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プロハンドボール選手が語る、日本とチェコの”ここが違う!”

今回は新たに”アスリートライター”として契約いただいたチェコのSKKP HANDBALL BRNOというチームに所属される、松岡 寛尚選手に執筆いただきます。
松岡選手はJHL 2022-2023シーズン得点王、ベスト7を獲得し、今季からチェコのリーグでプロハンドボール選手として活動されています。

今回は松岡選手の視点から、日本とチェコの違いについて解説いただきました。海外でのハンドボールに関心がある人も、そうでない人も、非常に読み応えのある作品となっておりますので、是非お楽しみください!

*本記事内容を許可なく第三者へ公開すること、また本記事の内容を転載することは禁止しております。場合によっては法的措置を取らせていただきますのでご注意ください。

それではどうぞ!

経歴

岩出ハンドボール教室(和歌山)→大阪体育大学附属中学校(大阪)→藤代紫水高校(茨城)→法政大学(東京)→大崎電気(埼玉)→SKKP HANDBALL BRNO(チェコ)
よく言われるのですが自分の経歴はカテゴリー毎にどこかに行ってます。(笑)

ヨーロッパの人間の価値観と考察

まずハンドボールの違いをご紹介する前にヨーロッパで三ヶ月生活をしてみて分かったヨーロッパの人の価値観、その中で自分が感じたことを書いていきます。そしてこれは日本とのハンドボールの違いにも繋がりますので楽しみにして見ていただければなと思います。
今からご紹介するのは私自身がこの3ヶ月間でチームメイトと会話したり実際に目で見た情報を元に感じた事であくまで考察です。
言語化すると
「人生を楽しむために必要な手段が仕事なだけ」
「他人の意見は関係ない」
「優先順位の1番は自分自身」

という感覚に近いのかなと思いました。

人生を楽しむために必要な手段が仕事なだけ

チェコに着いた初日に食料調達のため近くのスーパーに買い物に行った時のことです。
入り口入ってすぐのところにレジがあるのですがそこで店員さんが椅子に座って携帯を触っていたのです。日本ではまず考えられない景色だと思います。
これはこのスーパーだけではなく空港、他の大型ショッピングモールやコンビニのような小さなお店でも同様でした。他のお店では携帯どころかYoutubeを見ていたり、枕を机に置いて体勢を崩していたり、恐らく友人と思われる方と電話しながら接客していたり、レジに人が並んでいても客とレジの店員さんがしばらく談笑していたりと、まるで何かのついでに仕事をしているかのようで、日本人の仕事へ向き合う姿勢とは全く別物でした。

このことをチームメイトに驚いたよと伝えると、とても不思議そうな顔をして「何故仕事中だからと言って携帯を触ってはいけないの?」「仕事に我々の自由を奪う権利はないよ」「仕事なんて辛い事なんだから楽しみながらやらないとね」と言いました。目から鱗でした。
しかし確かに日本ではまるで「仕事があるから人生がある」という様な雰囲気があるように感じます。

例えば日本では仕事中に談笑していたり警察官の人が服を着替えずにコーヒーを飲んでいたりすると「今仕事中だから後でにして。」と注意を受けたり、仕事中だからといってコーヒーを飲んでいる姿に違和感を感じる人が多いと思います。
しかしこれが仕事中でなければ違和感は感じないはずなんです。ごくごく普通のことを、仕事というレッテルが違和感を被せているのです。
チームメイトと話をしてみて、日本では本来の目的は生きていくことなのに目的が仕事になっており、まるで法律かのように人の行動を制限しているんだなと感じました。
日本では「お客様は神様だ」なんて言葉があり店員さんの立ち位置は客よりも低くなりますが、よく考えてみると僕達が店員さんに大柄な態度を取り、それに懲りてコンビニやスーパー、レストランがもし潰れた時困るのは私達客側の人間だと思うのです。つまり本来は「店員様は神様だ」ぐらいの方が正しいのではないのでしょうか。
タイムカードを切れば同じ立場の人間に戻るのですから、仕事だからといってお客様なんてポジションを作らずに、買う側も売る側も需要と供給が成り立っているのだから購入者ぐらいの感じでいいのではないかと考えさせられました。
でも確かに仕事が終わった瞬間から同じ人間なのに立場が上とか下になること自体が変ですよね。

他人の意見は全く関係ない

これもまたチームメイトと話をしていて出た話題なのですが、ヨーロッパでは日本でタトゥーがあまり良い風習ではないという事が有名だそうです。
これについて「理解ができない」「なぜやりたいことに他人が関わってくるんだ」「家族でも無い人間の目を何故気にするのか」と言っていました。
例えば髪染やタトゥー、ピアスなどは日本ではあまり良いとはされていませんがこれってよく考えたら変だとは思いませんか?髪を染めたからといってその人の人格や知性は変わりますか?
しかし周りがよく思わないから。悪いイメージがあるからといってしない人は多いはずです。でも見た目だけで判断している方がよっぽど疎かですよね。

特に中学校、高校などは制服で全校生徒が同じ服を着て、校則でツーブロックは禁止などしていますが、これらは大学生になれば拘束されません。そうであれば、中学生高校生だからといってそれを禁止する意味は全くないと思うのです。
私自身もこれに関しては昔から違和感を感じていたので、自分のやりたいことを周りの目を気にする事なく、自由にできるヨーロッパの風習はとても良いなと感じています。

優先順位の1番上は自分自身

ここではチームで活動するなかで感じた事を紹介して行きます。
なぜそう思ったのか実際にあった話をいくつか紹介していきます。

これは合宿での出来事です。8月に4泊5日のハンガリー遠征があり、合宿中は2人1組の部屋で宿泊先にはダブルベッドとシングルベッドが用意されていました。これがもし日本人同士なら開口一番は「どっちのベッドで寝たい?」とか「好きな方選んでいいよ」とかまずはワンクッション入れるような流れになると思うのですがこちらでは違いました。開口一番「このダブルベッドで寝てもいい?」とダイレクトでした。またルームメイトが少し風邪をひいてしまった際も朝の4時頃に風邪薬はあるか?と起こされたりもしました。

これだけ聞くとあまり良い印象は無いと思われても仕方がないと思うのですが、これもまた日本とは違い嫌なことは嫌とはっきりと伝えると快く受け入れてくれます。
というのも、早朝に起こされた事を朝食の時に「寝ている時は起こさないでくれ」と伝えると、とても笑顔で握手をしながら「本当にごめんなさい。次からは気をつけるよ」と言ってくれました。
日本では言いたいことを伝えると少し気まずいムードになる気がします。
またはっきりと嫌と言えない雰囲気があったり、周りの空気を読まないといけない、なんてこともあると思うのですが、こちらでは自分のやりたいことが第一優先なのでそこではっきりと嫌だと伝えても変な空気にはなりません。
まるで日本では意見の譲り合い。ヨーロッパでは意見のぶつけ合いに近いのかなと感じました。


日本とチェコのハンドボールの違い

さて、いよいよハンドボールにおける日本とチェコの違いについてです。

結論から言うと、ほとんど全ての事が真逆と言っても良いのではないでしょうか。

「速攻に行かない」「システム(戦術)が少ない」「応用よりも基礎」「選手同士では絶対に意見聞かない」「監督の指示が絶対」大まかにこんな感じです。

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