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まずその業界の前提を学ぼう

 こんばんは、Dr FJです。


 今日は、Twitter上でしばしば発生する内容が全く見当はずれであったり気分を害するような言葉が含まれているリプライ(=クソリプ)というものを見て私が思ったことを書いてみたいと思います。


 TwitterやYahoo掲示板など、ネット上に個人が自由に自分の意見を発信することが出来るようになった昨今、時々クソリプと呼ばれる残念な発信を目にすることがあります。つい先日も、古家付き土地として販売している物件に対してその家を取り壊さず使いたいと考える投資家からの問い合わせに不満を言ったら『それに対応するのが不動産業者としての務めだ』というクソリプが飛んでいるのを目にしました。その当事者の方はかなり強くそれが正しいと信じておられたようで、スペースでも大暴れしていたみたいです。私はそのスペースを聞いていたわけではないので誰が正しいのか、誰がひどいのかと言ったことに関しては意見を持っていませんが、tweetされている文章を読む限りでは、よく見るいつもの問題が生じているなぁという印象でした。


 当該の方は『結局投資家はその家を使おうとして購入するのだから、販売業者は丁寧に彼らの質問に答えるべきだ』という主張をされているのですが、それに対して大多数の方は『その土地は土地にまだ家が乗っかっています、という売り出し方をしているのだから、その家が住める状態なのかについてとやかく言われる筋合いはない』という反論を展開していたのですが、私が最も感じたのは『この人はなぜ業者さんに誰でも丁寧に説明してもらえる前提なのだろう?』ということでした。そもそもですが、業者さんは売主の代理人であり、問題のない買主になるべく高く買ってもらうべくその物件を売り出しているわけです。その業者さんからすれば、住む用途で売ろうとしていない家についてとやかく言ってくる人は、その時点で既に大事にすべきお客さんではありません。


 そもそも論ですが、この資本主義社会の世の中において、自然に公平で平等な状況が発生することはありません。金融市場や入学試験(特に公立校)、市役所での対応など、公的な規制がかかるような場所であればありえますが、その他の大部分の場面においてはやはり弱肉強食で不平等なのが実情です。不動産売買で言えば買付の番手がどうこうというよりは高くより良い条件で売れる方がいいに決まっているし、文句も言わない人の方が良い。業者間の義理や関係性を大事にしたい買主などの影響はあるでしょうが、基本的にはそんなもので、そもそも誰でも同じように扱ってもらえるという前提が間違っているのです。銀行に融資をお願いしに行って『○○銀行はこういう融資条件だからねらい目だ!!』みたいな情報を流しても、それはその人がそこにそのタイミングで行ったからそういう条件だっただけで、勝手に設定されている条件をこちら側で決めつけてその条件下では同じように扱ってもらえるというのは、やっぱり想像力に欠けていると言えます。少し厳しい言い方をすれば、人間が平等でみんな誰に対しても等しく接してくれるなんていう頭の中お花畑の前提を振りかざすと、社会の中では生きにくいということになります。


 同じようなことは様々な場面で発生します。たとえば、大手銀行窓口での投資信託の購入。投資のことを少し勉強した人なら手数料だけでバカみたいにお金をむしられ、かつ運用成績もインデックスファンドに見劣りするようなアクティブファンドを買いたいとは思いませんが、大きな銀行であれば客を騙すようなことはしないという誤った前提によって損をさせられる人は少なくありません。


 他には『医師が勧める…』と謳う商品や『○○に効く』と謳う健康食品なども同様です。本当に効くなら医薬品として医師が研究結果を元に推奨するよというのが医学界での大前提なのですが、それを間違えると、トンデモ医療に巻き込まれたり無駄に高いインチキ商品を買わされることになります。医師として医学知識を得た状態で世の中を見渡すと、結構大きな看板を掲げながら知識のないカモから大胆にお金を巻き上げるような仕組みがあることに驚かされます。


 どんな業界にもその業界の中の人であれば常識である前提というものがあります。自分の立場からしか物が見えていないと、前提が違うことが一目瞭然で周囲から浮いてしまい、結果として損をしたりうまくいかなかったりしがちです。『業界の常識にとらわれない』ことが成功の秘訣のように語られることが多い昨今ですが、私は逆に『郷に入りては郷に従え』こそ至言だと思います。業界の常識にとらわれない行動を取るのは、その常識がなぜいそこにあるのかということを学んでからでも遅くありません。まずはその業界で先人の積み上げてきた常識=前提をよく学んだうえで、必要があればそれを変えていくのが大人の変革の仕方なのかなと思います。

まとめ

  • 『どんな問い合わせをしても、客として一律に丁寧に扱われるべきだ』と主張して炎上したアカウントを見た。

  • それぞれの業界には、内部の人からすれば常識と思われるような前提が存在する。これを軽視すると損をすることが多い。

  • 『業界の常識にとらわれない』ことが成功の秘訣のように語られることが多い昨今だが、私は逆に『郷に入りては郷に従え』こそ至言だと思う。

  • 先人の積み上げてきたものには何らかの意味がある。それを変えたいと思うなら、まず変えたいものが何なのかをしっかり学んでからでも遅くはない。

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