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2024年 Cory Wong初来日ツアー!東京2daysライブレポート

記事トップ写真 撮影:@highlow_life

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、54回目の連載となる。では、講義をはじめよう。

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2024年6月3日~6日の4日間、ついにCory Wong(コーリー・ウォン)の初来日ツアーが行われた!

※Cory Wongについて詳しくはこちら👇


Coryは2023年にフジロックで初来日。FIELD OF HEAVENを満員にし、約5000人の観客を集めてライブを大成功させた。

その後、Vaundyのトドメの一撃に参加して、日本での知名度がさらに上昇した状態で今回のツアーが決定。最初は2公演のみの予定だったが、2公演で約2000人ほどのキャパに対して、7000名ほどの応募が来たらしい。

当然チケットが取れないファンが続出し、急遽追加公演が組まれた。来日ツアーは大阪2日間、東京2日間となり――今回の記事は、その東京2daysに参加したライブレポートとなる。

ちなみに今回のCory Wongバンドのメンバーは4リズム隊、5管の9人編成。
メンバー詳細はこちらをご覧いただきたいが、Coryを含めたリズム隊4名は大学時代の友人同士で、2013年からForeign Motionというバンドで演奏していた旧友という関係。

また管楽器隊はプリンスのバンドでホーン隊を務めていたメンバーが中核を担っていることは、知っておいたほうが面白いだろう。

バンドメンバーは相関図中央 
相関図監修:筆者 イラスト・デザイン:@a6666_6666a


今回の記事で扱っている写真や動画は、ガーデンホールの外観以外はすべてライブ当日ものを紹介させていただいている。ぜひとも行けなかった方はその日の雰囲気を知るために、また行けた方も当日を思い出すために活用していただきたい。

それでは、始めよう。


2024年6月5日 恵比寿ガーデンホール

恵比寿ガーデンホール
画像出典:https://gardenplace.jp/rentalspace1/

6月5日、天気は晴れ。暑すぎず寒すぎず、爽やかな初夏の風を感じる日だった。

(ライブ当日の会場外の雰囲気は、こちらの動画に残されている👇)

この日はすでに大阪でライブが2日間行われた後で、Twitter(X)のタイムラインはCoryの動画や写真で溢れかえっていた。また、2日間でセットリストが全然違っていたことが話題となっており、Coryバンドの底知れなさを感じると同時に、果たして今日はどんな曲目になるのか?ということがファンの間で期待を高めていた。

平日で仕事があった方々も多数いらっしゃったはずなのだが――ガーデンホール前は会場前から多くのファンで溢れていく。

初来日ツアー、そしてこれまでのツイートの数々によって高められた期待と熱が、ガーデンホールを包んでいた。


18時に開場すると、ぞろぞろと人がステージ前へとなだれ込んでいく。

そして約1時間待ち――ほぼ時間きっかり、19時からライブがスタートした。ちなみに、バンド入場BGMはShaggyの「Boombastic」。

どのメンバーよりも早くステージに登場するCory。おどけたようなポーズを取りながら笑顔でギターを担ぎ、連日の疲れを感じさせない余裕がそこにあった。

まずはライブイントロとして20th Century Foxのテーマを演奏し、そこから超高速ファンクの「Assassin」へ。まったく出し惜しみをせず、一気に会場のボルテージをマックスへと持っていく。

恵比寿ガーデンホールは音響も良く、約1500名というキャパもちょうど良かった。これまでYouTubeやサブスクで聴いてきたよりもはるかに強い音圧で、Petar Janjicのドラムやホーン隊のサウンド、そしてCoryのカッティングが迫ってくる。

これが生の――これがCory Wongのライブなのである。これはイヤホンでは絶対に体験できない。

続いて、「Let's Go」「Team Sports」「Bluebird」と進んでいく。このあたりはライブ定番曲で、大阪の初日でも演奏されていた。


そこから新曲の「Burning」へと進む。どの曲もホーンが素晴らしく、今回も全曲のホーンアレンジを担当しているMicheal Nelsonの力を感じずにはいられない。

続いて、Vulfpeckの曲「You Got To Be You」。Jack Strattonが作った曲を、Vulfpeck来日前に聴くことができるのは非常に嬉しい! 

撮影:@highlow_life

そのまま、ついに今回のツアーで唯一演奏されることになった「Smokeshow」へ。この曲は今回参加しているサックスのEddie Barbashが原曲でも吹いており、今回ついにそのオリジナルが聴けるのか?と話題になっていた。

イントロも長めで、前の曲のメロディを絡めながら、お得意のジャズとクラシックを融合させたフレーズでアドリブを展開していく。

Coryのソロもこの曲はロックギターのようなフレーズを弾き、また続くKevin Gastonguayのキーボードソロが素晴らしかった。シンセからオルガンに巧みにソロを切り替え盛り上げていき、どの鍵盤にも習熟していることがよく分かる、まさに120点満点のソロ。

続いても、今回唯一演奏された「Cosmic Sans」。Tom Mischとの共作で、もともとはホーンが入っていない曲なのだが、アウトロなどに非常に巧みなホーンアレンジが施されており、ここでもMicheal Nelsonの力が存分に発揮されていた。


そのままThe Fearless Flyersの曲、「Kenni and The Jets」へ。Vulfpeck同様、The Fearless Flyersの曲を来日前に聴くことができる喜びといったらない。

撮影:@highlow_life

この曲はサックスのKenni Holmenとバリトンサックスが交互にメロディやソロを交換しあう内容で、今回のバリトンはDan White(写真右側)。DanはHuntertonesというファンクバンドを率いており、単独で来日もしたことがある凄腕プレイヤー。この曲ではしっかりとその役割を果たし、存分にステージを盛り上げていた。


続いて、ついに演奏された「Home」

Coryのライブではバラードが必ず1曲演奏され、それが「Meditation」とこの「Home」のどちらかになっているのだ。そして私はついにこの曲を引き当てることができた!

イントロはECMレーベルを意識したKenni Holmenのソプラノサックスソロ。そこからテーマが終わると、Coryのソロが始まる。最初は美しいバラードの雰囲気でスタートするが、徐々にファンクのグルーヴへ移行し、バンド全体で曲を盛り上げていく。

Coryも様々なテクニックを縦横無尽に披露し、長いソロでも全く退屈することがなかった。

そして曲のエンディングでは、瞑想的なギターソロへと突入する。ここは完全にガーデンホールが宇宙空間へと旅立ち、非常に幻想的な空間になっていた。エンディングだけでも数分間あり、この「Home」がこの日のハイライトだったのではないかと思う。

ここで終わってもいいのに、まだステージは終わらない。「St. Paul」そして「Ketosis」と続く!


そしてアンコールへ。まずはLouis Coleと共作した最近のライブ定番曲「The Grid Generation」

そしてVulfpeckの「Dean Town」
恒例となるベースライン大合唱になり、この日は幕を閉じた。

6/5 恵比寿ガーデンホールセットリスト



2024年6月6日 豊洲PIT

豊洲PIT

翌日は少し曇りがかってはいたが、気温は高く、半袖で十分な陽気。この2日間は天気にも恵まれていた。

ツアーも4日目ともなると、前日やその前の大阪に行けた者の証として、物販で買えたCory WongTシャツを着てやってくる人がちらほら。中にはVulfpeckのサウナハットや、昨年末に発売されたばかりの青いVulfpeckスウェットを着てくるファンの姿もあった。

この日も18時開場、19時スタート。実際には少し遅れ、19時5分にバンドが姿を現した。

ライブイントロは「Opner」、そこからまたもやアドレナリン全開、骨太ファンクの「Flyers Direct」


続いてはCoryのキャリア初期から演奏されている曲、「Welcome 2 Minneapolis」。この曲ではYohannesのベースソロが炸裂、会場をおおいに盛り上げていた。

そして「Massive」。かなりヘヴィーなグルーヴで、ファンカデリック的なロックギターを弾くCory。ホーンのメロディも呪術的で癖になる。

撮影:@channel_5555


次の曲では、本ツアー初となるゲスト参加。この日の午前中に原宿のFenderショップで共演していたギタリストのReiだ。

曲は前日も演奏された「Bluebird」。Reiは昨年のフジロックでもCoryのステージに参加、その時は「Lunchtime」を弾いていた。


素晴らしいギターソロを披露して、Reiは1曲で退場。バンドは間髪入れずに「Flamingo」へ。このツアーでは、Steely Danの「Black Cow」をイントロに使っていた。

続いては「Sidestep」。こちらはなんと最後の最後に、Rage Against The Machineの「Killing In the Name」のラストフレーズを入れている。このアレンジは以前からやっていたが、この選曲はセンスとユーモアに溢れていると言わざるを得ない。


続いては「Stomping Grounds」。こちらはCoryが大好きなBéla Fleck and the Flecktonesのカヴァー。このバンドのオリジナルメンバー、Victor WootenとCoryがツアーを行った際にCoryバンドの持ち曲に追加された。


そしてここでまさかの、トモ藤田のゲスト参加が!

トモ藤田はバークリー音楽大学のギター科助教授であり、世界的にも知名度があるレジェンドギタリスト。そんな人物がいきなり登場したことで――しかもなぜか「ぼっち・ざ・ろっく!」のTシャツを着て現れたことで、会場は大きくどよめいた。

笑顔でCoryとハグを交わし、「Gumshu」の演奏へと入っていく。


トモ藤田のソロは円熟の内容で、速弾きや高速カッティングのような分かりやすいテクニックで攻めるわけではなかったが、フレージングや音のコントロールはやはり非常に卓越したものがあった。

今回の共演は当日の昼ごろにDMを送り合って急遽決まったらしく、彼らの仲の良さを感じさせる。


トモ藤田も1曲で退場し、大興奮のまま「Direct Flyte」へ。この曲はDan Whiteのバリトンソロが素晴らしく、前日に引き続き大きな存在感を発揮していた。

そのままフュージョンライクな新曲「305」を経て、バラードの「Meditation」へ。前日はバラードで「Home」を演奏したから、今日は「Meditation」だったのだろう。

「Meditation」も前日の「Home」同様、瞑想的なパートがある曲だ。イントロのギターソロでやはり宇宙へ旅立ち、ソロでは熱く盛り上げていく。非常に長い演奏だが、壮大なストーリーを感じさせる素晴らしい時間となっていた。


ここでメンバー紹介を行い、一旦退場。すぐに戻ってきて、アンコールへ。

アンコールはフジロックと同じ曲目、「Assassin」「Dean Town」だった。

「Assassin」ではギターソロがカッティングのみになっており、超高速で完璧なカッティングを披露するのが恒例になっている。4日連続ライブの最終アンコールだというのに、一糸乱れぬCoryの右手は本当に驚異的だ。

そして、今回ツアーで毎晩披露してくれた「Dean Town」も、いよいよラストとなる。会場はベースラインの大合唱に包まれ、いかに多くのVulfpeckファンがここに集結しているかということを思わせた。

最後のテーマも大合唱で――締めはCoryが大きくジャンプして、曲を終わらせる。

こうして今回の4日間の初来日ツアーは、大盛況のうちに幕を閉じた。

撮影:@haseryunosuke
6/6 豊洲PITセットリスト

以上が、東京2daysの流れを追ったものだ。結局、この2日間で被ったのは3曲だけと、改めてバンドのレパートリーの豊富さを感じさせるステージであった。

ちなみに、大阪も含めた4日間のセットリストについては、こちらのツイートが非常に分かりやすくオススメである。

また6月4日、大阪のライブに関してはフル動画がアップされている。



トータルでの感想としては、Cory Wongバンドが完全に脂が乗りきっていて、非常に良い状態、もしかしたらひとつの全盛期にあるのかもしれないというものだった。

実はCoryは来日の前日にソウルのジャズフェスに出演していた。そこから合計5日間連続でライブを行い、それぞれでセットリストを大きく変化させ、またどのライブでも最初の曲から最後までフルスロットルで駆け抜ける。

どのメンバーのソロやバッキングもまったく見劣りすることなく、それぞれの楽器の超一流プレイヤーの集合となっており、しかもそれらが一糸乱れぬ連帯を見せる。ここまでのクオリティーを常に出し続けられる「バンド」が、いったいどれほど存在するというのだろう?

いまのCory Wongを観られたことは、もしかしたら非常に貴重な体験だったのかもしれないし……今後Coryがどのように成長していくか分からないが、もしかしたら彗星が一番光り輝いている瞬間を、我々は目撃したのかもしれない。

例えば1977年のParliamentのように、1978年のBrecker Brothersのように――また1982年のMicheal Jacksonのように。

そして、そんな感傷を打ち破り、まだまだ成長し、新しい姿を見せてほしい。そんなふうにも強く思う。

いずれにしても、今回のライブは、強く胸に残る内容となった。次なる来日が、既に、とても――とても楽しみである。




◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

イラスト:小山ゆうじろう先生

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。「KINZTO」と並行して、音楽ライターとしても活動しています。

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