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Vulfpeckニューアルバム、「The Joy of Music, the Job of Real Estate(2020)」考察&アルバム全曲解説

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、23回目の連載になる。では、講義をはじめよう。


今回は、つい先日に全曲が配信スタートとなった、Vulfpeck(ヴォルフペック)のニューアルバム、「The Joy of Music, the Job of Real Estate(2020)」の全曲解説を行いたい。

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画像出典:https://vulfpeck.bandcamp.com/

今回もいつもと同じく、全10曲のアルバム。

スタジオアルバムとしては2018年の「Hill Climber」以来、Vulfpeckとしてのアルバムリリースは2019年の「Live at Madison Square Garden」以来だ。

Vulfpeckは2011年のデビューから毎年、何らかのアルバムをリリースしており、今作もその「年一回」のペースを守っている作品となる。


さて、今回の「The Joy of Music, the Job of Real Estate(2020)」について。

今回のアルバムは、「収録曲の内容」のせいで、作品としての「テーマ」が分かりにくいアルバムである、と言えるだろう。なぜか?

それは、Vulfpeckのアルバムのなかで、初めて有名曲のカヴァーが多数収録されている、ということ。

さらにそれらの曲が「古いお蔵入りの曲」である、ということ。お蔵入りになっていた曲を、突然まとめてアルバムに入れてきたのだ。

こういったことは、いままで常に最新のレコーディング作品をアルバムに入れてきたVulfpeckらしくない行動、だと言える。

これらについて「年イチのペースを保つために、無理やり発表したアルバムじゃない?」「ただの詰め合わせでしょ?バンド崩壊?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、アルバムタイトルの意味を調べ、また収録曲の背景を探っていった結果、私は違う結論にたどり着いた。それは、

「今回のアルバムは、”継承”というテーマを持った、Vulfpeckの魅力を多面的に紹介した名作である。」というものである。

それを、これから解説していこう。また長くなるが、どうか、最後までお付き合いいただきたい。


タイトルの意味について

まず、アルバムタイトルの解説から始めたい。ここに、「継承」というテーマへのヒントが隠されている。

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画像出典:https://vulfpeck.bandcamp.com/

タイトルは「The Joy of Music, The Job of Real Estate 」。直訳すると、「音楽の喜び、不動産の仕事」となる。

Real Estateが「不動産」だ。

このタイトルは、リーダーのJack Strattonが思いついた言葉ではない。

不動産業を営む、Bert Stratton氏がワシントン・ポスト紙に寄稿した文章から引用されたものである。

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画像引用:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams

Bert Strattonとは誰か?

もちろん、Jack Strattonのお父さんだ。

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右がJackのお父さん、Bert Stratton。画像出典:http://www.yiddishecup.com/blog/2018/06/13/new-york-cutting-session/

(Jackのお父さんはアマチュアミュージシャンでもあり、親子の共演も行っている)


さて。前述したJackのお父さんの記事で、今回のタイトルに使われる「The Joy of Music, The Job of Real Estate 」という言葉が登場したのは、以下の箇所である。

In the ’70s at the University of Michigan, my English professor, Donald Hall, who later became poet laureate of the United States, encouraged me to go into the arts. “What you are going to do,” he asked, “go back to Cleveland and sell insurance?” Well, yes. I went into my dad’s property management business. My dad was the anti-poet: “The arts is one big ego trip,” he said. Which hurt. And still does. I said to him, “Give me five more years.” He said “fine” and waited me out. Five years later I was full time. I’ve been doing real estate for 40 years. Nothing wrong with that, but it’s the job of real estate and the joy of music.

Bert Stratton:1970年代のミシガン大学で、私の英語教授で、後にアメリカの詩人賞を受賞することになったドナルド・ホールは、私に芸術の道に進むように勧めてくれた。「クリーブランドに戻って保険を売るのか?」と 彼は尋ねた。私は頷き、父の不動産管理業に入った。父は詩人が嫌いだった――「芸術は肥大したエゴの旅だ」と言っていた。その言葉を聞くのは辛かった。父のそのスタンスは今でも変わっていない。

私は父に言った。「あと5年くれ 」と。 彼は「分かった」と言って待ってくれたが――5年後、私はフルタイムで不動産管理をしていた。そこから、私は40年間、不動産業をしてきた。何も悪いことではないが、それが不動産の仕事であり、音楽の喜びでもある。(出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/

いかがだろうか。文脈に関係なく、不動産の話から突然、「音楽の喜び」という単語が出てきているように感じるかもしれない。少し補足をしよう。


ここでの「the job of real estate and the joy of music」は、記事の原文を読むと、「job」「joy」だけがナナメ、斜体となり強調されていることが分かる。

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赤線は筆者 画像出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/

斜体をあえて使っていることから、「the job of real estate and the joy of music」は「job」と「joy」をかけた、Jackのお父さんによる言葉遊びである、ということがまず分かる(今回の文章は、本人による寄稿なので、斜体も本人による指定だろう)。

さらに、Jackのお父さんのブログのサブタイトルが「Real Music & Real Estate . . .」となっていたり、同名の動画を自分でアップしていることからも、彼が、「不動産(Real Estate)」と「音楽」を繋げて考えることをたびたび行っている、ということが理解できる。

詩人賞を獲得したドナルド・ホールから教わっていたということからも、Jackのお父さんは言葉選びに意識的であることが分かる。つまり、今回のアルバムタイトルは、いうなれば「父のキメ台詞」なのだ。

さて、では、なぜその言葉が選ばれたのか?


もう一度、記事を読み返そう。

Bert Stratton:1970年代のミシガン大学で、私の英語教授で、後にアメリカの詩人賞を受賞することになったドナルド・ホールは、私に芸術の道に進むように勧めてくれた。「クリーブランドに戻って保険を売るのか?」と 彼は尋ねた。私は頷き、父の不動産管理業に入った。父は詩人が嫌いだった――「芸術は肥大したエゴの旅だ」と言っていた。その言葉を聞くのは辛かった。父のそのスタンスは今でも変わっていない。

私は父に言った。「あと5年くれ 」と。 彼は「分かった」と言って待ってくれたが――5年後、私はフルタイムで不動産管理をしていた。そこから、私は40年間、不動産業をしてきた。何も悪いことではないが、それが不動産の仕事であり、音楽の喜びでもある。(出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/

ここには、重要な情報がいくつも含まれている。


①Stratton家は、Jackの祖父の代には不動産業を営んでいた。

②Jackのお父さんもミシガン大学卒だった。

③Jackの祖父は、芸術に対しての理解がなかった。

④Jackのお父さんは、芸術の道をあきらめ、家業を継いだ。


この中でもっとも重要な話は、④である。Bert Strattonは、芸術をあきらめ、不動産業にその身を捧げた。

しかし――フルタイムの不動産業となった後も、オフタイムでは彼は、音楽を愛するミュージシャンでもあった。


そして、時が経ち――Jack Strattonが生まれた。Jackは両親の影響で音楽を愛し、ミュージシャンになるために自発的に多くの時間を練習に費やし、高校時代にはバークリー大学のサマーキャンプに参加。そして父親と同じくミシガン大学へ進学した。

大学を出てすぐに、JackはVulfpeckを結成。しかし、すぐにVulfpeckは成功することはなく、しばらくはそれだけで生活することはできない時期が続いていた。

同じ記事から、Bert Strattonが、その状況を心配していたことがわかる。

Even though I’m a musician myself, I didn’t steer Jack toward music. I thought real estate, my day job, might be a good fit.

Bert Stratton:私自身が音楽家だとしても、ジャックを音楽の道へと導いたわけではありません。本業の不動産業が向いているかもしれない、と思っていました。(出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/


ということは――今度は、Bert Strattonが息子、つまりJack Strattonに、「家業を継ぎなさい」と言う番だった。

しかしそれは、自身とは異なる結末を迎えた。

I’m glad Jack and his bandmates stuck with music as a career — it’s more than 10,000 hours of practice, for sure. I’m glad I didn’t pester my son to join the family business.

息子とバンドメンバーが、音楽のキャリアを選んでくれて嬉しいよ。彼らは10000時間以上は練習に費やしているからね。息子に家業に参加するよう、強制しなくてよかったよ。(出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/
No risk, no reward — that’s the equation in real estate, music and life. So if your son or daughter tells you that he or she wants to go into the arts, or to perform, what do you say? If they practice for hours upon hours, pay their dues and have the talent, you have no choice. You say: “Go for it. You can sell insurance later.” You can sell it for 40 years.

ノーリスクだが、報酬もない。これが不動産でも、音楽でも、人生でも同じことなんだ。だから、あなたの息子や娘が「芸術の道に進みたい」と言ったり、それを実行すると伝えた場合、あなたは何と答えますか?息子たちが莫大な時間をかけて修練を積み、才能を持っている場合、あなたには選択の余地はない。あなたは言う――「頑張りなさい。保険は後でも売れるから。40年は売れるよ。」(出典:https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/05/30/my-son-is-a-sort-of-rock-star-im-glad-i-didnt-discourage-his-dreams/


Bert Strattonは、息子に家業を強制しなかった。Jackが成功するまでそれを見守り、そのおかげで今や、Vulfpeckは世界的に成功したファンクバンドへと成長したのである。

そして、彼は息子が芸術の道、音楽の道へ進んだことを誇りに思っている。もし失敗しても、そこから家業を継げばいいんだ。それは、いつになっても遅すぎるということはない。少なくとも、私は40年は売り続けているのだから。


という、Bert Strattonの記事からの、「The job of real estate and the joy of music」である。

彼がメディアで自身の考えを述べている記事は、これが唯一である。これはVulfpeckファンにとって、Jackの親子関係が良好なものであることを伝える、重要な資料だった。

もちろん、今回この言葉をタイトルに選んだのは、バンドリーダーであるJack Stratton本人だろう。

つまりおそらく、今回のタイトルに込められたメッセージは、「ミュージシャンを選んだ自分を応援してくれている、父への感謝」である。

Jack本人からしたら別の理由も含まれているのであろうが、少なくとも、この記事を読み、これをあえて抜き出して使ったということは、「父への感謝」がどこかしらに含まれているということは、ほぼ間違いないのではないか、と考えられる。


さらに、今回のジャケット写真は、Jackの祖父のものである、という話も出ている。ここから、「父が選んだ、家業である不動産業に対する敬意」も感じることができる。父が選んだ道も間違っていない。そして、我々も。そんなメッセージが込められたタイトル、そしてジャケット写真なのではないだろうか。

またこのタイトルからは、「父の歩みたかった芸術家としての道が、息子へ継承されたということと、それを親子がともに喜んでいる」という構図も読み取れる。そういった面からも、これは「継承のアルバム」なのではないか、と思うのだ。

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画像出典:https://vulfpeck.bandcamp.com/


アルバムの構成

ではいよいよ、実際の音楽の話をしていきたい。

今作は、Vulfpeck作曲による「新曲」が、4曲。

VulfpeckのYouTubeでのみ聴くことができた「アルバムお蔵入りとなっていた過去作」、いわゆる「お蔵入り曲」が、5曲。

そして、Vulfpeckとまったく関係のない曲が、1曲だ。



今回、新曲が少なく、既発曲(しかもカヴァー)が多く、さらにVulfpeck以外のアーティストの曲が入っていることは、海外の掲示板、Twitter、ブログなどで賛否両論を巻き起こしている。

たしかに、昨今の悪疫のせいで新曲の収録がうまく進まず、お蔵入りとなっていた曲を再利用してきた可能性はゼロではない。いくらかは、それも原因だろう。

しかし、今回、お蔵入りになっていた曲が晴れて収録されたことは、悪疫以外にもちゃんとした理由があると、私は考えている。

そもそも、「お蔵入りになっていた理由」があり、今回それが解消されたのではないかということだ。

その「お蔵入りの解消」も、Jackの考えを示唆しているため、結果的にこの1枚には、いまのVulfpeckが包み隠さず表現されていると考えられる。

むしろ「お蔵入り曲」が多く入ったことで、2015年からのVulfpeckの魅力を、多面的に1枚のアルバムで楽しむことができるのだ。

そのあたりは、曲紹介をしながら解説をさせていただこう。


全曲解説 [前半]


1. Bach Vision Test (お蔵入り曲)

Jack Stratton — arranger, recording
Rob Stenson — visuals
Jacob Mann — arranger

さて、いきなりバッハの曲からスタートする。

なぜ?と思う方もいらっしゃるかもしれない。

実は、Jackはバッハの大ファンだ。

過去にもバッハをカヴァーし、また最近、THE WTF BACH PODCASTにて、バッハへの熱い想いを語ったばかりである。

これはバッハ晩年の傑作のひとつフーガの技法/コントラプンクトゥス IX (Contrapunctus 9, Art of Fugue)を、音の高低を動画にすることで視覚的にわかりやすく表現した動画であり、今回のアルバムの1曲目はその音源部分だけ、となっている。

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曲名も動画内にさりげなく記載。画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=vJfiOuDdetg

演奏はJack Strattonひとり、シンセサイザーで多重録音されたテイクだ。

2016年にも、Jackは同じ曲をカヴァーして、YouTubeにアップしている。このとき、そのレコーディングはアルバムに入らず、お蔵入りとなった。

今回は2020年バージョンとして、レコーディングをやり直し、アレンジも変更している。アレンジにはシンセ・ビッグバンドで有名な、Jacob Mannが参加した(Jacob Mann Big Bandのドラムはルイス・コール)。

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Jacob Mann Big Band / Greatest Hits, Vol. 2 画像出典:https://www.amazon.co.jp/Greatest-Hits-Vol-Jacob-Mann/dp/B07FQHPVLB


また、バッハの曲で、音の高低を視覚的に表して動画にする、というプロジェクトは、昔に一度、Jackが行っている。今回の「Bach Vision Test」は、その延長線上にあると言えるだろう。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=iBNWYxmcCzE


過去にも「Fugue State」などでフーガ(Fugue)への想いの片鱗は見えていたが、今回、正式にバッハのフーガが収録されたことで、Jackのストレートな気持ちがアルバムから伝わってくるようになった。

しかも、このバッハの「コントラプンクトゥス IX」を含む「フーガの技法」は、バッハが演奏されるべき楽器を指定せず、譜面だけが遺された状態で発表された曲だ。というわけで現在、さまざまな楽器でこの「フーガの技法」は演奏されている。

編成もソロだけでなく、複数人による演奏もあたりまえで、実に自由な解釈で、実にいろいろな演奏が存在する。(個人的に好きなのは、8bitカヴァーだ。👇)

つまり、シンセサイザーで弾いてしまおう、というJackのアイデアは、バッハから継承されている「フーガの技法」の伝統を汚してはいない。

そしてこれを1曲目に持ってきたのも、今回のアルバムのテーマが「継承」であることを示しているように見える。バッハをシンセサイザーで弾いてYouTubeにアップしているこの曲は、過去の遺産をしっかりと現代に蘇らせ、次の世代へと継承しようとしているのではないか。

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「フーガの技法」譜面 画像出典:https://en.wikipedia.org/wiki/The_Art_of_Fugue



2. 3 on E (feat. Antwaun Stanley) (新曲)

Antwaun Stanley — vocals
Jack Stratton — drums, mixing, overdubs, composer
Joe Dart — bass
Cory Wong — guitar
Theo Katzman — guitar
Woody Goss — ocarina
Joey Dosik — percussion
Rob Stenson — lyric animations
Eric Ryan — engineer

サポートも含めたVulfpeckのフルメンバー7名が全員揃った、実質、今回のメインとなる楽曲だ。さきほどのバッハはアルバムの導入部なので、ここでようやく、しっかりとVulfpeckのアルバムが始まった感が出ている。

スライを彷彿とさせるメロディー、Jack作曲のいわゆる往年のソウル&ファンクの楽曲。こういう曲を書かせたら、Vulfpeckの中でJackに敵うものはいない。


ちなみにこの曲は、2019年に既にセッション的に演奏されている。(👇該当箇所に再生位置合わせ済)


今回は動画で分かるように、映像の右側、室内で一発録りされたテイクが曲の基本トラックとなっている。そこにあとから、Jackによるシンセなどのキーボードと、映像左側に映っている、Antwaun Stanleyの歌が加わっているといった仕組みだ。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=b2_CJ_nx-l4


Antwaunの歌はなぜか屋外でレコーディングされ、足元に置かれたタブレットで歌詞を読みながら歌っている。マイクは後ろにいるJackの持つレコーダーに繋がっており、いつも通り、とても面白い。

また、今回のアルバムでは動画に表示される歌詞などの文字エフェクトはすべて、Jackの小学校時代からの友人であるRob Stensonが行っている。JackとRob Stensonとは、昔一緒に「Funklet」を作成した仲だ。


個人的に一番の聴きどころ(見どころ)は、オカリナを吹くWoodyである。Woodyのかわいらしさ、とどまるところを知らない。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=b2_CJ_nx-l4


3. Test Drive (Instrumental) (新曲)

Jack Stratton — guitar, mixing, composer
Theo Katzman — guitar
Joe Dart — joe dart bass
Richie Rodriguez — congas
Joey Dosik — piano
Cory Wong — drums
Woody Goss — organ
Jeremy McDonald — engineer
Jordan Rose — camera

またもJackの作曲。初期のVulfpeckや、The Fearless Flyersを思わせるインストのファンクだ。メインのメンバーは勢ぞろい、そしてマディソン・スクエア・ガーデンのライブにも参加していた、Richie Rodriguezがコンガを叩いている。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6GUGFvoaTCM

この曲はおそらく、Jackがギターで作曲をしたので、Jackがギターを弾いていると思われる。いつもなら、そのままTheoがドラムを叩くのだが、今回はTheoがギター。なんとCory Wongがドラムを叩いている。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6GUGFvoaTCM

メロディーらしいメロディーが存在せず、一見つかみどころがない、しかしグルーヴは最高。まさにミニマルファンク、引き算のファンクが完成している。本作ではこの「Test Drive」が、もっともミニマルファンクな楽曲であると言えるだろう。

JackとTheoが弾くギターのリフが、曲の根幹のフックとなり、それが現れたり消えたりすることで曲が進行している。間にJoeのベースやWoodyのオルガンが入ることで飽きさせないようになっており、基本の部分は4人の正式メンバーの演奏の抜き差しによって、巧みに成立している楽曲なのだ。

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正式メンバー4名が揃っている図。Woodyが珍しく帽子を被っている。画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6GUGFvoaTCM


4. Radio Shack (新曲)

Woody Goss — wurli, composer
Theo Katzman — lead guitar
Jack Stratton — drums, mixing, guitar overdubs
Joey Dosik — synth
Cory Wong — guitar
Joe Dart — joe dart bass
Mike Viola — engineer, camera

やはりメインとなるサポートを含めた、Antwaunを除く6名が揃っている。ちょっとゲームミュージック風、今回のアルバムのなかではかなり風変わりな1曲である。

この曲は今回のアルバムで唯一、Woodyが作曲した曲だ。Woodyの曲が収録されるのは、「For Survival (feat. Mike Viola) (2018)」以来となる。

Mike Violaは有名シンガーソングライターで、Theoが彼のファンだということで交流が持たれ、前述のとおりVulfpeckに2018年にゲスト参加した。どういうわけなのか、今回、この曲だけはMike Violaが撮影とレコーディングエンジニアを担当している。

もしかしたら、この曲の録音とロケ地が、MIke Viloaの自宅なのかもしれない。

(根拠は3つ。Vulfpeckの曲は、ロケ地が友人宅で、家主がカメラマンを務めることが多い。今回のこの曲は、ほかの曲と少し音質が異なっている。さらに👇にもあるように、カメラマンの目線で「I hear an odd sound coming from my shed(うちの小屋から妙な音がする)」となっているため)

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=XnE-zRYxGFM

この「Radio Shack」は、2020年7月に発表された「VULF VAULT 002 /// Inside the Mind of Woody Goss」(Vulfpeckの中でもWoodyが作曲した曲をまとめた公式コンピレーション)にも収録され、その際に初公開となった曲だ。

テイストがいつものソウル&ファンクと違うため飛ばしてしまう人もいるかもしれないが、私は個人的に大好きな1曲である。


5. LAX (feat. Joey Dosik) (新曲)

Joey Dosik — vocals, alto sax, composer
Jack Stratton — piano, perc overdubs, mixing, composer
Woody Goss — piano
Theo Katzman — drums
Cory Wong — guitar
Joe Dart — fender bass
Ryan Lerman — composer
Tyler Duncan — engineer, camera
Rob Stenson — lyric animations

今作も、Joey Dosikの曲が収録された。しかも今回は、Jackと、Ryan Lermanの共作だ。

(Ryan Lermanは、Scary Pocketsのリーダー、ギター、作曲担当。Vulfpeckにも多数楽曲提供をし、MSGライブでもカメラマンを務めた)

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=NzxW8nxgENA

Dean Town、Animal Spirits、Tee Timeなどと同じく、Tyler Duncanのホームスタジオでレコーディングされ、Tylerがカメラマンを務めている。TylerはMy Dear Discoのリーダーで、Vulfpeckメンバーとは10年以上の友人だ。

映像ではJoey Dosikがサックスを吹いているが、この映像の後に、彼がヴォーカルをレコーディングして加えている。曲名にもある「LAX」とは、ロサンゼルス空港のことだ。

最近のVulfpeckらしい1曲。コード進行や雰囲気が、まさにこれまでのJoeyとRyanの曲そのものであり、こういった曲はJackひとりでは生み出すことができない。アルバムに広がりを持たせている重要な曲だと言えるだろう。

※過去のJoeyの曲

※過去のRyanの曲



全曲解説 [後半]


6. Poinciana (お蔵入り曲)

Theo Katzman — tenor one, fender bass
Jack Stratton — tenor two, mixing
Woody Goss — bass one
Joe Dart — bass two

Rob Stenson — lyric animation

カヴァー曲、Poinciana(ポインシアナ)である。お蔵入りとなっていたこの曲が収録されたことが、今回、一番のニュースであった。

この曲については、以前にも私のnoteにて解説を行っている。

今回のアルバムにカヴァーが収録される、ということは、この曲が収録されるということで初めて明らかになったので、その際の驚きを、解説を伴って書いたのが👆の記事だ。繰り返しになってしまうが、簡単にこの曲が収録されることの重要性を述べたい。

「Poinciana」は、アメリカでは超有名曲、いわゆる、懐メロと呼ばれる曲である。数多くのグループ、またジャズマンがカヴァーを行い、国民的に愛されている1曲だと言えるだろう。


Vulfpeckは2015年に、すでにこの曲を映像付きでレコーディングしていたが、Jackはバンドをカヴァーで有名にしたくはなかったので、この「Poinciana」をアルバムには入れなかった。

これが、こういったカヴァーの録音が、過去のアルバムに収録されず「お蔵入り」になっていた理由だ。

I’ve developed some ground rules over the years that I would recommend to other starting bands as well, since they’ve worked so well for me. Like not doing covers. We do some, but we don’t put any on the albums. You don’t want to be known for a cover. Another rule is that I never — ever — would sign a deal at a record label. You should keep everything under your own management.”

Jack:何年もかけていくつかの基本的なルールを作ってきましたが、それは他の新しくスタートするバンドにもお勧めしたいことです。例えば、Vulfpeckはカヴァーをしない。ライブでは演奏するけど、アルバムには入れません。カヴァーで有名なバンドになるべきではない。もう一つのルールは、レコード・レーベルとは絶対に契約しないということ。すべてのことを自分の管理下に置くべきです。(出典:https://medium.com/@RobertJon/vulfpeck-from-jazzism-magazine-488ac32acfaf)

しかし時が経ち、2020年。

すでにVulfpeckは多数のオリジナル曲で有名なバンドになったので、Jackはこの超有名曲のカヴァーをアルバムに入れたところで、Vulfpeckが「カヴァーで有名なバンド」になることはない、と判断したのだろう。

演奏の内容は、先ほどリンクを貼った、フォー・フレッシュメンと、アーマッド・ジャマルの演奏のバージョンを完全に踏襲している。Vulfpeckのオリジナリティは、Talkboxを使ってロジャー・トラウトマンの音で歌っている、という点のみだ。

Stratton adds that the group borrows elements from several arrangements to build their own. “We took The Four Freshmen’s arrangement, put the Ahmad Jamal beat under it, and used Roger Troutmans DX7 patch for the Talkbox. We’re hoping to get sued by each.”

Jack Strattonは、いくつかのアレンジを参考にして自分たちのアレンジを構築していると語っています。「フォー・フレッシュメンのアレンジを参考にして、アーマッド・ジャマルのビートを入れて、ロジャー・トラウトマンのDX7パッチをTalkboxに使ったんだ。それぞれに訴えられることを期待しているよ。(出典:https://www.notreble.com/buzz/2015/04/10/vulfpeck-poinciana/)

聴き方によっては、ただ有名カヴァーを合わせただけのようにも聴こえてしまうこの「Poinciana」のVulfpeckバージョン。これまで、頑なに有名カヴァー曲の収録を避けてきたVulfpeckが、こんなにもあけすけなカヴァーを新しいアルバムに入れてきたということは、Jackに何らかの心境の変化があったに違いない、と私は考えている。

それがおそらく、「Vulfpeckはすでにオリジナル曲で有名になれたから、もう、カヴァーを入れても大丈夫だろう」ということなのではないだろうか。


以上が、「お蔵入りになっていた理由と、今回それが解消された理由」の考察である。



7. Eddie Buzzsaw (feat. Eddie Barbash) (お蔵入り曲)

Jack Stratton — guitar, composer, mixing, dancer
Theo Katzman — drums, steadycam
Woody Goss — pianet, wah wah pedal
Joe Dart — fender bass
Eddie Barbash — alto sax

これは過去のVulfpeckのオリジナル曲「Vulf Pack(2017)」のセルフカヴァーだ。タイトルも変わっているため、実際に聴かないと分からない。


まず、2017年の段階で、Jackが作曲した、このシンプルなミニマルファンク「Vulf Pack」があった。

それはVulfpeckだけでレコーディングされ、「Mr. Finish Line(2017)」に収録されている。👇


次に、2017年12月8日の段階で、ゲストとしてサックス奏者のEddie Barbashが入っているバージョンがYouTubeにアップされた。その時に、Jackは曲名を変えてアップを行った。

それがこの「Eddie Buzzsaw (feat. Eddie Barbash)」である👇。

これはお蔵入りとなり長らくアルバムに収録されてこなかったが、今回、ようやく収録されることになった。セルフカヴァー曲の収録は過去にも何度もあったので、これはさして珍しいことではない。

動画には、レコーディングを撮影していなかったのか、後から撮影されたJackのダンスが使われている。これ、珍しくTheoが撮影しているとのことで、いったいどんな雰囲気だったのか?と考えると面白い。


ちなみに、今回のゲスト、Eddie Barbashとは誰なのか?

まず、姿は今回の映像のラストに、写真だけ登場する。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=qPDM6HpH2wY

彼とVulfpeckの接点はいくつかある。まず、ライブのゲストとして過去に登場したことがある。(👇位置合わせ済み)

さらにVulfpeckが過去に出演したテレビ音楽番組、「The Late Show with Stephen Colbert」も接点となっている。

Vulfpeck出演時に一緒に演奏してはいないが、Eddie Barbashはこの番組のホストバンドのメンバーだ。

同ホストバンドのリーダー、ピアノのJohn Batisteは、後にCory Wongの作品にも参加している。このように、「The Late Show with Stephen Colbert」のホストバンドとVulfpeckファミリーは良好な関係が続いているのが分かる。

※「The Late Show with Stephen Colbert」出演時の映像。2015年👇



8. Something (feat. Bernard Purdie)(お蔵入り曲)

Bernard Purdie — drums
Jack Stratton — video edit, mastering
Theo Katzman — vocals, guitar
Joey Dosik — rhodes, bgvs
Joe Dart — bass
Woody Goss — organ
Cory Wong — guitar
Richie Rodriguez — percussion
LazyLightning55a — footage
Eric McRoberts — recordist
Aaron Gittleman — foh mix

あまりに唐突なビートルズのカヴァー。

何も知らないと、いきなりの展開に戸惑うかもしれない。

だがこれは、Vulfpeckの歴史にとって非常に重要な録音だ。


端的に言うと、「Jackの最大のヒーロー、ドラムのBernard Purdieをスペシャルゲストに招待した、2016年9月8日のライブ録音」なのである。しかも、場所は超有名ライブハウス、NYのBrooklyn Bowlだ。

本来であれば、すぐにでもJackはアルバムに入れたかったのかもしれない。何せ、Bernard Purdieの演奏である。(Jackは彼のドラムを心底愛し、コピーし、長い年月の修練で、Purdieのドラミングの微細なフィーリングを再現できるまでになっている。Jackからしたら、ほとんど、神に近いような存在である)

しかし困ったことに、このときBernard Purdieが参加した曲は、なんとビートルズのカヴァーだった。

しかも、何のアレンジもない、ただのセッション。

あまりに打ち合わせに乏しいセッションだったのだろう。Jackは楽器を弾かずに、全体に身振り手振りで指示を出し、演奏をコントロールする役割に回っている。最後も、Jackが合図を出したことで曲が終了しているような感じだ。

これをアルバムに収録するわけにはいかない。もし入れたなら、「ビートルズをBernard Purdieとカヴァーしただけのバンド」として有名になっていただろう。

というわけでお蔵入りになっていたが、今回、前述のように、カヴァー曲のアルバム収録が解禁される運びとなったのだ。非常に喜ばしいことである。

個人的には、この録音がアルバムのハイライトであり、聴いていて、もっとも胸が熱くなる。ただのビートルズのカヴァー演奏ではない。ここに記録されているのは、ファンクを愛する若きミュージシャン達と、超大物レジェンドとの、一時の邂逅だ。悠久とも言える長いファンクの歴史が、この数分に圧縮され収められていると言えるだろう。


今回のアルバムは、この曲が唯一、Theoのヴォーカルを聴ける曲となっている。映像は恒例となるファンのカメラからの転用で、Cory Wongのときと同じく、ファンがアップした元動画もYouTubeに残されている。


ここからは余談になるが、この日は、実は一緒にスティーリー・ダンのカヴァー、「Kid Charlemagne (滅びゆく英雄)」も演奏していた。

「Kid Charlemagne 」はスティーリー・ダンの名盤、「The Royal Scam(1976)」の1曲目。Bernard Purdieは原曲でドラムを叩いていた。

ビートルズの「Somthing」も彼が叩いたという伝説があるので、Bernard Purdieとのセッションは、「彼が参加した有名曲で彼を称える」という目的があったのだろう(実際には、「Something」ではPurdieは叩いていない)。

さらに余談になるが備忘録として…。Bernard Purdieとはこの時、連日一緒にライブを行っている。2016年9月7日はNYのセントラルパークにて。

その翌日から、9月8日~9月10日は、Vulfpeckは三夜連続でBrooklyn Bowlでのライブを敢行しているが、それらのすべてでPurdieは叩いてくれている。(アルバムに収録されたテイクは9月8日)



9. Santa Baby (お蔵入り曲)

Woody Goss — rhodes
Jack Stratton — mixing

これも超有名曲のカヴァーである。

原曲はEartha Kitt。1953年に発表され、クリスマスの定番曲、オールディーズとして長く世界中で愛されてきた。(出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Santa_Baby

マドンナ、カイリー・ミノーグ、テイラー・スウィフト、マイケル・ブーブレ、アリアナ・グランデなど、錚々たるミュージシャン達にカヴァーされ、それらはヒットチャートの上位に入った。さらに、ドラマの「Glee」にも使われている。


こんな有名曲のカヴァーは当然お蔵入りとなっていたが、これも今回、晴れて収録されることになったのだ。

このVulfpeckのカヴァーはWoody Gossひとりでレコーディングされており、ジャズマンのWoodyらしく、原曲からとても逸脱している。ジャズマンとしての矜持が感じられ、そこが素晴らしい。

※Woody Gossについては私の過去noteをご参考に。経歴を考えると、絶対に、Santa Babyをただそのままカヴァーしたりすることはない男だ。ますます彼のスタイルに魅力を感じる。



10. Off and Away (feat. Earthquake Lights)(Vulfpeckではない曲)

さて、アルバムの最後を飾るのは、なんとVulfpeckの曲ではない。Vulfpeckは、曲そのものには一切タッチしていない。

これは「Earthquake Lights」という、NYのロックバンドの曲だ。2019年にデビューしたばかりのバンドである。

いったい何があったのか?

ここでは、この経緯を説明しよう。

2020年8月8日、突然、VulfpeckのTwitterと、YouTubeチャンネルで発表があった。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=kvpLmt7MKkY

Jack :「我々は、今度発売されるVulfpeckのニューアルバムの10曲目を、オークションサイトのeBayで売ることにした。」

この言葉だけで、すべてが理解できるだろう。つまり、曲を収録できる「権利」をオークションにかけたのである。世界最大のオークションサイトであるeBayで買える、というのが、とても面白い。

有名バンドとしてはまったく前代未聞の行動だが、ファンやリスナーを巻き込んでバンドを運営していく、いかにもJackらしいユーモアである。


eBayのオークションページには瞬く間に高値がつき、2020年9月5日、70,100ドル(737万5066円!)でオークションは終了した。

入札履歴を確認すると、最後は接戦になったのかと思いきや、滑り込みで落札者が決まるという、いかにもネットオークションらしい展開になったようだ。

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入札履歴。落札者となったEarthquake Lightsは、オークション終了まぎわに最高額からわずかに100ドル上乗せして、勝利をつかんだ。画像出典:https://www.ebay.com/itm/383666896955


そこからしばらくは曲が発表されなかったが、2020年10月24日に正式にVulfpeckからTwitterで発表があり、同じタイミングで、Vulfpeckの新作アルバムもようやく、フル配信がスタートしたのである。


こうしてVulfpeckのニューアルバムを通して、Earthquake Lightsの知名度は急上昇することとなった。

バンドサウンドはRadioheadを思わせる抒情的なロックで、今回Vulfpeckのアルバムに収録された「Off and Away」が、現在の代表曲となる。


動画のコメント欄にはVulfpeckのファンがやってきて、好意的なコメントを残しているのが微笑ましい。

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=cLtjdwq77JY

👆のSam Herbers氏のコメントのように、いつかライブでVulfpeckがこの曲をカヴァーしてくれたら、と思う。それによって、この曲と、アルバムはさらに完成度が高まるだろう。


アルバムの10曲目にちょっとユーモアを忍ばせるのは、過去にも何度か行ってきたスタイルで、Jackは今作でもそれにチャレンジした形となった。

※👇「Thrill of the Arts(2015)」の10曲目。まったく意味不明だが、「ヘッドホンをして、Jackの声とシンセで癒されよう!」という曲になっている。笑

また、Vulfpeckは今回、カヴァーを大量に解禁したように、「既に有名になったバンド」である。

そこから、今度は他のバンドにチャンスを与える――そんな意味もあったのかもしれない。これも、今回の「継承」のアルバムを締めくくるにはふさわしく、さらにユーモア、スタンスなどを表明する意味でも、Vulfpeckの魅力を多面的に紹介することになった、と私は考えている。


以上が、2020年に発表されたVulfpeckのニューアルバム、

「The Joy of Music, the Job of Real Estate」の紹介と解説である。

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画像出典:https://vulfpeck.bandcamp.com/


おまけ:選曲候補に挙がったかもしれない曲たち


いかがだったろうか?長くなったが、最後までお読みいただき、ありがとう。これが読者の方々にとって役に立つ記事であればと願う。

では終わりに、今回お蔵入りが解消されなかったが、VulfpeckのYouTubeチャンネルに眠っている曲を紹介して本記事の締めとしたい。

これらの曲も、もしかしたら、選曲のテーブルに上がったのかもしれない…と考えると、ちょっと面白い。


次回は、「5分で分かるVulfpeck」を公開させていただきたい。それでは、またお会いしよう。

トップ画像出典:https://vulfpeck.bandcamp.com/


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―――――著者情報――――――

Dr.ファンクシッテルー

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宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。

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「KINZTO」の活動と並行して、音楽ライターとしても活動。

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中巻では、1970年代の「ファンク黄金期」をテーマに、ファンクと16ビートの拡散の歴史を追いかけます。スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ジェームス・ブラウン、JB's、タワー・オブ・パワー、ミーターズ、ブーツィー・コリンズ、パーラメント&ファンカデリック(P-FUNK)、アース・ウィンド&ファイアー、シックなどが主要な登場アーティストです。

さらにソウルやディスコ、ハウス、テクノ、ヒップホップとの関連性についても詳細に記しました。

本書では、Apple Music、Spotifyのプレイリスト「ファンクの歴史」にアクセスすることで、文中で紹介されている参考音源を探すことなく、音源を聴きながら読みすすめることができます。


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