~ある女の子の被爆体験記12/50~ 現代の医師として広島駅で被爆した伯母の記録を。”川で見たもの”
ようやく稲荷橋を見つけた。しかし、毎日路面電車に乗って通る、慣れ親しんだ稲荷橋とはまるで違うものだった。橋の上を通る路面電車の線路は、鉄の線となり、飴細工のようにうねっていた。枕木は焼けこげ、焼け落ちた隙間から、見たくなくても真下の川が目に入る。
真下では、お腹がふくれた遺体が2、3体、折り重なるように流されていく。口を大きく開けて苦しそうにこちらを見ている男性と、ノブコは目が合った。ドキリとしたが、口も目も見開いたままのその男性はすでに絶命しており、顔を半分川に浸したまま