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純音聴力検査を使わないフィッティングのやり方を知りたい! #048

はじめに

Twitter上でアンケートらしきものを取っては見たものの
みなさんの意見は分散してしまいました。

そこに、まさかの大塚さんからのリクエスト。

そもそものこのマガジンの趣旨は、「大塚さんの質問に答えていく往復書簡」。大塚さんを無視するわけにもいきません。今回も地味に大塚さんの問いに答えていくことにします。

そこで、今回は、

「純音聴力検査を使わないフィッティングの方法を知りたい。」をテーマに、なかがわ流の漫談、いえいえ、講義を展開していきます。

ミニコラム
*HTL=Hearing Threshold Level
聴覚医学会的には「聴力レベル(HL)」のことでも意味しているのでしょうか。(用語集はこちら
閾値はdBSPL。閾値レベルという日本語は、閾値が値を示す用語なのでなんか微妙です。ぼくらがラボで「聴力閾値レベルくらいに設定してね。」と言う時は、「聴力閾値くらいの値かなあ」みたいなふわっとした言い回しで、聴覚生理学のプロなら公の場では使いません。補聴器屋さんの使う言語と耳鼻咽喉科医(聴覚生理学者)とか音響工学者のつかうことばは、この事例だけでなく他にもたくさんあります。フィッティングの議論そのものよりも、使う言語を統一することの方がホントは大事ですが、オージオロジーを聴覚医学に看板変えて、音響学者を追いだして、技能者さんやSTさんを準会員にランク下げして、みたいなことをやるくらいに現場はギスギスしていますから、それぞれにジャーゴンが生まれるのは仕方ないことなのかもしれません(>_<)

純音聴力検査の結果を使わないフィッティング

補聴器フィッティングをはじめたばかりの認定技能者さんや耳鼻科医師は、先輩や指導医から、いかに正確に気導と骨導の値を得ることが重要であるかを耳タコになるほどしつこく教わります。

一方で、言語聴覚士さんは、難聴のお子さんと遊んでるうちに何やらスラスラとそのお子さんの聴力レベルらしきデータを書き出してきて、認定技能者さんに「このデータでフィッティングしていただけますか。」と教えてくれます。

乳幼児のように聴力検査のできない、あるいはやっても判然としない事例はまるでお手上げなのに、小児難聴の専門家である言語聴覚士さんはしれっとそれをやってのけてます。認定技能者さんにしてみれば、言語聴覚士さんってちょースゴイな訳です。

このオージオグラムのデータなしでの補聴器フィッティングは、しかし、言語聴覚士さんにしてみれば、小児難聴の基本のキです。本来は、言語聴覚士だけでなく、認定技能者さんも耳鼻科医もちゃんとわかっておくべきテクニックだと密かに思っているに違いありません。

さて、最近は、プレクリニカルな認知機能低下な高齢難聴者が補聴器外来に相談に来ることも増えてきました。そんな状況考えると、これまでのようにオージオグラム一辺倒で乗り切れるのか、ちょっと不安に感じる人がいらっしゃるのもわからないでもありません。
大塚さんがぼくに今回のような問いを投げかけてくるのも宜(うべ)なるかな、なのです。

そこで今回は、純音聴力検査なしの補聴器フィッティングの鉄板「DSL」について解説することにします。

『えっ?なんでそこでDSL???おかしなこと言ってるねぇ。』
とか
『フィッティングソフトでDSLでやるときも聴力レベルのデータは必ず入れるじゃない。なんで〜?』

と即反応してしまったあなた。
そんな認識のあなたに向けて今回のマガジンは書いていきます。
是非、最後までお付き合いください。

DSLのコンセプトについては、それをきちんと理解できればスキルアップ間違いなしですし、DSLの理解は周波数移転や周波数圧縮が必要な理由や、TENテストが必須の検査になっている理由を理解するための最初の一歩ですから絶対に外せません。

まあ、今回も話はあっちこっちにさまよいながらで、「純音聴力検査のデータを使わないフィッティングの方法」について、いっしょに学んでいきましょう。

DSLってなに?

・Digital Subscriber Line(デジタル加入者線)
・Domain Specific Language(ドメイン固有言語)

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