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Dir en grey 『GAUZE』

8年前に初めて聴いた時は最悪だと思いました。歌い方も歌詞も気持ち悪いし、所々出てくるギターのフレーズはダサいし、ドラムはチャカチャカうっせーし、しかもなんで曲中でセリフとか入ってんの?意味わかんないわ 嫌なもん聴いちゃったなーという感覚だけが残りました。それが今や聴く度にあまりのエモさに涙ぐむという始末で、本当に人間というものはわからないものですね。そして僕にとって最もヴィジュアル系を象徴する1枚がこの作品なのです。

ディルアングレイの記念すべきメジャー1stとなる本作にはプロデューサーであるYOSHIKIの美意識がチラチラと顔を出しており(Cageでの大仰なストリングスなどに顕著)それは今の耳で聴くと食傷させるところではあります。が、全体的にはメジャーデビューで鼻息の荒いバンドの勢いを封じ込めていて爽快なのです。のちの大躍進が信じられない京さんのいかにもV系的な、清春然とした歌唱法や、俺を目立たせろ!と言わんばかりにペコペコ鳴り続けるToshiyaのベースに青さ恥ずかしさを感じつつ、それでも既に「メタル/オルタナ色の強い薫とハードロック/パンク寄りのDie」という独特のギターアンサンブルが完成の域に達しつつあるのは興味深い。そしてこの頃はまだ作曲者を明らかにしていたのでどの曲を誰が作ったかが一目瞭然なのもポイントですね。薫もいいけどやっぱ僕はDieの作る曲が好きです(Dieのウィキペディア読んでテンションコードの存在知りました)心優しい彼の曲は、まるでバイト先で知り合った面倒見の良い入れ墨バキバキに入ったバンドマンのお兄ちゃんが部屋に遊びに行ったときに「この曲作ったの俺なんだぜ」ってはにかみながらカセットで聴かせてくれる曲みたいです。「予感」の冒頭のピョロロロ〜ンってギターに何度心を洗われたことか…KLONNSでオーストラリア行ったときに限界迎えてシドニーの路上でこれ流しながらみんなで祖国を想って涙したのが懐かしいです。そんな感じです。このアルバムをリアルタイムで聴かなくて本当良かった。(結局自分にはそれに相当するものは訪れなかったけど)僕にとっての青春パンクってこういうのだと思います。

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