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海外トンデモ和食とできるかな

随分前の話だが、テルアビブのアジアンフュージョンレストランで天ぷらを頼んだら酢豚の鶏肉版が出てきた。

流石に頭にきて、ウエイターを呼びつけて私は日本人だがこれは我が国では天ぷらとは呼ばれないと半ばキレながら抗議したものの、悪びれもせず「うちではこれがテンプラなんだよ」と返され、更に同席していた仏人の同僚が追い討ちをかけるように「前に別のところでテンプラ頼んだらこれが出てきたわよ」と参戦し日本軍撃沈。同僚、庇えよ私を。

そうですか、私がおかしいんですねと仕方なく酢豚ならぬ酢鶏を食べながら、確かに鶏肉は衣をつけて揚げられていて、そこが彼らの主張する「テンプラ」的なポイントなんだろうなと考えていた。尤もその後、炒めた野菜やパイナップルと甘酢で絡められてしまっているのだが。そもそも肉だし。

日本料理とは名ばかりの奇天烈な料理を多く目にすることが多い海外生活、どうしてそうなる?と頭を悩ませていたが数多く目にすると何となく勘違いの法則も分かってくる。何を以ってその料理をその料理たらしめるのか、その認識ポイントがズレているのだ。イスラエルじゃ炊いた白米の集合体とノリのコンビネーションはスシ。だからこの法則でいうとおにぎりだってスシ呼ばわりだ。実際おにぎりはスシのバリエーションだと思っている外国人は多い。義姉もそうだった。

また先日友人が訪れたアジア料理屋で出てきたすき焼きの話をしてくれたのだが、原型は留めていなかったものの確かにタレはすき焼きのタレの味だったそうだ。なんとすき焼きのタレで味付けていればすき焼き呼ばわりの暴挙である。

日本食を日本食たらしめる構成要素が正しく外国に伝わっていないのがそもそもの間違いの発端で、それに長い時間をかけて更に勘違いのスパイスが振りかけられて海外のトンデモ日本食は生まれるのだろう。もう修正不可能なレベルで海外の日本食は独自の発展を遂げているので諦めるしかないとは分かってはいるのだが。

ところでやはりもう5年以上も前の話だが、イスラエルの会社で小腹が減ったのでおにぎりを食べようと思い、海苔は食べる直前に巻きたい派の私はオフィスのデスクでいそいそとおにぎりに海苔を巻いていたのだが、突如隣に座っていたチリ人が「それは・・・ゴンタの食べていたアレ!それ何なの?」と叫んでポカンとしてしまった。ごんた?

聞けば彼女が幼い頃チリでは「できるかな」が放送されていて楽しみに見ていたのだそうだ。ああ、ゴン太・・・確かにウホウホおにぎり食べてたな。ママにゴン太の食べてるアレを作って!とお願いして困らせたことがあるのよ、こんな食べ物なのね、長年の謎が解けたわ、と笑っていた。

そんな訳のわからない食べ物かどうかすら不明なものをリクエストをされたお母様もさぞ困ったことだろうと想像しながら私も笑ってしまった。おにぎりが南米じゃ謎呼ばわりだと思えば、イスラエルではスシ呼ばわりされるだけマシなのか。悲しいかな世界の日本食に対する認識は、まだまだこんなもんです。

※ 写真はテルアビブの和食店、「KITTO KATTO」の巻き寿司と刺し身

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