接続すれば、簡単に電話をかけたり受けたりすることができます。

このような便利な機能を使えば、今自分が置かれている交通事情を相手に説明することができ、到着が遅れること等を伝えることができます。

技術の進歩により、できることが増えたからこそ、これらの便利な機能を有効に使い、円滑なコミュニケーションを取りながら、相手との良い関係を崩さないようにすればよいのではないでしょうか。

車によって車間距離を変える必要性

出典:PAKUTASO

さて、車間距離の話題からだいぶ話がズレてしまいましたが、そろそろ話を戻しましょう。

適切な車間距離というのは、運転免許を取得する時に学びます。一般的な車間距離の考え方は次のとおりです。

・時速60km/hまでは、時速から15を引いた数(m)
・時速60km/h以上は、速度の数字(m)
・前の車から2秒または3秒

これらが一般的な適切な車間距離と言われます。ここでポイントなのは、これら一般的な適切な車間距離は、本来は「〜以上」となるということです。

つまり、一般的な車間距離の考え方の正しい表現は次のようになります。

・時速60km/hまでは、時速から15を引いた数(m)以上
・時速60km/h以上は、速度の数字(m)以上
・前の車から2秒または3秒以上

ただし、この一般的な車間距離の考え方は、あくまでも統計データの平均値に過ぎません。

この平均的な数値が間違っているとは思いません。しかし、正しいとも言えないのが本音です。

車が重いのに同じブレーキ?!

出典:PAKUTASO

少し話がズレますが、車のブレーキ径やキャリパーは、車の性能や車両重量に応じて変えるのがセオリーです。

例えば、大きくて重い普通車やスポーツカー並みの動力性能の車に、軽自動車のブレーキを取り付けたら、減速できず、止まることもできず、ブレーキが破損するでしょう。

そのため、大きくて重い普通車やスポーツカー並みの動力性能の車には、ブレーキ径が大きく、制動力をしっかりと出せるキャリパーを取り付けます。

では、実際の車を見てみてください。
動力性能や車両重量に合ったブレーキが装着されていますか?

ここでもうひとつ例を挙げて考えてみましょう。
その例は、軽自動車です。

とある軽自動車を見てみると、背が高く車両重量が1t前後ある軽スーパーハイトワゴンと背が低く車両重量が800kg前後の軽自動車のどちらもブレーキの径はほぼ同じでした。

これが意味することは、軽スーパーハイトワゴンは背が低い軽自動車より、止まりにくいということです。

車は、車両重量が重くなるほど止まりにくくなります。

しかし、軽スーパーハイトワゴンも背が低い軽自動車も、"軽自動車"という枠組みで作られているため、背が高くなって重さが重くなっても、保安基準をクリアしてしているのです。

軽スーパーハイトワゴンと背が低い軽自動車の車両重量を比較すると、200kg以上の差があるケースも見られます。

これほど重さが違うのに、制動距離が同じと考えてよいのでしょうか?

加えて、人が乗ったり、荷物を載せたりすれば、更に重量が重くなり、車の制動距離は伸びます。

それでも、時速から15引いた数または時速の単位をmに変えた数値や2秒または3秒の間隔で走って問題ないのでしょうか?

少し考えれば、答えは自ずとわかるはずです。

このように、少し考えるだけでわかるのに、車間距離を詰めて走るというのは、非常に危険だと思いませんか?

見ていてヒヤヒヤする時

出典:PAKUTASO

実際の交通社会に目を向けてみると、高性能スポーツカーの後ろにピッタリとくっつく形で、スーパーハイトワゴンの軽自動車や背が高く重量が重いミニバンが走っていることがあります。

本気でブレーキを踏み込めば、スーパーハイトワゴンの軽自動車や背が高く重量が重いミニバンより、走る・曲がる・止まるの性能が高いスポーツカーの方が短い距離で止まれることは明らかです。

それにも関わらずピタッと連なって走っている様子を見ると、本当にヒヤヒヤします。

考えればわかるのに、考えることをやめた人たちが運転している交通社会の恐怖

出典:PAKUTASO

先述したように、一般的な車間距離の考え方が間違っているとは思いません。

しかし、「一般論=正解」だと思うのは危険だと言えるでしょう。

世の中に出回っている車は、それぞれ「走る・曲がる・止まる」の性能が異なります。また、全く同じ車種・グレードの車でも、乗っている人数や載せている荷物の量や重さなどによって制動距離は変わります。

このようなことは、少し考えれば誰にでもわかるはずです。

ましてや、運転免許を保有している方なら、運転免許を取得する際に受ける学科教習の中で、「停止距離(空走距離+制動距離)」や「路面状況や積み荷の重さなどで制動距離が変わる」ことを学んでいます。

それにも関わらず、運転免許を取得することに固執して、試験に受かるための勉強と運転だけを習得して、交通社会で車を走らせていると考えるとゾッとします。

さらに、運転歴が長くなるほど、頻繁に使う知識以外を忘れ、自分に都合がいいように解釈した独自ルールで車を走らせている中堅〜ベテランドライバーも多くいます。

今一度、自分の車の性能を確認し、乗車している人の数や載せている荷物の量・重さを考慮した運転を考え直してみてはいかがでしょうか。

最後に

私は、このnoteを通じて、少しでも考えるきっかけになればと思い、今この文章を書いています。

「こじつけだ!」「そう言われてもしょうがないじゃん!」「誰もルールなんて守っていないよ!」という方も多くいるでしょう。

それならそれでいいです。

ただ、ルールを守っているのに八つ当たりするのはやめてください。

ルール違反してまで身勝手なドライバーに合わせる義務はないので。

そして、「遅い!」「速く行け!」「飛ばせ!」「もたもたするな!」などと思うのであれば、公安委員会をはじめとする関係各所に相談し、ルール変更を検討してもらうよう自ら行動したほうがよいのでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?