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協生農法@ガイナーレ鳥取〜1年で砂丘から大収穫祭へ

『腸と森の「土」を育てる---微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)は、お陰さまで版を重ねております。
全国にお声かけ頂き、ありがとうございます。

協生農法(シネコカルチャー)

書籍の4章にも詳しく概要を説明しております、sonyCSLの研究・論理体系化・実践している協生農法(シネコカルチャー)
昨年、2021年春に、sonyCSLの指導の下で、鳥取県で愛される地元Jリーグ・ガイナーレ鳥取のYAJINスタジアム敷地内で実験圃場をはじめました。
圃場開墾から1年目種まき〜夏の様子は以下に。

協生農法(シネコカルチャー)とは、「農業」の枠組みを超えた、「拡張生態系」。差し迫った環境問題は自然に任せていては回復不可能な臨界点を突破している現状ですが、元凶の1つともなっているのが農業や畜産の問題です。
協生農法は、農業を超えた活動であり、人為により自然を上回る生物多様性を実現し、地球の回復にとって必須の表土の再生を実現する画期的な方法です。
書籍に詳しく、9項目分、かなりの熱量でご紹介しておりますので、ぜひご高覧ください。

Sonyコンピューターサイエンス研究所・オープンハウス2022
”Synecoculture : 社会実装に向けた取り組み”
(アーカイブ視聴)
こちらでも、私たちの取り組み事例をご紹介しています。

砂丘からまさかの大収穫祭へ

さて、実験圃場を開いたガイナーレ鳥取のYAJINスタジアムのある敷地は、実は、もともと砂丘です。
鳥取県といえば、鳥取砂丘が有名ですが、米子市のある弓ヶ浜半島は、なんと半島全体が砂地で、半島の真ん中は砂丘状に盛り上がっていた場所。
その昔、日野川という一級河川の上流の中国山地では、たたら製鉄が盛んで、砂鉄を洗うかんな流しで砂がどんどんと下流に流れ、半島を形成したという経緯。
もののけ姫のたたら場の舞台は、まさに中国山地なのです。
砂の上に無農薬の芝生のサッカースタジアムがあります。

YAJINスタジアム

圃場を開いたスタジアム脇も、まるでビーチのような砂地でした。
昨年2021年4月の圃場開墾の様子を見てください。

生物活動のないツルツルの砂地。
こんな場所、なかなか日本の他のエリアではお目にかからないですね。
写真右手のエリアAは、上にひいてあった人工芝を剥がしたので、草一本なし。
写真左手のエリアBは、オオアレチノギクやよもぎなどの痩せた土地に生える雑草が生い茂っていましたが、最初の段階では全て刈ってからスタートしました。
協生農法(シネコカルチャー)は、無農薬・無施肥・不耕起で、雑草も生かしますが、最初のスタート時は、雑草を刈って耕してからスタートしました。
ここに、100種類以上の種苗を一気に導入して、多様性を高めて、混生密生させることでレジリエンスを高めて拡張生態系を構築していきます。
その後の変遷は、以下から。

土も形成されていないこんな乏しい砂地でちゃんと収穫できるのか。
実は、始めた我々も不安でした。
協生農法(シネコカルチャー)の実績として、西サハラの砂漠地帯ブルキナファソで、1年で砂漠を緑化し、生産高15~40倍になったという画期的なものがあります。
ただ、西サハラは通年太陽が燦々と照り付けている。
一方で、ここ鳥取県米子市は、冬には雪が降る山陰です。
ブルキナファソで上手くいっても、日照の少ない山陰の砂漠で上手くいくのだろうか・・・という一抹の不安があったのです。
それに、土にもなっていない微生物活動の乏しい砂地ということは、栄養にも乏しいのではないかと・・・。

ところが、です。
多様な昆虫活動が見られるようになると同時に、ミネラル味の濃い立派な野菜が収穫できるようになったのです。

特にヒットはミニトマト。
味が濃くて美味しいミニトマトが、地生えにしていたら地熱が暖かいせいか、11月頃まで次々に収穫できました。

キャベツは最大1.5キロの大玉に。
青虫はなぜか、真ん中の玉を食べません。
周りの葉っぱを食べてフンをして、それが雨で中心に流れることで、真ん中の玉の栄養になって、玉が大きくなっているようです。

カリフラワーも立派なサイズ。
(青虫は手乗りで可愛がれるようになったのが私の変化!)

ブロッコリーは、真ん中を収穫した後も次から次へと傍から伸びてくるので、冬から春にかけてずっと収穫ができます。

人参は、1本が御神木化するほど巨大になりました。
人参は根っこを食べるものというイメージがありましたが、収穫し続けられる葉っぱが美味しい!
特に、ニンニクとアンチョビ、オリーブオイルで、人参葉のジェノベーゼにしたり、アヒージョに加えるのがおすすめです。

こちら、鹿肉の煮込みに、人参を丸ごとグリルして添えました。
香りが高くてとても美味。

そして、冬。

今年の大雪で、圃場はすっぽりと雪に覆われました。

この間も、雪の下で春を待つ植物達。

蠢いていた昆虫達も休眠して、静寂が訪れました。
しかし、冬もネガティブではありません。
雪の下で有機物の分解が進み、土が作られていく期間です。
これから、冬を越すごとに土が豊かになっていくことを思いながら、春を待ちます。

1年目の反省から2年目へ

協生農法(シネコカルチャー)は、実践ありき。
重要な種苗導入時はリアルに、月1回はSonyのテレプレゼンスシステム「窓」を使った遠隔指導をして頂きながら1年間実践してきました。
私は農業素人ですが、ガイナーレ鳥取からは普段から無農薬の芝生の製造や管理をしておられる野口さんや兼業農家でもある音田先生が一緒に管理して下さっていました。
でも、協生農法(シネコカルチャー)という方法は全員が初めてだったので、どこまでほったらかして良いのかなど諸々検討もつかないところからのスタートだったので、1年目は色々と反省点もありました。

  • 荒れ地の雑草・オオアレチノギクとメヒシバの猛威
    元々雑草がおおい茂っていたエリアBは、夏になるとオオアレチノギクとメヒシバが猛勢しました。
    1年草は1年ごとに枯れて土をつくることに役立ちますからネガティブなだけではありませんが、あまりにも同種の植物が猛勢する場合には多様性低下を招きますし、背の高いものが密生すると日陰になり過ぎてしまいます。
    今年は小さいうちに抜いて勢いを減らそうと思います。
    ただし、初期に我慢すれば、植生の遷移が進めば、これらの雑草から次の段階の雑草に移っていくため、数年の辛抱とも言えます。

  • 砂が露出した場所が真夏の太陽で灼熱になった
    エリアAは、元々雑草すら生えていないビーチのような砂地でした。
    種苗導入だけでは、表面を覆いきれずに、太陽の照りつける真夏には砂が焼けて灼熱状態になってしまいました。
    こちらではむしろ、ビーチのような砂地に生える雑草・コマツヨイグサが覆った部分もあります。コマツヨイグサは外来種で、在来種と競合したり抑制したりする種ではありますが、表土が露出するよりはマシという判断で、1年目はそのままにしました。
    露出した部分には、刈った草で覆い、雑草マルチにしました。
    野菜の株元に刈り取った雑草を敷いてあげることを雑草マルチと言います。
    協生農法(シネコカルチャー)では、種苗以外のものを外から持ち込まないというルールがありますが、系の中にある植物を刈り取って土を覆うことは問題ありません。

  • ばら撒き過ぎて芽が出ても区別がつかない
    初年度100種類以上の種を導入したのですが、協生農法(シネコカルチャー)では種をミックスして撒きますので、目の区別がつかないと一体何が生えてきたのかさっぱり分かりません。
    どこかにサンプルとして札を立てるなどして同種ごとに撒くエリアを作った方が、後から困らないなと反省しました。

  • ホームセンターだけでは多様性がなかなか増やせない
    初回は種苗を事前に準備する暇がなかったので、直前にホームセンターで購入しました。
    ホームセンターにある種類だけでは、一般的な食用の種苗などが多いので、多様性がなかなか増やせませんでした。

  • 多年草の導入が少なかった
    1年草だけで多年草が少ないと、1年毎に1から導入し直すことになります。
    多年草のハーブ類などを増やすことで、多年草の草を制することもできます。

  • 固定種や在来種、野生種を入れられなかった
    1年目は種苗を事前に準備することができなかったので、固定種や在来種、野生種を手にいられませんでした。
    固定種や在来種は、野口種苗他ネットショップでの通販や地域のシードバンカーから譲ってもらうなどして手に入ります。
    春や秋の種まきシーズンは、場合によって手元に届くまで2週間から1ヶ月程度かかることもありますから、逆算して早め早めに準備する必要があります。
    固定種や在来種、野生種を導入したら、2年目からは種をとって保存することができますから、それを大切に保存すると良いですね。
    野草や薬草は、インターネットや地元の道の駅などで手に入ります。
    2年目の準備に、地元大山の麓にある自然生活という通販サイトで購入しました。

  • 100平米でも管理しきれない
    100平米の小さな敷地に14の畝を作りました。
    仕事の片手間に管理するには、案外広かったのです。
    1畝、2畝であれば、もっと丁寧に管理してあげられるので、整えられたような気がします。
    丁寧に管理すれば、2畝で十分に1家庭分まかなえるように思います。
    でも、14のエリア、それぞれに条件が違い、この畝では育たないキャベツが、この畝では爆発する、なんてこともありますから、一概には言えません。

そんな反省を踏まえながら、2022年4月2日に2年目の種苗導入をしました。
続きは、次回・・・。

おまけ)ヤギが来た

ガイナーレ鳥取の芝生担当・野口さんがずっと山羊を飼いたいとお話ししていました。
3月末、急に「山羊、引き取ってくれませんか〜?」とご連絡があり、奥大山から
山羊2頭がやってきました。

ボブ(7歳)とエルサ(8歳)
ボブくんは、すぐに頭突きをしてきます。
ガイナーレでは食べられる芝生を育てているので、芝生食べ放題。
圃場から、刈った草も食べ放題。
本当によく食べます。。。
家畜を育てるためにジャングルが切り開かれ、穀物の大規模モノカルチャーで土壌劣化と砂漠化、生物多様性減少、水系の汚染が進んでいる問題。
大量に食べる彼らを見ていたら、さもありなんと実感します。
ガイナーレでは、彼らが草を食べ尽くす以上に大量の草がありますから、管理放牧的に移動させたいのですが、ボブくんが嫌がって頭突きをするので移動も一苦労です。
ちびっ子たちのアイドルになる日は、まだ先かなぁ、、、。
ちなみに、腸に炎症を起こし、ペプチドが依存を起こすA1カゼインフリーの山羊ミルクでシェーブルチーズを作ってやろうと目論んでいたら、エルサちゃんはお乳が出ない種類だと。
ちょっと残念。


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