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『医師が解説』 NMNとは ④二重盲検無作為化比較試験 結果

10週間のNMN投与により、末梢血単核球中のNAD量の有意な増加、さらにNMNの代謝産物である
N-methyl-2-pyridone-5-carboxamide
および
N-methyl-4-pyridone-5-carboxamide
の血漿濃度の有意な増加を認めました。

大腿四頭筋においては,NMN投与により定常状態のNAD濃度の変化は認めませんでしたが、
N-methyl-nicotinamide
N-methyl-2-pyridone-5-carboxamide
および
N-methyl-4-pyridone-5-carboxamide
濃度の増加を認めました。

このことはヒトにおいても10週間のNMN投与により体内のNAD合成系が賦活化されたことを強く示唆しています。

NMN投与は、体組成(体脂肪量,腹腔内脂肪量,肝臓内脂肪量)、空腹時血漿中の糖、インスリン、遊離脂肪酸濃度に影響を与えませんでした。

NMNはインスリンクランプ中の骨格筋への糖取り込み能、すなわちインスリン感受性を約25%増加させました。

このNMNによる骨格筋のインスリン感受性促進効果は、約10%の体重減少もしくはチアゾリジン系の経口血糖降下薬投与の治療効果とほぼ同等で臨床的にも意義のある効果です。

その一方で、NMNは肝臓および脂肪組織のインスリン感受性には影響を与えませんでした。

骨格筋インスリン感受性元進の結果に合致して、NMNは糖取り込みおよび筋肉リモデリングを制御するインスリンシグナルの主要構成因子であるAKT(セリン473、スレオニン308)及び、mTOR(セリン2448)のインスリン刺激下のリン酸化反応を元進させ、AKTおよび mTORの総タンパク量も有意に増加させました。

NMNはインスリンクランプ中において、platelet-derived growth factor(PDGF)シグナル及び、その下流に位置するコラーゲン・細胞外基質などの筋肉リモデリングに関与する遺伝子群の発現量を増大させることが明らかとなりました。

NMNはPDGF受容体β(PDGFRβ)、骨格筋中のペリサイト(周皮細胞)マーカー(CD90, CD109)の遺伝子発現を有意に増加させました。

NMNは筋原性PW1陽性問質細胞(PIC) の機能的マーカーの遺伝子発現を増加させ 、10週間のNMN投与が骨格筋において筋原性細胞集団を増やし、PDGFシグナルを増強することを示唆しています。

PDGFRβを介したP D G Fシグナルは、筋肉や他の細胞でインスリン刺激下のA K Tのリン酸化及び糖取り込み能を促進することが報告されています。

NMNは骨格筋のミトコンドリア呼吸能、握力、また大腿四頭筋易疲労性などの筋肉機能には影響を与えませんでした。

この比較試験によりNMNが骨格筋のインスリン感受性およびインスリンシグナルを促進することが明らかとなりました。

参考文献:
Geriatric Medicine (0387-1088)59巻7号 Page693-698(2021.07)

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