夏明け

 第二音楽室=軽音楽部部室にて。

「というわけで文化祭がやってくるわよ!」

 けたたましい声が部室に響く。そんなことは誰だって承知している。
 あっという間に終わった夏休みの次は文化祭、そして軽音楽部的にはライブが待っている。
 ライブは軽音楽部内でいくつかのグループに分かれて演奏する。私は白波先輩のグループ「Clover」に入った。メンバーは私、白波先輩、美鈴先輩、夢だが、一つ問題がある。

「さて、うちのグループのパートなんだけど……」

「私はベースで良いけど、他の3人が……ギターだよね?」

 そうなのだ。美鈴先輩はベースで問題なしだが、他が被りまくりでまともにライブができないのだ。最低リズム隊のドラムは入れたい。とはいえ、他の部員は既にグループが決まっていてサポートは無理だし、私は初心者でギター以外触れたことすらない(なんならギターすら怪しい)。

「俺がドラムやるか……」

「ちょっと待ってください!」

 口を挟んだのは夢だ。まさかの!?

「私、中学の頃ちょっと、ドラムかじってました」

「おお!まじか!」

 何という衝撃発言!ギターとドラムの両刀持ちとは。じゃあわざわざ高校でギターに乗り換えたのか。

「じゃあ、ドラムお願いして良いか?」

「はい!頑張ります!」

「じゃあギターは俺と花崎の2人だな」

 あっさり決まってしまった……。

 夢とすれ違う時、聞こえた一言。

「これで貸し1だからね」

 よく意味がわからなかったから

「今度返す」

って言っておいた。

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