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引き算のないプランはただの妄想

 こんばんは、Dr FJです。
今日は、先日参加した学会の中で見聞きした中で感じたことを書きたいと思います。

 先日とある学会に参加しました。その学会ではここ数年、なんなら10年以上も目新しい進歩と呼べるような新しい技術のようなものは出て来ておらず、なんとなく停滞している感じの分野のものです。
現に、ことあるごとにその状況に危機感を抱いているであろう重鎮の先生方は『これからの若い人にどんどん頑張ってもらって新しい技術を開拓してほしい』『これからどんどん海外に行って研鑽を積んで大きくなって欲しい』とはっぱをかけておられました。また、昨今話題の医師の働き方改革についても議論されており、『女性の参加を増やすために、女性が様々な賞などに応募したりする際には応募要件を緩和しよう』なんてことも言われていました。

 これを聞いて私は『だからこれまでも、そしてこれからも変わらず衰退していくんだなぁ』という思いを強く持ちました。なぜなら、こういった話をしておられる方々が誰も『じゃあそのために何を諦めるのか、何を止めるのか』という議論をしていないからです。わかりやすい例で言えば、例えば会社で『役員の半分は女性が占めることをルール化する』というルールを新しく制定したなら、当然それまで役員だった男性の何人かはその職を辞めなければなりません。それならばと『現役員は辞めなくてもいいけど、今後新たに追加される役員は女性限定とする』としたとしても、それはもうすぐ役員になるような立場の男性の権利を奪うことになります。この世の中にフリーランチはないのです。

 学会の話で言えば、もし若い人に頑張ってほしいというのであれば、同時に『ある程度歳を取った人たちにはご退場いただきましょう』と同時に言う必要があるのです。『長年本学会に尽力してこられた方だから…』と過去の実績などを重く見てそういう人たちを優遇したまま『若い人たちも応援しましょう』なんてことは出来ないのです。女性のみ応募要件を緩和するということなら、きちんと『女性の候補は男性の候補より能力や業績的に劣っていたとしてもそれを補えるほどの下駄を履かせて男性候補には不利な条件にしましょう』ということについてコンセンサスを得る必要があるのです。

 これは他のところでも同じようなことが言えますね。『政府が国債を刷って国民に大盤振る舞いにお金を撒けばいいんです』と主張する人たちは最近のインフレが実体化してきた影響もあって減ってきているように思いますが、こういう人たちはそれが財政ファイナンスになって悪性のインフレを引き起こす危険性を秘めていることについて同時に説明する義務があるのです。

 儒教的な思想によって年長者を立てる文化背景ということもあり、日本人はこの手の話が苦手です。ただ、そうやってやるべきことを先送りにしてきた結果、社会全体が死に体になってきているというのもまた事実。欧米の"スクラップ&ビルド"をそっくりそのまま受け入れろとは言いませんが、少子高齢化による人口減少という確定した未来がある現状では、リストラを行うことで社会全体を改編して生産性を上げなければ、それは結局みんなが等しく不幸になる結果にしかならないでしょう。引き算のないプランはただの妄想。維新が起こるのはいつなのか。そう遠くない先にX dayは来るでしょうね。

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