やさしくないから優しくしたい/1月7日(日)〜1月10日(水)

1月7日(日)

今日から3日間、単著に専念することにした。やっと時間をつくれた……と思ったのに、洗濯をしたり、ちょこちょこ掃除したりしてなかなか始めようとしない。何から始めていいかわからないのだ。ずっとそう。しかしなんとか重い腰を上げ、国会図書館のサイトでいくつか文章をダウンロード、印刷する。国会図書館のサイトってこんなに便利になっているのか!

深夜の会議が終って、さあ寝るぞ、という段になって、その時ひどく疲れていたあたしは、敷ブトンが敷かれるやいなや、一人お先にとばかりドデッと横になった。「それかけてくれない」掛けブトンを整えていた一人に、あたしは頼んだ。「図々しい……」その女の口からもれたひとことが、あたしの背筋を凍らせた。
その女も疲れていたんだろう、と想う一方で、もしも頼んだ者が、彼女の男だったら……、と想ってしまうあたしがいて、己れの疑惑の浅ましさに二重に打ちのめされるのであった。

田中美津「女だけの共同体」『講座おんな3 結婚すべきか』筑摩書房、1982年、p.203

いやこれは状況的に考えて、男でも「図々しい」と言われるのではとか、そもそもリブの中で田中だけがこうやって書いて公に文句垂れることのできる特権性が……とかは、いったん措く。田中は「女はやさしくない」という。女はやさしい、という固定観念をひっくり返すような一言だ。わかるなあと思った。わかるなあと思いながら、わたしはいつかのひらりささんの「女の中の一定の女が身につけている「女には優しくしないと」という気持ち、マジでなんなんだろう」という軽くバズったツイートを思いだした。こっちのツイートはわかるなあどころではなく、ものすごく切れ味のいい刃物で真っ二つの切断されたあと3秒後に切られたことに気づいて叫び声をあげたくなるような、そんな気持ちになる。わたしはずっと、特に若い頃や子どもの頃に、女には優しくと思って生きてきた。そしてそう思っている女は、少なくないのだ。そして、同時に女は女にやさしくない。一見相反するようだけど、この二つはつながっていて、表裏一体で、わたしの中で矛盾なく同居している。

1月8日(月)

午前中は大学図書館で資料をコピー。行って帰ってくるだけでくたくたになる。夜はカレーをつくる。あすけん、90点。

1月9日(火)

喫茶店で昨日コピーした資料を読みこむ。そんなに大きな発見はないだろうと思っていても、自分の問題意識次第で、引っかかるところは変わるものだなとしみじみ感じる。読みおわって、ネットでダウンロードできる論文もいくつか読む。杉浦郁子「日本におけるレズビアン・フェミニズムの活動」という論文は、なんとなくは理解していたようなことがもっと詳しくクリアに書かれていてありがたかった。リブとレズビアニズムの関連、リブとレズビアニズムの距離感、レズビアニズムにおけるリブの功罪などがわかってよかった。

家に帰ると段ボール箱ひと箱分の野菜が届いていた。あすけんに登録し自炊熱が高まったノリで有機野菜を2000円分購入してしまったのだ。普段自炊をしない者にとって、生野菜は借金に等しい。中身を確認して、こんなにたくさん……どうしよう……と気が遠くなっていると、おすすめの食べかたがいくつか同封されているのが目に入った。まずはこれを食べてみてください。蓮根のステーキ。オリーブオイルで焼いて塩をまぶすだけ。蓮根ってこんなにおいしかったっけと驚きますよ。云々。蓮根で頭の中がいっぱいになりながら寝る。

1月10日(水)

眠りが浅く、そのぶんだらだらと11時ごろまで眠っていた。起きて、蓮根を焼いていると、玄関のチャイムが鳴る。同居人の着払いの荷物が届いた。立て替えようとしたが、10円玉が足りない。お釣りはありますかと聞くと、ないという。気まずい時間が流れ、根負けした運送会社の人が「じゃあいいです、40円僕が払っとくんで」と言う。ナントカナレと思いながら黙ってみたものの、そういうことを望んだわけではなく、固辞した。そしてエイッと家を飛びだして最寄りのコンビニに駆けこんでこちらで40円を捻出し、なんとかなった。同居人め!と思わなくもないが、昨日野菜を受け取ってくれたのは同居人なので、こういうことは持ちつ持たれつ。

図書館でバイトに必要な本を借りて、その後書評を書くための読書。


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