純音聴力検査 〜どうしたら信頼性のある結果を得ることができますか?〜 #006


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本誌は、補聴器ハンドブック監訳者でもある聴覚評論家中川雅文補聴器専門家大塚祥仁の往復書簡のかたちで発行する共同マガジンです。
日本では基礎的な補聴器フィッティングを学ぶ機会が少ないことを危惧したふたりが、1~3年目の補聴器技能者や言語聴覚士の方に向けて、実践で簡単に役立つ知識と事例を月2回のペースで発信していきます。
みなさんとともに補聴器‪フィッティング‬の基本をイチから学んでいきます。
ぜひ定期購読でお楽しみください。
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 第6回は聴覚評論家中川雅文の担当となります。
第5回で大塚さんから投げかけられた次の質問に応える形で”答えにならない応え”を中川雅文からお送りさせていただきます。

中川さんへ質問
一般的に国内では、防音室とヘッドホンを使った聴力検査が行われているようです。
僕自身は現状ヘッドホンを使っています。
つまりヘッドホンでいかに信頼性のあるデータを得るかに日々腐心してます。
必要に応じて現場では、補聴器をヘッドホンの代わりにそこから出力させるやりかたで検査することもありますが、その妥当性については勉強不足でよくわかっていない部分もあります。
あと気になっているのは、Dead Region(不感領域)のことや、耳鳴りや認知症といった症状を伴う人の時の検査、どういう注意をしておけばきちんとした検査だと言い切れるのかいつも不安材料となっています。
信頼性を高める工夫ってなにすればいいのでしょうか?

前回の大塚さんのお話、聴力検査のピットフォールに関するご自身の経験も交えた非常に含蓄に富んだ話題で楽しませてもらいました。
ここまでわかっているならもうこれ以上追加する話もないでしょ。
と思っていたにも関わらず、彼からは
『信頼性を高める工夫ってなにすればいいのでしょうか?』
なんてガチで弱気な発言。いったいどうしちゃったんでしょう。

経験も実績もある彼が『信頼性が・・・』と悩むそこに潜む問題点とは・・・


補聴器販売の現場での聴力測定と医療機関の聴力検査。呼称の違いこそあれ、やっている内容は同じはず。診療情報提供書を受け取り、添付されている純音聴力検査や語音聴力検査の結果を確認しながら、店舗で改めて行う聴力測定。そこになにか違いがあるのでしょうか。おそらくはその微妙な差こそが大塚さんの不安の原因ではないかなとぼくは考えました。
そこでまずは、店舗で行なっている聴力測定と医療機関で行なっている聴力検査についてどんな違いがあるか、ひとつひとつ確認していきましょう。

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