20200731(普及版)夏に見たい映画「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」批評5番勝負+1 先鋒「何も始まっていない状態」のワクワク感と無責任
本企画は、2013年、大分の盟友エトジュンと運営していたブロマガ「無頼派メガネ」で連絡した企画を2020年の味付けで再掲載したものです。
企画説明
第1回の無頼派メガネのポッドキャスト内でも語りましたが、WEBコンテンツは書籍や映画などの媒体などに比べるとどうしても軽く扱われる傾向にあるように思います。
顕著な例は、書籍や映画などは「何度も読み返したくなる作品、見返したくなる作品」というカテゴリーが存在するのに対して、WEBコンテンツは一過性、刹那の瞬間に価値を消費されているように感じます。
しかし、現在は書籍にしても映画にしても、商品の入れ替わりが急速すぎるために、トレンドに敏感な人々ほど、一つの作品を読み返したり見返す暇がなく、書籍や映画などもWEBコンテンツ同様に、刹那の瞬間に価値を消費されていくようになっています。
そこで、今回は、エトジュンがポッドキャスト内で語っているように
「自分たちが作品を使って、教養を体現する」ための企画を考えました
それが、今回の
「夏真っ盛りに見るビューティフルドリーマー批評五番勝負!!」です。
単純な話で、私が五回に渡って、1984年に公開された劇場版『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』を5つの視点から批評していきます。
一つの作品でも、作品のレベルや深さによっては何度見ても新たな発見が出来るという事を自分の批評を通じて、証明するつもりです。
ビューティフルドリーマーとは何か
さて、ご存知ではない方もいらっしゃるかもしれないので、先鋒との勝負として、皆様にまず、ビューティフルドリーマーのご説明をしようと思います。
1984年に製作された映画で、高橋留美子氏の『うる星やつら』の劇場版第二作。
監督は、後に、『攻殻機動隊』や『パトレイバー』、最近であれば『スカイ・クロラ』でお馴染みの押井守氏であり、彼の初監督作品でもあります。
(私が作ったあらすじ)
お馴染みのうる星やつらの面々が住む、友引町。友引高校はまさに、学園祭前日の喧騒に包まれている。だが、それはうる星やつらにとっての日常であった。
「明日は学園祭の当日」 繰り返されるこのフレーズ。終わることのない文化祭前日。
友引高校、友引町に異変が起こり始める。身近な人々が消えていき、町は荒廃し、ただただ、自活して生きることだけが至高の目的となる。
その異様な世界は一体何なのか、そしてその世界を作り上げたのは誰なのか。
何より、日常がずっと続く事と、時が進まない事は同じ事なのか。
全ての疑問にアンサーを返す一作である。
(私のあらすじ終了)
あえて、あらすじでストーリー全てを書く気はありません。皆さんには100分ほど時間を頂いて、本作品を見ていただきたい。
その上で、先鋒の批評を軽く読んでいただきましょう。
学園祭前日という、日常の中の非日常
高校時代や大学時代に誰しもが一度は関わったことがあるであろう、学園祭。私も高校2年生の時、母校の文化祭実行委員長と生徒会長を兼務させていただき、周囲の方の多大なご尽力をいただいたので、文化祭の喧騒に関しては経験があります。
おおよそ、予定通りには行かないもので、というか学生が組んだ予定は気分みたいなもので、きちんと運用できるはずもなく、だいたい最後の一週間が勝負といったことが多いわけです。
そのクライマックスである学園祭前日は日常の仲間たちと過ごす非日常の、最も顕著な例かもしれません。
しかし、どうして学園祭の前日なのでしょうか。
おそらく、それは「何も始まっていない状態」を表現していて、それを本作品中のあたるとラムの関係のメタファーとしても用いられているのでしょう。
「何も始まっていない状態」のワクワク感と無責任
「何も始まっていない状態」は言い換えれば、「未来に対して可能性を保有しながら、ワチャワチャしている状態」とでも言いましょうか。
未来が確定する瞬間、今回であれば、学園祭の初日にあたります。その瞬間まではまだ時間があるが、その未来に対して向き合うというよりも、ただ喧騒の中で時間に弄ばれている。
これは、確かにワクワクするし楽しいけれども、未来に対しての無責任な姿勢とも言えるわけです。
だからこそ、最後のシーン、ある少女がこう口にします。
「責任取ってね」
後にも先にも、この言葉ほど重たい、「責任」という言葉を映画などの作品で聞いたことはありません。
竹に例えるなら、成長ばかりでなく、節目を作ることにきちんとエネルギーを割いていく。その節目が、次の成長への土台となるけれども、節目を作っている間は空回りを感じたりもします。
そこに真摯に向き合う。10代・20代の頃には「何やねんそれ」と思っていましたが、30代でようやく、「それが大事」と気づけるようになった時、ビューティフルドリーマーは懐かしい青春の1ぺージとしても味わい深い作品となります。
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