コロナワクチンの副反応?お父さん、前立腺肥大の年頃なら、風邪薬(総合感冒薬)の服用前にちょっと注意を。抗ヒスタミン剤や抗コリン剤が混じっていたら、おしっこが出なくなっちゃうことが‥。熱や頭痛には、鎮痛剤や解熱剤を使おう。 〜前立腺肥大と風邪薬と尿閉〜
仕事柄、仕事でワクチン接種の会場で、説明をしたり質問に答えることが多い。普段は滅多に薬を飲むことのなかった中高齢男性の中には、
「俺は、熱なんか普段出さないから、薬なんて飲んだこともない。でもさ、明日もし熱が出たってさ、風邪薬でも飲んでおくから、全然大丈夫だよ!」
と、いう方も多い。その中で、「高齢男性の中には、間違った薬を選んで、尿が出なくなって苦しむ男性患者が増えるかも‥」と、予想せざるを得ない。なので、今回は、間違った薬を選んでしまい、「尿が出なくなって、お腹が痛い」と、救急外来を受診する男性が出ないように、この話をしておきたいと思う。
新型コロナの予防接種では、特に2回目接種の翌日に発熱や頭痛症状の副反応が出ることは、よく知られている。副反応の発熱時のために、鎮痛薬や解熱薬を準備する人は少なくない。お薬によっては、一時的に尿が出なくなってしまうことがあることを前立腺肥大のリスクが出る歳になってきた男性には、ぜひ知っておいていただきたい。
「おしっこしたいのに、おしっこが出ない!」
68歳男性のAさんは、夕方、Aさんは救急車で救急外来に担ぎ込まれた。お腹を押さえ、冷や汗をかくAさんは、苦しそうに時々体の向きを変えた。腹痛のある場所にゼリーを塗り、ドクターは超音波検査をした。そこには、尿でパンパンに膨らんだ膀胱があった。膀胱の尿は、両側の腎臓につながる左右の尿管まで尿で拡張させていた。
破裂しそうなほど膀胱に尿が溜まっているのに、Aさんは、尿が出せない。これが、Aさんの腹痛の原因であった。
Aさんの尿を出すための尿道は、年齢的に細くなっていた。尿道の周囲にある前立腺が大きくなっているためだった。Aさんは、ここ2年ほど、夜間に2回ほどおしっこに起きるのが日常だったが、その原因が前立腺肥大であることは、救急外来で行った超音波検査で確認された。
管がAさんの尿道に入れられ、管から尿がタラタラと出始めてから、Aさんの冷や汗は次第に引いた。「あぁ、和らいできました」管が尿道を通るときは痛かったが、Aさんは我慢した。尿道が細くて管が通らない人もいる。緊急時には、お腹に針を刺して膀胱から尿を出す場合もあるという。
とにかく、Aさんは助かった。
なぜ、Aさんは、急に尿が出せなくなったのか
その日は、起床時から頭痛を感じていた。普段のAさんは頭痛を感じることはほとんどなかった。
「昨日、新型コロナのワクチンの2回目の注射をしたからね。頭痛くらい起きるって知ってたからさ」Aさんは、前日に近くの薬局で風邪薬を買った。「予防接種だって言ってもさぁ、コロナの関係で熱や頭痛が出るんだからさ、風邪薬でいいだろうと思ってね、買っといたんだよ」
Aさんは、午前中に風邪薬を飲んだ。そして、腹痛は午後から徐々に起き始め、夕方には、痛みで体を動かせず、救急車を呼ぶほどになってしまった。
総合感冒薬は、複数の薬の合剤。時には、あなたの状態に合わない成分が入っていることがある。
抗コリン薬と抗ヒスタミン薬は、狭くなった尿道を持っている人には、注意を要する作用を持っている。前立腺肥大と診断されている人はもちろん、60歳以上の男性は年齢的に前立腺肥大の傾向が気づかずに進んでいることも多い。尿道が狭くなっているときに、これらの作用を持つ薬を飲むと、尿閉が起きることがある。つまり、
尿が出にくい。尿が突然出なくなる。
という症状だ。完全な尿閉は、想像以上に辛い。ましてや、ワクチン摂取後で、発熱や頭痛がある人にとって、二重苦、三重苦になるから、軽く考えるのはリスクがある。
前立腺肥大では、抗コリン剤と抗ヒスタミン剤が混じっている薬に要注意!
〜念の為、単剤でできている鎮痛剤、解熱剤を使おう
成分がはっきりしている薬は、薬の副作用がわかりやすいし、副作用を予防することができるから、複数の成分が混じった合剤をつくより、安心である。前立腺肥大のリスクがある人は、特に、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬が入っていない薬を使おう。具体的には、カロナールやロキソプロフェン(ロキソニン)、イブプロフェン、バファリンなどといった薬だ。他にもいろいろあるので、よくわからないときには、かかりつけ医や薬局で相談してみよう。
(*なお、コロナワクチンの副反応に、アセトアミノフェンが良いとする一部の報道がありましたが、コロナワクチンの副反応に対しては、他の解熱鎮痛薬でも、基本的に問題はないです。アセトアミノフェンが勧められるのは、インフルエンザウイルスの感染時の場合です。)
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