やっぱり平野ブラシは名品だと思う
こんにちは。
靴磨きの仕事をしていると、「おすすめの商品はなんですか?」というご質問をよくいただきます。
この時聞かれているのは「おすすめのクリーム」や「おすすめのワックス」のニュアンスでご質問いただくことが多いのですが、
個人的な見解として「育てられるブラシ」と、靴の場合は「サイズ・形状の合ったシューツリー」です。
クリームやワックスは、色の合うものや匂いがきつくないか等、好みも分かれるので「使いやすい=使いたいと思えるもの」を買うのがいいと思います。
とりあえず1個!ということであれば無色のジェル系のクリーム(リッチデリケートクリームやなど)か、革小物にも使えるタイプのクリーム(1909シュプリームやアニリンカーフクリームなど)が万能で失敗しにくく、嫌いな人は少ないかと。バームやオイルは使い方の癖があるので、まず1個!というときはクリーム推しです。
東急ハンズさんやロフトさんなどで実際に手に取ったり嗅いでみて嫌じゃないもの・パッケージや匂いが好きなものを「自分で選ぶ」ことをおすすめしたいです。
でも、今日の記事の本題は「ブラシ」です。
高いクリーム買うより、いいブラシとシューツリーを買った方が絶対おすすめです!
布はとりあえず着古した布とかでいいので、ブラシとシューツリーはケチらないで!後悔しないから!と声を大にして言いたいのです。
女性向けのシューツリーであれば、
サルトレカミエの100EX(22㎝~からありますが、21.5㎝相当の私の靴でもタイトフィットでグッドイヤーウェルトやマッケイの革靴に入れられています。逆に足が大きい女性であれば300EX 38も視野に入れていただくと◎)、アルカ、コロニル(木製シューツリーの中ではお値ごろです)あたりで探していただくのがおすすめです。
1000円くらいの1本ばねのシューツリーは履き口をゆがめてしまうので、靴のハンガー的な用途としては避けていただきたいです!
(ブラシ愛がすごいので、シューツリーはまた別でお話します。)
いいブラシは育っていく
本題、ブラシの話に入ります!
革靴を磨いてお渡しする時に「同じクリームで磨いているのに何でこんなに仕上がり違うんだろう」「魔法みたい!」とお客様から嬉しいお言葉を頂くことがあります。
もちろん、お客様とくらべてかなりの数の靴や革小物を磨いてきていますし、場合によっては今は廃盤となってしまった名アイテムを使っていることもあります。
なので、いわゆる「経験値や裏技も関係ない」というわけではないのですが、個人的に大きな違いは「ブラシの育ち具合」ではないかと思っています。
これが私が使っている靴用のブラシ(平野ブラシ:廃盤品)です。
初めて革靴を買った時に、私もブラシは1000円くらいのものを買いました。革靴を買って大奮発だったので、もうブラシとかクリームは最低限のもので…くらいの気持ちで。
その後、このブラシを使って仕事をすることになり、初めて使った時に仕上がりの違いと使い心地の良さに驚いて平野ブラシを購入しました。
(廃盤が決まった時も買い足し、店舗で備品として使っていたものも引き取りました)
このブラシ、新品がどんな状態だったかというと、
白い毛なんです。(黒い毛のものもあります)
今、私が使っているものは店舗で使っていたものを廃盤に伴って引き取ったのですが、ブラシは12年以上使われているものです。
革靴にクリームを塗って、ブラシで磨き上げる。
革に浸透しなかったクリームがブラシに浸透する。
その繰り返しでブラシは靴磨きの道具として育っていきます。
それを何百足、何千足…。
そんなハードな使用にも負けずにグングン育つブラシはなかなかありません。
安価なブラシではどうしても、段々と毛が抜けたり折れたりして買い替えが必要になってしまいます。折角育ってもリタイアさせざるを得ない事も出てきてしまいます。
しっかり毛が生えていますよね???
めちゃくちゃ育っているんです。忙しい朝、さっとブラシをかけるだけで艶やかになります。
クリームとか道具を入れている箱とかは人に譲ってもいいな…と思いますが、ブラシだけは譲れないです。相棒なので。
「おすすめの商品ありますか?」と聞かれたら、間違いなく平野ブラシをおすすめしたいのですが、かなり前に廃盤になってしまっていて、おすすめしたくてもご購入いただけないというジレンマにずっとモヤモヤしていました。
が。
この度、平野ブラシさんとのご縁で少量ではありますが靴用ブラシをお取り扱いさせていただけることになりました。
私が使っているブラシより、やや短い反り型のブラシの馬毛です。
小判型のように親指と小指で挟んで持ちたい方にも使いやすい形状になっています。
豚毛のブラシはオーバル型のものがあるのですが、この馬毛ブラシと同じ形があったらいいのにな…という妄想を膨らめているところです。
「おすすめのブラシはありますか?」とご相談いただいたときに、「とりあえずこれ1本あれば」とおすすめできる、かつ比較的誰でも買えるブラシが欲しかったので、まさに相応しいブラシ。
ダメもとでご相談に行ったのですが、ご快諾いただいたので平野ブラシしかないオンラインストアを立ち上げました。
このあたりのエピソードもまた追って。
いいものを作っていても、買う人がいないと作ることをやめざるを得なくなってしまう。私ひとりではそんなに買えないし、百貨店や量販店のような単位では売れないのですが少しでも誰かの手元に届くきっかけになればと思います。
まずは、ワークショップやイベントなどで現物を見ていただけるようにする予定です!
既にお持ちの方や、使ったことがある方は、あのもっちり感、コシ、手になじむ質感。
これこれ!と思っていただけるのではないかと思います。(私は興奮しました。笑)
平野ブラシ(平野刷毛製作所)さんの公式オンラインストアではオーバル型の豚毛ブラシも(もちろん反り型馬毛も)お買い求めいただけます。
https://burashi-hirano.shop-pro.jp/?pid=119988853
一生ものの靴とともに一生もののブラシも置いて、革靴や革小物を育てていただけたらなと思います。
いただいたサポートで、タンナーさんのお話を伺いに行ってきます!