先人の武勇伝から学ぶもの 見るべきことと流すこと
おはようございます、Dr Fjです。
本記事は、2020年10月6日に以前のブログで書いた記事の再掲です。
今日は、ちょっとうっとおしいおじさんに多い、『俺が若いころはなぁ…』という武勇伝についてお話したいと思います。
最近はコロナ禍の影響で飲み会などもなくなりこの類の話はだいぶ少なくなりましたが、それでも普段の生活のいたるところに出てくる話です。特に、私は整形外科の医者という職人気質が強い業界に属していますので、『昔は24時間365日待機して、どんな時でも呼ばれれば病院に駆け付けた』とか、『研究発表の前には何日も寝ないで準備したもんだ』とか、『上の先生の手術は夜遅くても必ず見に行って、目でその技術を盗んだもんだ』など、いろんな武勇伝をたくさん聞きました。
今となっては私もだいぶ世の中のことがわかってきたので、『夜寝ないと効率落ちるからそんなの無駄でしょ』とか『直前でバタバタするなんて無駄で、前から計画的にやればそんなことしなくて済むでしょ』とこういう話を流すことができますが、自分が若手で何もできなかった頃は、そんなに頑張れない自分はだめなのかもしれないと不安になったりしたものでした。
また、逆にそんなことは長くやってりゃ勝手にできるもんだということに、そんなことないんじゃないかなと思って努力をすることもありました。皮膚の縫合は外科医がまず最初に覚える手技ですが、これがうまくなるように鶏皮買ってきて日夜縫う練習をしたり、顕微鏡下での手術の練習のために練習用の顕微鏡を自分で買って日々鶏肉の血管を縫う練習をしたりもしました。これが直接役に立ったかどうかはわかりませんが、おかげで皮膚縫合は人より早くきれいにできるようになったし、顕微鏡下の手術でもあまり困ることはなくなりました。
同じようなことは、医者の世界だけじゃなく、いろいろな業界で同様のことが言えると思います。例えば、かつてはプロ野球選手は試合後に飲みに行って豪快に焼き肉食べて夜の街に繰り出すという話が武勇伝としてよく聞かれましたが、最近はアスリート化して日々の体調管理に努める方が良いとされるようになりました。『24時間戦えますか』を合言葉にモーレツに仕事をしていた日本のビジネスマンは、現代では生産効率の低さの象徴のようになっています。
このように書くと、先人の武勇伝なんて聞き流せばいいんだという話になってしまいそうですが、一方で先人の知恵や経験を大切にするべきだという話もあります。Google scholarの表紙には先人が築いた知見という巨人の肩の上で遠くを見通そう(Standing on the Shoulder of Giant)というスローガンが掲げられていますし、相場の世界でも『歴史は繰り返す』ことは有名で、我々人類はなんどもバブルが起こってははじけるのを経験しています。このような世界の中で、我々はどのように人生の先輩の話を聞いていったらよいのでしょうか?
私が思うその答えは、ブロガーのちきりんさんの著書のタイトルでもある『自分の頭で考えよう』です。
こういうと身も蓋もないのですが、いろんなことは、ちょっと考えたらわかるものなのです。夜寝ないと作業効率は落ちるし、何かができるようになるためにはどうするのが一番の早道なのかを考えればおのずと正解は導かれるものです。科学技術は日進月歩で、私が新人だった15年前と比べても、使えるツールもサービスも全然違うのです。そんな中で、先人と同じ行動をしていて良い理由なんてないのは明白です。同じ『行動』をしていてはダメなのです。足りない能力を得るには、できないことができるようになるのは何を使ってどうする必要があるのか、その時々で自分で考えるしかないのです。
では、先人の武勇伝から何を学ぶのか。私が思うその答えは『古典として先人が経験したstoryを楽しむ』ことです。シェイクスピアのロミオとジュリエットも山崎豊子の白い巨塔も、現代版としてリバイバルされていまだにそのstoryを楽しむ題材にされています。いくら科学が進歩しても、それを使って生きる私たちはいつまでたってもただの人間で、人生はそのただの人間が織りなすstoryでできているのですから。
うっとおしいおじさんの冴えない武勇伝を聞くときには、『そんなことやってるから今のあなたはこうなのね』と、残念な大人のstoryを反面教師として学びの題材にしようと思えば、少しは気が楽になるかもしれませんね。
まとめ
若いころの武勇伝を語るおじさんは今でもたくさんいる。
現代において、武勇伝をなぞって同じ行動をとる必要はない。
時代によって最適解は変わる。自分の頭で最善の選択肢は何か考えよう。
先人の武勇伝は、そのstoryを楽しめばよい。
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