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隠し子の叫び-父との再会物語#9 エピローグ

   私はこの自伝の大半を2021年に書き上げ、これまで少しずつ加筆修正を行なってきた。現在2024年5月。この自伝の内容を大きく変える気持ちはないが、二つの出来事を付記しておきたい。
   第一の出来事は、2024年5月17日「共同親権」の導入を柱とする民法等の改正案が参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立したことだ。この改正法は2年以内に施行される。この法案によれば、父母の協議によって単独親権が取得され、協議が成されない場合は家庭裁判所が親権者を決定する。DVや虐待が認められた場合は単独親権が維持されることになる。DVの認定方法が明確に説明されていないことや法律的強者が親権者になる可能性もあることから、この「選択的共同親権」の法律は、日本政府が巧妙にわかりにくく仕立てたものであると専門家の間で疑問視もされている。私は法律の専門家ではないので、ここで巧みな議論を展開することはできないものの、両親が実子を養育し、子供が実親と生き別れすることなく親の離婚後も親子関係が継続するという基本的で当然な親の義務と権利、子供の権利が尊重される共同親権が日本国の法律として認められたことは大きな進展であると思っており、単独親権社会、片親疎外症候群の被害者の一人として、いつの日か、この共同親権の概念が、法律としてだけでなく、思想や倫理としても日本社会に根付くことを強く願っている。
   二つ目の出来事は、昨年秋に私たち家族の再会が実現したことだ。姉、母、父、そして私が半世紀ぶりに再会したのだ。姉と両親は日本で顔を合わせ、私はビデオ通話で参加した。驚いたことに、その日は私の出産の翌日で、病院にいた私はビデオ越しに家族から祝福を受けた。半世紀後の家族の再会と私の出産の日が重なったことは大変奇遇であり、象徴的であった。  
   父と母は共に私を育ててくれるはずだったが、運命はそれを許さなかった。その結果、私は幼少期に理想的な家庭生活を送ることができなかった。夫も幼少期苦労をした。だからこそ、私たち夫婦は、私たちの結婚生活がどんなに困難なものになろうとも、生涯添い遂げるため、互いに尊重しあい、50代で奇跡的に授かったこの新しい命を大事に育てながら、親として成長していきたいと思っている。そして、たとえ離婚することになったとしても、私たちは子供の幸せのために、必ず共同養育と共同親権を選択するつもりである。高齢で親となった私たちが、異文化の中で子育てをするのは容易なことではないが、この使命を果たすために私たちはベストを尽くすつもりだ。正に私たちの赤ちゃんは、新しい命、希望、光の象徴であり、私は今後も母親として、心理士として、社会活動家として、日本の真の共同親権社会の実現に、海外諸国の子供たちの心理支援に貢献できるよう、精一杯努力していきたいと思っている。

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